内紛、裏切り…… 元グーグルの広報トップは、なぜウーバーを去ったのか?

レイチェル・ウェットストーン氏

レイチェル・ウェットストーン氏。

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今から約1年前 —— 2017年4月、レイチェル・ウェットストーン(Rachel Whetstone)氏は配車サービス「ウーバー(Uber)」を去った。この突然の辞任は、世間の大きな注目を集めた。

ウェットストーン氏は、同社のポリシーおよびコミュニケーション部門のトップを務めていた人物だ。当時のウーバーは、業界関係者が知る中で最悪レベルのネガティブな報道の渦中にあった。

だが、外部からは唐突にも思われたウェットストーン氏の辞任は、何の予兆もなしに起きたわけではなかった。

ウーバーに移る前、ウェットストーン氏はグーグル(Google)で長年、パブリック・ポリシーおよびコミュニケーション部門のトップを務めてきた。このグーグル時代に十分な富を得ていたウェットストーン氏は、ウーバーに移籍した後も、「この会社で大金を得られるかもしれない」という思惑とは無縁だった。この思惑こそが、ウーバーで働く他の幹部を突き動かしていた。

「これが彼女に、(当時のCEO)トラビスには臆せず本当のことを話せると感じさせた」ウーバーの元幹部は言う。「彼女は、トラビスに決して逆らわないイエスマンたちとは一線を画していた」

時が経つにつれ、ウェットストーン氏はウーバーに幻滅していった。組織の中で力を持つ女性ということで、同氏は不満を抱える従業員や関係者にとってそれを吐き出しやすい存在だった。彼らから会社に関するネガティブな話を聞くうちに、同氏のウーバーに対する見方は変わっていった。彼女は怒りを覚えるようになったのだ。

ウーバーは「大人の企業」へと脱皮することが必要だ。しかし、トラビス・カラニック(Travis Kalanick)CEOのもとではその望みはない。ウェットストーン氏はそう考えていた。

同氏は、ウーバーに不満を募らせるにつれ、些細なことでも憤慨するようになり、一緒に仕事がしづらいとの悪評も立った。辞めると言っては、落ち着きを取り戻し、それを撤回するといった行動を繰り返した。カラニック氏の説得によって、思いとどまることもあった。

当初は、カラニック氏も会社に欠かせない人材としてウェットストーン氏を大事にしていた。しかし、次第に扱いきれないと感じ始めた。

「彼女はトラビスをはじめ、ウーバーを嫌悪していた」関係者の1人は語った。「レイチェルはウーバーを嫌っていたが、自分が会社にとどまれるよう会社を変えようとしていた」

ウェットストーン氏、辞任

こうした状況が顕在化したのは、テクノロジー系ニュースサイト「The Information」が報じたウーバーの醜聞がきっかけだった。

記事は、カラニック氏とその当時の交際相手Gabi Holzwarth氏、事業部門のトップだったエミル・マイケル(Emil Michael)氏を含むウーバーの幹部一行が、2014年に韓国でカラオケバーを訪ねたときの様子を報じたものだ。このバーはむしろエスコート・サービスのようなバーで、女性には顧客が指名しやすいよう番号札がつけられていたという。

The Informationの取材に応じる前、Holzwarth氏はウェットストーン氏に連絡を取り、マイケル氏から電話があったことを伝えていた。カラニック氏との交際がきっかけで親しくしていたマイケル氏は、メディアが韓国での一件をかぎつける恐れがあると彼女に警告してきたという。Holzwarth氏は「余計なことは話すな」と脅されたように感じたと、ウェットストーン氏に話した。

The Informationの報道には、このマイケル氏からの電話についても言及があり、ウェットストーン氏がHolzwarth氏に同情的な態度を示した上で、他にもウーバーの関係者でカラオケバーでの一夜に同席した人物がいなかったか尋ねたとある。また、「この問題を直接知る立場にある人物」の証言として、ウェットストーン氏がマイケル氏の電話の件を社内の法務部に報告、法務部はこの情報を前司法長官でウーバーの社内調査を率いていたエリック・ホルダー(Eric Holder)氏のチームに伝えたと報じている。

カラニック氏は気に入らなかった。広報のトップとして、ウェットストーン氏はこうした報道が流出するのを阻止すべきで、加担するなどもってのほかだ、というわけだ。

カラニック氏の側近たちは、ウェットストーン氏がウーバーを守れなかったばかりか、従業員を煽り、ゴシップを広めたと考えていた。カラニック氏は、こうした懸念をウェットストーン氏に伝えた。裏には、ウェットストーン氏自身が、ウーバーにとって都合の悪い情報をメディアに漏らしたのではないか、という疑念があった。

こうした疑いをかけられることは、ウェットストーン氏に対する侮辱であると同時に、そのキャリアを台無しにしかねないものだった。広報のプロが会社にとって不利な情報を漏らしたとなれば、次の仕事はまず見つからないだろう。

2017年4月上旬、ウェットストーン氏はウーバーを去ると言った。そして翌日には翻意し、ウーバーに残りたいと言った。

しかし今回、カラニック氏はウェットストーン氏の辞意を受け入れた。2人は夕食を共にし、和やかなムードの中で、退職パッケージについて交渉した。パッケージには、在職期間中に得ていた数百万ドル相当のストックオプションも含まれていた。最終的に、ウェットストーン氏は相談役の地位にとどまるという、互いのメンツに配慮した形で合意した。

4月11日、ウェットストーン氏の辞任が発表された。カラニック氏は会社を去る同氏を「エネルギッシュかつ並外れた才能の持ち主で、一流の組織を構築してきた、驚くべきプレイヤーコーチ(選手兼任監督)」と呼び、表向きは賞賛した。

[原文:The real reason a top Uber executive abruptly left shows how much mistrust and fighting there really was behind the scenes

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:山口佳美)

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