アップルは教育市場を見誤ってはいないか? —— 新iPad、辛口レビュー

アップルCEOティム・クック氏。

アップルCEOティム・クック氏。

Lucy Nicholson/Reuters

  • アップルが新しいiPadを発表した。だが教育市場でのシェア回復には不十分な製品に思える。
  • アップルは子どもたちの使い方、あるいは学校のニーズを理解していないようだ。
  • アメリカの教育市場で人気のChromebookと比べると、新しいiPadは高価で、壊れやすく、実用的ではない。
  • 我々がどれくらいスマートフォンを落としているか考えてみてほしい。もし今、子どもたちにiPadを渡したら、どれほどの混乱が生まれるだろう?

アップルの幹部たちは、かつて子どもたちについて理解していたことを忘れてしまったようだ。また教育市場で日々起きていることと完全に疎遠になってしまったようだ。

少なくともこれが、アップルは再び教育市場に力を入れるという発表を聞いた後に、私が最も感じたことだ。私の目から見れば、やや安価に、少し速く、わずかに性能がアップしたiPadは、アップルが直面する教育市場での課題を解決できるものではないし、先生と生徒たちにとって最高のツールではない。まだ価格が高すぎるし、実用的でなさすぎる。

新しいiPadとアップルペンシル。

新しいiPadとアップルペンシル。

Apple

アップルは教育市場を切り開いたPCメーカーとして知られている。そしてスティーブ・ジョブズは当初、教育市場を重視した。私が子どもの頃、中学校のコンピュータールームにはアップルIIが並んでいたし、それが当たり前だった。大学生になると、親友たち、そして寮の仲間たちの多くはマックを持っていた。

だがアップルは教育市場における優位を奪われた。最初はウィンドウズ・マシンに、そして最近ではグーグルのChrome OSで動くChromebookに。一見すると、新しいiPadはアップルにとって失った教育市場を取り戻すツールのように思える。だがそうではない。

ロサンゼルスの公立学校にiPadを導入するという大きな契約は悲惨な結果に終わったFuturesource Consultingによると、2016年、教育市場におけるアップルのシェアは18%。2017年、教育市場に向けたアップルの主力製品であるiPadの出荷台数は減少した

Chromebookは学校のニーズを捉えている、iPadはそうではない。

Chromebookは学校で大変人気があり、現在、アメリカの教育市場のトップシェアを占めている。最大のメリットは相対的に安価なこと。グーグルのパートナー企業は、様々なChromebookを200〜300ドルの価格帯で提供している。さらにメンテナンスが簡単なことも大きなメリット。Chrome OSはブラウザベースのOSなので、アップデートは自動で行われ、ウイルス対策機能も備えている。そのうえ、子どもたちが使えるアプリケーションを制限できる。


Chromebookなら様々な製品が購入できる。

Chromebookなら様々な製品が購入できる。

Samsung

さらに、現代の学校教育に適した、良質なアプリケーションが豊富に揃っている。ウェブベースの数学や国語の教材があり、ただレポートを書くだけに留まらない。デザイン面においても、Chromebookのラップトップはかなり丈夫。子どもたちは移動中にはラップトップの画面を閉じる。つまり一番壊れやすいディスプレイは保護される。

こうした点で見ると、iPadは最新モデルでもまだ満足できるものではない。iPadに使われているアップルのiOSは、Chrome OSより複雑。設定や日常的な管理には、IT管理者が欠かせない。またiPadにはキーボードがないため、単体では学校での多くの授業、特にレポート作成には全く適していない。

iPadは子ども向けではない

だが最大の問題は、価格と耐久性。ノートPCとは違ってiPadは前面がガラス、壊れやすいデバイスだ。スマートフォンユーザーなら、私の言っている意味が分かるはず。大人でもスマートフォンを壊している。

保護用のラバーケースが付いたアマゾンのFire HD 8 キッズ・エディッション。落下による破損を防ぐ。

保護用のラバーケースが付いたアマゾンのFire HD 8 キッズ・エディッション。落下による破損を防ぐ。

Amazon

子どもは、事故を起こすものだ。例えば、数年前に私の妻がiPadを購入した際に娘が最初にやったことは、落としてディスプレイを壊すことだ。アマゾンが子ども向けとして販売しているFireタブレットには、しっかりラバーケースが付いている。

アップルはこの明らかな事実を忘れてしまったようだ。教育市場向けのiPadには、アマゾンの子ども向けFireタブレットのように保護ケースを付けるべき。だがアップルはそうしていない。保護ケースを付ける場合、学校は追加コストが必要になる。

また新しいiPadの特徴は、アップルペンシルが使えること。これも同社が子どもたちを理解していないことを表しているように思える。

ペンをどこに置いたか覚えている?

iPadはケースが付いていないだけでなく、アップルペンシルなどのスタイラスペンをなくさないようにするための工夫がない。ペンを格納するスロットや、磁石で留めておく機能もない。

スタイラスペンをiPadのライトニングポートにつなぐことはできるが、これはスタイラスペンを運ぶためのものではない。ペンはiPadからはみ出してしまっている。スタイラスペンを収納するケースを購入することはできる。だがアップル製のものは、130ドルする。

以前、アップルペンをテストした時、私はペンをiPadと一緒に持ち歩く方法を見つけられず、とても苦労した。大人なのに。子どもはそんな細かい配慮はできない。ペンはすぐになくなるだろう。

アップルペンシルは充電中、まさにiPadから突き出ている。

アップルペンシルは充電中、まさにiPadから突き出ている。

Matt Weinberger/Business Insider

またすぐに壊れるだろう。アップルペンシルを充電する時はiPadのライトニングポートにつなぐ。だが2つのデバイスの物理的な接点は、比較的薄い金属パーツ。子どもたちはすぐに曲げたり、取り外したりしてしまうだろう。

Chromebookに比べて、新型iPadの299ドル(学生・教員向け価格)という価格はすでに高価。だがこれは、まだ最低限の価格。アップルペンシルが必要ならさらに90ドル必要だ。ロジテックが安価なものを発表したが、それでも1本50ドルする。

さらに保護ケースも必要、少なくとも数十ドルはするだろう。例えば、ロジテックのケースは100ドル。

つまり、学校や先生たちが新しいiPadを積極的に採用することは期待できない。教育市場を取り戻したいのであれば、アップルは学び直す必要がある。

[原文:Apple’s new iPad is a total misfire that shows how out of touch the company is with schools and kids

(翻訳、編集:増田隆幸)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中