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アップルは3月27日(現地時間)、アメリカ・シカゴでスペシャルイベントを開催。以前から噂(うわさ)されていたとおり、「教育向け」を意識した低価格な新型iPadを発表した。アップルストアの受注は即日開始で、オンラインの国内出荷は3月30日からとなっている。
今回のiPadは新型といっても、位置付けはエントリーモデル。つまり廉価版だ。しかし、その内容は、見ようによっては上位機のProにかなり肉薄している。「iPad Pro」をどんな風に「食う存在」になりうるのか見ていこう。
新iPad 9.7インチモデル、気になるその「中身」
このアプリはPowerPointだが、新iPad登場に合わせて、アップル純正の無料オフィススイートであるiWorksもペン対応にアップデート予定。アップルは、本日から最新版の配布をAppStoreで開始すると発表している。
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新iPadは、従来からあるエントリー向けiPadを大幅にパワーアップさせたもの。従来は「Pro」だけの特権だったアップルペンシル対応になり、快適な操作感のカナメになる心臓部の半導体も、従来のA9から上位にあたる「A10 Fusion」になった。A10 FusionはiPhone7世代のものだが、旧モデルの再廉価iPadとの比較では、CPU性能で40%、GPU性能で50%、それぞれ高速になっているという(アップル公式発表)。
ちなみにA10シリーズは世代としては、iPhone Xに搭載される最新の「A11 Bionic」の1世代前にあたり、ラインナップ上の性能差はしっかり付けられている。また、現行のProは厳密には「A10X Fusion」で、型番から見る限り完全に同じというわけではない。
販売戦略上の問題もあって、そのほかにもProとの違いは確かにある。とはいえ、下記のように機能差・性能差をまとめると、トータル評価ではかなり肉薄しているように見える。
iPad Proと新iPadのスペックを比較。差異はあるものの、トータルバランスでは新型iPadが肉薄していることがわかる。
iPad Proのように画面がボディいっぱいまで広がった「狭額縁」でなくてもよく、キーボードもBluetoothでつながればOKという多少の割り切りができる人にとっては、この仕様は注目だ。描き味で評価の高いアップルペンシルが使えて、バランスの良い性能があるタブレットとして、手頃感が感じられるからだ。
価格設定も注目点だ。最小ストレージ容量が新iPadの32GBとProの64GBでは大きな違いがあるが、上位の128GBモデルにしたとしても、WiFiモデルで4万8800円。見ようによっては、「iPad Proの最小構成よりストレージが2倍多く、価格は2万円安い」という言い方もできる(詳細スペックの違いはあるにしても)。
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ただし、注意点もある。実機を触ってみなければわからない部分は、「液晶の性能」だ。スペックシート上は解像度の違いだけのように見えるが、よくよく見ていくと、新iPad 9.7では、画面の書き換え速度を2倍(120Hz)にするProMotionテクノロジーや高色域ディスプレイなどには非対応。平たくいえばiPad Proが「全部入り液晶」なのに対して、新iPad 9.7は(従来どおりの)「廉価版の液晶」になっている。120Hz描画のスムーズな描画による操作体験の良さや、色のよしあしがどの程度違うのかがポイントになる。
ノートPC代替で狙うなら、最注目は「32GBのLTE版」
ARアプリもさまざまなものが登場する。写真はカエルの解剖を体験できるアプリ。「教育」を意識したもの。
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以前、Business Insider Japanで取り上げたように、iOSの度重なるアップデートと処理性能の向上によって、iPad+外付けキーボードは仕事用のモバイルマシンとしてもかなり「使える」ものになってきている。
関連記事:「iPad Pro 10.5」+サイズ違いキーボードが最高の仕事道具である理由
筆者の周囲でも、外出時にノートPCを持ち歩く代わりに、軽作業にはiPad使う人も実際に増えてきた。重量の割にバッテリーがもつこと(新iPad 9.7で約10時間)、LTE内蔵の利便性(電源オンした瞬間からいつでもどこでもネットが使えるというのは、作業の自由度が大幅に上がる)、潤沢なアプリによる快適性というのが大きな理由だ。
そういう用途で、Business Insider Japan的な最注目はiPad 9.7の「LTE版」、特に5万2800円という価格の、32GBモデルだ。
メインのPCは別にあって外出時や移動時に使うというような用途では、写真や動画はほとんど保存しなくていいという場合が少なくない。特にLTE版では、Dropboxなどのクラウドストレージを積極的に使えば、内蔵ストレージはほぼアプリ保存くらいにしか使わない場合もある。LTE版だと月額の回線維持コストが気になるという人でも、格安SIMとの組み合わせなら、月々数百円に抑えられる。
出荷が早いため、アップルストアでの展示も早々に始まるはずだ。気になる人は、まず店頭で触って判断してみてもいいだろう。実機のレビューは入手でき次第、改めて紹介していく。
(文・伊藤有)