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大事なことは何かと何かの「あいだ」にある —— 知の巨人・松岡正剛が伝えるデジタル時代の教養

リクルートマーケティングパートナーズが提供するオンライン学習サービス・スタディサプリが、“知の巨人”と呼ばれる松岡正剛氏が所長を務める編集工学研究所と組み、「スタディサプリLIBRARY」をリリースした。「スタディサプリLIBRARY」では、自分の学びたいことを見つけるための知の扉となる本や漫画をカテゴリー別に紹介。これまでオンライン学習を進めてきたスタディサプリが、なぜ今あえて本なのか。スタディサプリの生みの親であるリクルートマーケテイングパートナーズ社長の山口文洋氏が松岡氏と対談。「間=AIDA」を切り口に、デジタル時代に身につけたい「教養」を考える。

「組織と個人の間」「脳と心と体の間」にあるものを考える

1枚目対談開始

リクルートマーケティングパートナーズ社長の山口文洋さん(左)と松岡正剛さん。この部屋だけでも約2万冊の本が天井までぎっしりと並ぶ、東京・世田谷の編集工学研究所にて対談を実施。

—— 興味深いコラボレーションですが、お二人はどんなきっかけで出会ったのですか?

山口文洋さん(以下、山口):出会ったというよりも、私が一方的に先生と思っていました。初めてお会いしたのは、リクルートと三菱商事の有志が協力して立ち上げた日本流次世代リーダー育成塾の「ハイパーコーポレートユニバーシティ[AIDA]」という、松岡さんが塾長を務めておられる企業塾に、2013年に通わせてもらったときです。

松岡正剛さん(以下、松岡):2005年だったでしょうか、リクルートと三菱商事、それぞれの人事担当が二人で来て、次世代リーダーを育てるための塾を作ってくれないか、と言われました。君たちに教えることはないと3回追い返したのですが、諦めない。熱意に根負けして、やることになりました。

年間1つのテーマを設定し、全6回、それに関連したトップのアーティスト、クリエイター、アカデミシャン、実業家を呼んで僕と話をしてもらう。両社から毎回4、5人、他の企業からの派遣生を入れると毎年の受講生は30人前後になります。

—— テーマはどんなものだったのですか?

松岡:「間=AIDA」です。例えば組織と個人の間、脳と心と体の間、名人と達人と職人の間。今年のテーマは「電子と意味の間」です。講師の1人として、マツコデラックスさんにそっくりのアンドロイドを作ったことで話題となった、ロボット学者の石黒浩さんに来てもらいました。

山口:私が参加した年はアートとサイエンスの間でした。出席するたびに自分の知識や教養のなさを実感するんです。でも1年を終えると、松岡さんの訴えたい本質的なメッセージがおぼろげながらわかるようになっていました。

松岡:学びの基本は、そうした間を「またぐ」ことにあります。そこから、知るべきことや教養が生まれるんです。例えば、政治と音楽です。まったく関係がなさそうに思えますが、またぐことで見えてくるものがあります。

—— 今なぜ、「またぐ」ことが重要なのでしょうか。

松岡:すべての枠が取り払われ、あるいは垣根がなくなり、知が流動化、液状化しているからです。職能も知の一つですが、たとえば花屋さんを考えてみてください。今の花屋さんは単に花を売るだけではなく、ギフト屋でもあり、ライフコーディネーターでもある。そうなると、花の知識が豊富なだけではやっていけません。知のありようが変わると、職能も変化するわけです。

山口:私も講義を通じて、またぐことの重要性を実感しました。それ以前は、アートはクリエイティブで、サイエンスはロジカル、だから別物だという捉え方をしていたのですが、アーティストがいかに論理的に思考しているか、サイエンティストにとってクリエイティブな発想がいかに重要かを実感できました。

スタディサプリの起点は「学校の授業嫌い」

2枚目松岡正剛さん

松岡正剛さんは2017年話題となった経産省”若手ペーパー”に有識者として関わった。経済界にも、松岡さんを私淑する人が多い。

—— スタディサプリもそういう発想から生まれたのですか?

