彼女はフランス人、就活中で家事をワンオペで担う僕が気づいた日本企業勤務のハードル

筆者自作の弁当

自分の彼女の弁当を作ることは日課となった

撮影:松本幸太朗

「今日もお弁当なんだ、偉いね」

大学やインターン先で自作の弁当を広げるとよく言われる。作らなければ家計が回らないので、作らざるを得ないというところが本音だが、言われて悪い気はしない。おかげで面白がってもらえるからだ。

僕には2年間同棲して結婚を考えているパートナーがいる。彼女は東京で正社員として働く、フランス人だ。一方の僕はBusiness Insider Japanでインターン業務に勤しむ大学4年生の23歳。就職活動の只中にいる。

僕が彼女の分と2人分の夕飯と翌日の弁当を作っている。最初は2時間近くかかっていたが、三口コンロを使い分けてそれらを同時に作れるようになり、1時間弱まで短縮できた。今ではほぼレシピの見ずに冷蔵庫の中身を見て、献立を考えらえるようになった。

これだけやった見返りは美味しいと言って食べてくれる人がいることと、就活のES(エントリーシート)の趣味欄に「料理」と書けることぐらいだ。彼女が同僚から「彼氏すごいね」と言われたという話を聞くのも嬉しい。

半面、この程度の存在が浮いてしまう社会の、多様性のなさを憂いてしまう。

気づいた家事の細かさと仕事量の多さ

料理だけではない。僕の方が早く帰ることが多いので、家事はほぼ全て僕が担当する。いわゆるワンオペ(ワンオペレーション=全ての労働を1人でこなす状態)だ。洗濯と掃除も日常的に担当している。

彼女は仕事がある日には徹底的に家事をしないが、休みの日は率先してくれる。加えて、常に「ありがとう」と言ってくれるから、僕のワンオペはそこまで深刻ではないのかもしれない。

もしあなたが家事を負担しているパートナーに感謝を伝えていないのなら、伝えることを強くお勧めする。それも定期的に。

実際にやってみることで、家事の細かさと仕事量の多さに気づくことができた。丸まったストッキングは伸ばして干さなければならないこと、起床したら窓枠の結露を拭き取らなければカビが生えてしまうことなんて、埼玉の実家で21年間生活している時にはまるで知らなかった。

同時にこれまで日本社会が女性に家事労働を強いてきた現実と、未だに多くの女性がワンオペ家事に苦しんでいる状況には、ワンオペに片足を入れた者としては胸が痛む。

就活生の写真

撮影:今村拓馬

転勤嫌だと言えば不利になる就活

こういう生活を送りながら就職活動をしていると、避けては通れない問題がある。

1つ目は勤務地の問題。2つ目は勤務時間の問題だ。

僕の場合、最初の勤務地は東京でなければいけない。彼女が東京でキャリアをスタートしたばかりなので、少なくとも今後数年は東京で働くことになるからだ。

転勤という会社の都合で離れて暮らすことは僕も避けたい。ましてや働き手に優しい労働環境の整備が進んでいる、フランス出身の彼女にとっては、会社主導の転勤など到底受け入れられるものではない。

フランス語が話せない僕のために、彼女はわざわざ東京で仕事を探してくれた。彼女には借りがあり、次は自分が彼女のために、東京で手に職をつける番だと考えている。

しかし、ここで大きな壁に直面する。僕の志望するメディア業界では転勤が当たり前なのだ。業界の多くの企業の初任地は全国津々浦々で、東京を初任地とする企業は限られる。

僕一人が「転勤お断り」就活をすれば、バカを見る。転勤が嫌だと思っていても「言わない」就活生を企業は採用するからだ。

とはいえ、本当は転勤を好む人は多くないと思う。転勤が前提となると人生設計が格段に難しくなるからだ。転勤族が家族を作るなら、カップルの片方が仕事を辞めるか、単身赴任しなければ成り立たない。

転勤の多い企業で働く友人は「転勤自体はそこまで嫌ではないし、覚悟はしていた。でもライフプランニングはしづらいことが少し不安。転勤に理解のある人としか結婚はできない上に、家庭を持てば単身赴任になる可能性も頭にある」と言う。

残業あったら家事ができない

2つ目は勤務時間。

19時までインターンとして勤務しているが、帰宅後に家事をすると1日に使える自由な時間は2時間程度。就職活動もその時間内でしなければならず、スケジューリングは相当にタイトだ。

僕がフルタイムで働いた場合、家事はおそらく回らない。加えて将来的に育児が加わると、夫婦共働きでそれらをこなすのは無理だ。できれば定時に帰れる会社を希望するののだが、そんな会社はあるのだろうか。少なくとも私が目指す業界にはない。

毎日同じ時間に電車が満員になるのが日本の現状。そこには、望む労働時間で働くという、欧州諸国では当たり前のフレキシブルさはない。

「みんな同じ」が生む生きづらさ

自分の理想を追うと、必ずどこかで社会的な障壁にぶつかる。

「普通が一番幸せ」というフレーズをよく耳にする。日本ではマジョリティーと同じ生き方でなければ、社会が幸福を保障してくれないという意味にも聞こえる。

日本人も価値観や考え方の違う個人の集合体であるはずなのに、なぜかみんな同じとされてしまう。労働者個人の抱える事情もそれぞれ違うのに、全員で同じ条件で働く。

サラリーマンの後ろ姿

生き方や働き方は十人十色であり、社会もそれらを保障する方向に動けばより多くの人が自己実現できるはずだ。

撮影:今村拓馬

残業への耐性も人によって異なるのに、その規制も一律で個人の特性や事情は反映されない。100時間残業しても平気な人もいれば、80時間で死が頭をよぎる人もいるのに。

挙句の果てには、全員で残業を減らしましょうという流れになってしまう。今度は人より働いてスキルアップを図りたい、仕事が何よりも好きだという人が目に入らなくなる。

個人の要望や体形に合わせてスーツを仕立てるテイラーのように、個人が自由に働ける制度設計になされればいいと、僕は思う。


彼女を通して見える日本

「ここは日本だから」

僕のパートナーが日本人の同僚からよく言われる言葉だ。

「国籍や言語が一切関係ないミスをして怒られているときに言われた。あと(正当に)使える有給を使おうとしたときも言われた」と腑に落ちない様子だった。

前者は「外国人だから」という誤った思い込み、後者は日本人の当たり前と異なることへの拒絶反応だと思う。

外国人に限らず、それが正しいかどうかという普遍的な尺度を用いずに「そういう決まりだから」「皆がそうしているから」という理由で受け入れたり拒絶できたりしてしまう。この調子では、日本社会にはそれぞれ異なる個性を守り、生かすという、多様性は一向に根付かない。

そんな小難しいことを考えながら、今日も僕はスーパーで食材の買い出しをしている。フランスでは男性もレジに立って気さくに客と話し、多くのお客さんがカップルや家族で買い物に来ている光景によく出くわした。

日本のスーパーでは相変わらずレジにもお客さんにも女性しかいない。彼女らの背後に会社への忠誠を誓い、転勤や残業を甘んじて受け入れてきた企業戦士の姿が透けて見える気がする。


松本幸太朗:千葉大学法政経学部法政経学科。小学1年から高校まで剣道に明け暮れ、大学時代はサイクリングで日本縦断に挑戦。留学生の支援団体や留学経験があり、「日本流」に縛られない生き方を実践したいと思っている。パートナーが東京で仕事をしているため、東京勤務を強く希望している就職活動中の4年生。

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