改ざんできない愛の記録 —— ブロックチェーンで結婚したカップルの話

河崎夫妻

河崎純真さんと美加惠さん。出会って1カ月半で「ブロックチェーン婚」した。

撮影:今村拓馬

事実上、改ざんが不可能とされるブロックチェーンに結婚を記録したカップルがいる。

発達障害と診断された人たちがプログラミングやデザインを学ぶ学校GIFTED ACADEMY(ギフテッド・アカデミー)を運営するエンジニアの河崎純真さん(26)と美加恵さん(22)だ。2018年1月23日に、ブロックチェーン上に“We got married!”と、2人の結婚を書き込んだ。

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「改ざん不可能」な結婚契約

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ブロックチェーン上に記録された2人の「結婚契約」。下部のグレーのボックスに“We got married!”とある。

ブロックチェーン上に結婚を書き込むとは、具体的にはどんな行為なのだろう。

改ざんできないとされるブロックチェーンは、仮想通貨を支える技術だ。

仮想通貨の取引データは、中央銀行や特定の企業が管理するのではなく、暗号化され、分散化された状態でネット上に保管される。取引が記録される「ブロック」は定期的に更新され、チェーンのように連なっていく。

特定のブロック上の取引の記録が改ざんされると、チェーンの前後のブロックと矛盾が生じるため不正が分かる。記録は暗号化された状態で公開され、第三者も改ざんがないか検証できる。

このため、これまで契約書に書いていた内容をブロックチェーン上に記録することで、紙の契約書の代わりに証明として使うことができると期待されている。改ざんしてはいけない公文書にも応用できそうだ。

ブロックチェーン婚で2人は、有力な仮想通貨のひとつイーサリアムのシステムを使った。結婚をしていること、2人の氏名、日付をデータベースに記録した。

この記録は消すことができない。

イーサリアムの口座に生活費送ることも

河崎純真さんと美加惠さん

純真さんと美加恵さんの2人は、渋谷区内で暮らしている。

撮影:今村拓馬

今回、2人はブロックチェーン上に「結婚しました」という「約束」を書き込むのにとどめたが、技術的にはさまざまな取り決めもできる。

日本では一般的ではないが、欧米では結婚前に2人の財産をどのように共有するかなどを事前に取り決め、契約を交わしておくことがある。例えば、イーサリアムでひとつのウォレット(口座)をつくり、夫婦の双方が、毎月の最終日に生活費として決まった額を、このウォレットに送るよう「契約」しておくこともできる。

ブロックチェーンを使って、事前に取り決めた条件を満たしたときは自動的に契約を履行させる「スマートコントラクト」と呼ばれる新しい契約のあり方だ。

出会って1カ月半の「ブロックチェーン婚」

2人の出会いは、美加恵さんが2017年11月ごろ、ギフテッド・アカデミーでアルバイトをしたことがきっかけだ。美加恵さんによると、「じゅんじゅんの猛アタック」で12月8日から交際をはじめた。美加恵さんは、純真さんがアカデミーの活動で「自分はあまり幸せそうには見えない人だけど、まわりの人を幸せにしようとしているのが健気だな」と思ったという。

2人は12月20日から、友人たちといっしょに1カ月ほどかけて、グアテマラ、コスタリカ、メキシコを旅行した。

なかなか他者に心を開かないという純真さんは、美加恵さんと過ごすうちに、自分の心が開いていくのを感じたそうだ。

12月30日、「結婚しよう」とプロポーズした純真さんに、美加恵さんは「いいよ」と答えた。

結婚の実感は法律婚に軍配

12月8日に交際を始めてからプロポーズまで、およそ3週間。1月23日のブロックチェーン婚までは、1カ月半だった。美加恵さんは「10年付き合って結婚しても、別れる人は別れる。断る理由もないし、日数は関係ないなと思って」と振り返る。

「愛の証明を国に出すのがイケてない」と言う純真さんは当初、ブロックチェーン婚だけで済まそうとも考えていた。しかし、美加恵さんが「河崎の名字になりたい」と言うので、2月1日に区役所に結婚届を提出した。

ブロックチェーン婚と法律婚のどちらに、実感があったのだろう。

美加恵さんは「ブロックチェーンの方は、となりでパソコンをいじっているなと思ったら、『できたよ』って。でも、結婚届は自分で書いたから」。純真さんも「区役所に行くのは、わくわくした」と言う。

法律婚から間もなく、美加恵さんが妊娠していることもわかった。2人は、生まれてくる子のことも、ブロックチェーンに記録するつもりだ。

(文・小島寛明、撮影・今村拓馬)

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