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- スティーブ・ジョブズはマーケティングやデザインについての優れた才能で知られている。
- だがアップル黎明期にジョブズとともに働いた元同社幹部によると、ジョブズはサプライチェーン・マネジメントにも優れていた。
- 現CEOティム・クックは1990年代後半、同社のサプライチェーンを立て直したことで評価された。だが元幹部は、立て直しはジョブズなしには成し遂げられなかったと語った。
スティーブ・ジョブズはマーケティングとプロダクト・デザインの天才と言われている。
だがひと握りの人だけが知っている事実がある。ジョブズはサプライチェーン・マネジメントの天才でもあった。アップル黎明期にジョブズと仕事をした元幹部はそう語った。
ジョブズの最初の在任期間 —— 1976年のアップル創業から1985年に会社を追われるまで —— でさえ、ジョブズは在庫管理、効率的な生産方法の構築に優れた才能を見せたと元幹部のダニエル・ルーウィンは語った。ルーウィンはアップルとネクストでジョブズのもとで働いた。
「ジョブズのサプライチェーンや在庫管理などへの関心は驚くべきものだった」とルーウィン。彼はその後、約17年間マイクロソフトで働き、最近、シリコンバレーのコンピューター歴史博物館CEOに就任した。
「徹底的に追求したことを覚えている。決して手を抜かなかった」
コンピューター歴史博物館のCEOダニエル・ルーウィン。
Troy Wolverton/Business Insider
ジョブズがアップルに復帰した後、1990年代後半の同社の復活ストーリーでは、一般的にはジョブズがアップルの製品とマーケティングを立て直し、ティム・クック(当時のCOOで現CEO)がサプライチェーンと生産体制を立て直したとされている。だがそうした復活ストーリーでは、ジョブズ自身がサプライチェーン・マネジメントに優れていたことの重要性が過小評価されているとルーウィンは語った。
「スティーブがいなければ、今のティムはいないだろう」とルーウィン。
「スティーブがサプライチェーンに精通していなければ、ティムは成し遂げることができなかったと思う」
ルーウィンは1981年にアップルに入社し、ジョブズのもとで働き始めた。そしてジョブズのサプライチェーンに関する知識を、アップルが1984年に発表したマッキントッシュと、その後のネクストで目の当たりにした。
だがルーウィンは、ジョブズがどのようにしてそれらの知識を身に付けたのかは知らなかった。ジョブズが1学期だけでリード大学を退学したことは有名な話。ジョブズは正式な大学教育をほとんど受けていない。
ジョブズは、80年代はじめにアップル会長を務めたマイク・マークラが連れてきたオペレーション・マネージャーからサプライチェーン・マネジメントに関する知識を得たのだろうとルーウィンは語った。だが、どこから知識を得たのであれ、ジョブズがそうした知識を持っていたことは驚きではないとルーウィン。
「ジョブズはまるでスポンジだった」
「優れたアーティストは真似をする。偉大なアーティストは盗む」とジョブズが好きなピカソの言葉を引用しながら、ルーウィンはこう付け加えた。
「自分の周りを観察し、統合する。ジョブズは統合マシンのようだった。優れた起業家が皆、そうであるように」
(翻訳、編集:増田隆幸)