山口:まさにそうですね。私は子どもの頃、学校の授業がつまらなくて仕方がなかったんです。面白い先生にも出会えませんでした。逆にはまったのが歴史漫画で、その舞台となった歴史には滅茶苦茶詳しくなった。ほかの勉強はおろそかになり、成績は中の上くらいでした。

自分と同じような、学校に馴染めない子どもは多いのではないか。そう思ったのがスタディサプリの始まりでした。ちょうどユーチューブが流行り始めたころです。教育とインターネットをまたぐ形で、英語、数学、理科、社会といった科目の壁を取り払って、ユニークでわかりやすい先生たちの講義をネット上で視聴できるようにしたいと思ったのです。最初はTED(広める価値のあるアイデアをネット上で発表するアメリカ発の仕組み)の子ども版のような内容を目指していました。

松岡:僕もTEDには影響を受けました。アメリカのモントレーで開催された第3回目のTEDに招待されたとき、パソコンの父と呼ばれるアラン・ケイとジャズ・ミュージシャンのクインシー・ジョーンズが一緒に出てきて話をするわけです。まさに、コンピュータとジャズの間です。これだ、と思いましたね。それ以来、TED創立者であるリチャード・ワーマンの書籍を監訳したりと、ワーマンを日本に紹介する仕事をいくつか手がけました。

大学図書館をプロデュース、狙いは「知のどんでん返し」

3枚目山口文洋さん

多忙な中でも、並行して10冊程度の本を読んでいるという山口さん。「リアルな書店で買っています。手に取って、ピンと来たものを選びます」

山口:そうだったんですね。実は、スタディサプリでも教養の授業を提供しています。リクルートOBの藤原和博さんにも協力いただき、2人でアメリカまで行ってマイケル・サンデル教授を説得しました。「お金では買えないもの」という講義をしていただき、 「未来の教育講座」としてスタディサプリにおいて、日本語/英語で提供しています。ただし、 ”教養”には分野や切り口が無限にあり、整理するためのノウハウが我々にはまだまだ足りません。ネットを使った学びは知的好奇心を喚起するという意味では有効だけれども、教養を学ぶ際に不可欠な、奥行きに欠けることにも気づきました。

それで原点に立ち返って考えたところ、本に行き着き 「スタディサプリLIBRARY」を作りました。何しろ奥行きはあるし、入り口さえうまく作れば、各自の興味関心の赴くままに、その世界にどっぷり入っていけます。

—— それで、ネットから本という原始的メディアに戻ってきたわけですね。

松岡:本は、原始的というよりも本質的なメディアなんです。見開き2ページで構成され、著者がいて、タイトルがあり目次がある。パッケージの数はそれこそ古今東西無数にあります。シェイクスピアとか夏目漱石とか、有名どころの作品になると、どこかで誰かが時空を超えて常に読んでいます。僕はそれを「共読(きょうどく)」と呼んでいますが、ネットではまだそれと同じようなことはできません。

またぐ、という意味では、近畿大学が2017年に設立した図書館「ビブリオシアター」がその様子を体現しています。編集工学研究所がプロデュースし、その2階部分を「DONDEN(ドンデン)」と名付けました。漫画が中心で、その周囲に新書や文庫本を配架しています。例えば山岸涼子の漫画『日出処の天子』の脇に、日本古代史や聖徳太子に関する本が並べてある。まずは漫画から入ってもらい、興味が湧いたら新書や文庫を手に取ってもらう。そんな「知のどんでん返し」を狙っています。

「読書はクール」というムーブメントを作りたい

—— 楽しそうな空間ですね。学生がうらやましい。本で読むと頭に入ってきやすく、繰り返し読むこともできます。何よりその世界に没入できます。ネットだとそうはいきません。

山口:日本の教育もこれから大きく変わろうとしています。例えば大学入試です。暗記力が問われるマークシート方式が廃止されるとともに、自分の考えや感想を書く記述式、エッセイ方式の試験がぐっと増えてくるでしょう。そうしたなか、またぐ力が本当に大切になってくると私も思います。重要なのがWhatとWhyを問う力です。自分は「何に」興味があるのか、それは「なぜ」そうなっているのか。Howの力をつけるのは、それからでいいのではないでしょうか。

—— スタディサプリLIBRARYではどのくらいの本が紹介されているのですか。

山口:計1144冊が5テーマ、187のインデックスに分かれて紹介されています。そのインデックスごとに、推薦する本や漫画が3冊あって、アマゾンで買えるようになっています。

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スタディサプリLIBRARYのトップに表示されるメッセージ。まず5つの扉が用意されている。

