データシェアリングは“革命”を起こす——貧困地区での進学率も急上昇

注目が急上昇しているビジネスデータ・プラットフォームのユニコーン企業、米Domo(本社:ユタ州ソルトレイクシティ)の勢いが止まらない。

「21世紀はデータの時代」とも言われるが、その利用範囲が拡大し、データ活用はさまざまな分野で「革命」を引き起こしている。

3月中旬にソルトレイクシティで開かれたDomoの年1度の会議「Domopalooza」では、シリコンバレーを代表する通信機器大手シスコの活用例から、生徒の成績や進学率を上げるのに成功した貧困校区の例までが、紹介された。

Domo主催のイベントの様子

創業者が親日家だけあって、イベントには日本の文化が色濃く反映されていた。

登壇者の一人、シスコのジョゼフ・パサセリー氏は、デジタルマーケティング担当のバイスプレジデント。営業畑が長かった経験を生かし、営業マンが築いている顧客との密接な関係を、マーケターと顧客との間にも取り入れる狙いでDomoのプラットフォームを導入した。

導入により、「マーケティング社員の考え方が変貌した」という。

「伝統的な手法や、クリエイティブに頼るやり方を続けたいという社員は多かったが、会社の成長のためには、データを使って、効果を説明・証明する必要があった」

Domoのプラットフォームの特徴は大きく分けて2つある。1つは、膨大なデータの分析結果をグラフなどのビジュアルで示すこと、2つ目は企業のトップから社員までが同じデータをスマートフォン上で共有できるところにある。

シスコは過去1年余りで、マーケティング部隊2000人のうち1200人がDomoを使うようになり、12000の「カード」(画面に表示されるビジュアルデータ)を構築。それによって、個々の広告やソーシャルメディア、メールなどのうち、どこで一番顧客とつながっているかが、リアルタイムで視覚的に一目でわかるようになった。Domoを使って行動を追っている2万7000人の対象者に対して、シスコの製品のキャンペーンを展開するなど実績を上げている。

Facebookの創業メンバーでベンチャー・キャピタリストとして有名なマット・コーエン氏も登壇した。コーエン氏は現在、ベンチャー・キャピタル「ベンチマーク」のゼネラル・パートナーで、Domoには創業直後から投資している。Domoに投資した理由についてこう語った。

「データを扱うというのは、新しいことではない。だが、Domoはモバイルに特化しているというのが新しかった。最高経営責任者(CEO)に至るまで誰もが、データによってつながっているというのが目新しい」

貧困地区では進学率が急上昇

分科会では、中西部イリノイ州セントルイスにあるイースト・セントルイス校区から来たリサーチ部長ジェニファー・ブラムバックさんが、Domoの導入例を紹介した。2015年からDomoを段階的に導入して、小中高の生徒が試験を終了した割合や、教室の空調環境、教師の時間管理などをデータ化して共有した結果、生徒の成績や進学率が急上昇したという。データによって、クラスや学校、施設などのどこにケアを集中したらいいのか明白になったからだ。

「私たちの校区は、46%の世帯が貧困ライン以下の生活をし、大学への進学率は9%。子どもの多くが犯罪に関わって刑務所に行く、夢などない校区でした」(ブラムバックさん)

しかし、2014年に39%だった高校進学・就職率がDomo導入後の2017年には98%まで上がった。校区内の生徒が得た奨学金総額は2014年の約40万ドルから、2017年には1400万ドルまで膨れ上がった。大学から複数の合格通知と奨学金のオファーをもらう高校生も現れ、校区の犯罪率低下などにも貢献しているという。

「どうもありがとう」からDomo

Domopalooza期間中、Business Insider Japanは、Domoのジャシュ・ジェイムズCEOを単独インタビューした。ソルトレイクシティに本部があるモルモン教の宣教師として、日本に滞在した親日家で「どうもありがとう」という感謝の気持ちを込めたDomoを社名にした。現在、企業価値は23億ドルとされる。

DomoのCEO、ジョシュ・ジェイムズ氏

日本滞在の経験を持つジョシュ・ジェイムズCEOは日本市場の開拓に着手する。

ユニコーン企業として注目を浴びる中、次の経営の焦点は、「日本市場」とプラットフォームに「予測機能」を持たせることだという。

日本では2017年、JAL、ヤフーなど大企業がDomoを導入したことで、話題を呼んだ。

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「日本は歴史的にイノベーションを引き起こしてきた。世界第3位の経済大国・日本が、競争力を上げて生き残っていくには、ビジネスをもっと効率化する必要性があると理解している。企業や社会が、今何を必要としているのかは認識している。日本は、もっと透明性が高い構造になっていくだろう。そして、それを実現するのがデータシェアリングだ」(ジェイムズ氏)

「日本のカスタマーは伝統的な大企業が多いが、彼らはイノベーションを起こせるとわかれば、行動に移す。それが私にはとても興味深い」(同)

また、プラットフォームでは今後、クラウド上にあるデータとアルゴリズムなどを組み合わせて、トレンドなど目的にあった予測を、利用者に「アラート」で知らせる機能を追加したいと話した。

「多くの人々やデータが、Domoがやっていることを可能にしてくれている。プラットフォームをつくるのに7年と3億ドルを要した。今後、ビジネスを劇的に変えるには、どうしたらいいのか。現在、データは1カ所に集められている。ただ蓄積されているだけでなく、それが何であるかはわかっている。そこにAIや機械学習、アルゴリズムを組み合わせると、データは私たちが考えつかないことを、予測してくれる」とジェイムズ氏。

「例えば、次の原稿は、データに基づくと、『こんなのはどうだい?』といった具合だ。今後は、この分野に投資を振り向ける。自分には予測できないことが、データ分析によってアラートで知らされてくるようになる」

(文・写真、津山恵子)

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