もし漫画の『宇宙兄弟』を読んでロケットに興味が湧いたら、宇宙工学の本が同じ場所で紹介されているので、買って読んでみればいい。「スタディサプリ進路」が持っている進路(大学の学部学科)情報やキャリア(職種)情報ともリンクしていて、この場合なら宇宙工学を専攻している大学教授のページや、宇宙関係の仕事を紹介するページにも飛べる仕組みです。

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関連する本や学問、進路情報を見ることができる。

将来はスタディサプリの物理のページから『宇宙兄弟』の紹介ページに飛ぶ仕組みも整備したい。子どもの頃、自分がアナログでやっていたことをデジタルの世界でやりたいんです。高校生の間で、読書はかっこいい、知的探求はクールだ、というムーブメントを作り出したい。

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1144冊の中で紹介されている本の一部。『好きなことだけで生きていく。』は、「好き」から将来を選ぶという思想を象徴する1冊として。『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』は今の高校生たちが大人になった時の社会を提示するものとして推薦。『漫画 君たちはどう生きるか』は古典・教養を漫画で読める、2017年の話題書。読書習慣がない人も読みやすいように、漫画や新書も全体の3分の1ほどを占める。

ピンポイントよりグラデーションが重要

松岡:宇宙兄弟から宇宙工学へ、物理から宇宙兄弟へ、まさに連想ですね。すべての検索は「連想検索」であるべきだと僕は思っていますが、残念ながら今のネットの検索はピンポイントばかり、そうなっていません。

そもそも人間の脳や知覚は曖昧なんです。何かを探す場合、興味や関心の幅をまず広げ、多数挙がってきた候補の中から最後に絞る。懐中電灯を使うとき、光を広げてソフトフォーカスさせてから、見たいものを探し、改めてフォーカスを絞りますよね。そのソフトフォーカスができないんです。でもそうやってリンクを増やしてあげれば連想もしやすくなるわけです。いい知の旅ができると思いますよ。

—— 同じものが私が高校生の頃にあったら、夢中になっていたかもしれません。

松岡:リベラルアーツを豊かにするために一番重要なのが連想と暗示なんです。自分の興味や関心をもとに連想したこと、興味や関心が明示することではなく暗示すること、それを大切にすると、リベラルアーツが豊かになります。

ユニクロに行くと、グラデーションで少しずつ色の異なった靴下を売っているでしょう。あんなに色があったら、黒なら黒、紺なら紺というピンポイントの色だけではなく、中間色のものも買ってしまう。だからマーケットが成立するんです。リベラルアーツも同じでグラデーションが重要なんです。ピンポイントばかりを追求していたら、豊かにはなりません。

—— 昔の本屋さんは連想や暗示に基づくソフトフォーカスの品ぞろえが巧みでした。

松岡:おっしゃる通りです。本のセレクトショップがなくなってしまった。例えば「ローマとミラノ、どちらが好き?」という質問に対して、「ミラノ」と答えた人が行きたい本屋を作る。そういう質問から本につながるような仕掛けができたらいいと思っているんです。スタディサプリLIBRARYがそんな役割を果たすことを期待しています。


松岡正剛(まつおか・せいごう):雑誌『遊』編集長、東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授を経て、現在、編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。日本文化、芸術、生命哲学、システム工学など多方面におよぶ思索を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立。2000年から連載中の壮大なブックナビゲーション「松岡正剛の千夜千冊」は、1660夜を超える。著書に『知の編集術』『知の編集工学』『情報の歴史』『日本流』『日本数寄』『フラジャイル』『遊学』『空海の夢』『花鳥風月の科学』 『多読術』『17歳のための世界と日本の見方』『国家と「私」の行方』『謎床:思考が発酵する編集術』『擬 MODOKI:世あるいは別様の可能性』『日本問答』『読む力 現代の羅針盤となる150冊』 など多数。

山口文洋(やまぐち・ふみひろ):慶應義塾大学卒業後、ベンチャー企業でのシステム開発を経て、2006年、リクルート入社。進学事業本部で事業戦略・統括などを担当。社内の新規事業コンテストでグランプリを獲得し、「受験サプリ」を立ち上げ。2012年に統括部長、2015年4月からリクルートマーケティングパートナーズ代表取締役社長。

(撮影・今村拓馬)

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