中国へ向かう途中、専用列車の中で撮影された1枚。
KCNA
金正恩氏の北朝鮮の指導者として初めての外遊先は中国だった。
訪中が明らかになったのは同氏が帰国した後のことだったが、北京に正恩氏の専用列車が到着したとの情報は大きなヒントとなった。
金一家の専用列車については、多くは知られていない。しかし、これまでの情報から、フランス産のワインや薄型テレビ、豪華なレザーを使った座席が完備されているようだ。
北朝鮮の国営メディアが撮影した数多くの写真は、専用列車の内部を捉えた貴重なものだ。のぞいてみよう。
21両編成の列車が北京に到着したのは3月26日。緑色の車体に黄色いラインが入った列車は以前、正恩氏とその父、正日氏が使用していたことから、すぐに認識された。
専用列車が入ってきたことで、北京の鉄道の運行スケジュールにも影響が出た。正日氏が列車で訪れたときには、邪魔にならないよう、他の線路への電力供給がストップした。
中国の関係者に向かって、列車の中から手を振る金正恩氏。撮影されたのが到着時なのか出発時なのかは不明。
KCNA/Reuters
Source: The Chosun Ilbo
列車の平均速度は、時速約60キロメートル。防弾仕様になっているため、一般的な列車に比べ、車体が重いのだろう。
ロシアのウラン・ウデの駅に停車する専用列車(2011年8月)。
Anna Ogorodnik/AP
Source: The Chosun Ilbo, The New York Times
列車に乗るときも、足元にはレッドカーペットが。今回の訪中で正恩氏がこれを使ったかどうかは分からない。
シベリアにあるブレヤ駅で、レッドカーペットの上を歩いて列車に乗り込む金正日氏(2011年8月、ロシア)。
IA Port Amur, www.portamur.ru/AP
こちらの車両は、ピンク色のレザーの椅子を採用。座席の間には、木製の小さなテーブルもある。正恩氏とその妻、李雪主氏とともに、北朝鮮の高官たちが座っている。
KCNA
少なくとも20人は列を作ることができるようだ。
KCNA/Reuters
椅子の色を除けば、車内のデザインは正日氏の時代からさほど変わっていないようだ。2011年のこのYouTubeの動画は、かつての様子を捉えている。
正日氏の時代には、最後尾の車両に薄型テレビと木製のデスク、コンピューターが備え付けられていた。このデスクとコンピューターは今、平壌にある同氏の霊廟に収められている。テレビの行方は分からない。
Curtis Melvin/YouTube
Source: The New York Times
正恩氏も列車の中で仕事をする。2015年の動画から取ったこの静止画は、北朝鮮国内を列車で移動しながら、真っ白な会議室で高官と話す正恩氏の姿を捉えたものだ。
North Korean state media/YouTube
だが、父親とは違い、正恩氏はデスクトップのコンピューターよりもアップルのMacBookを好んで使っているようだ。
2015年の動画から取った静止画。右端にMacBookが映り込んでいる。
North Korean state media/YouTube/Business Insider
正日氏は豪華な旅を好んだ。ボルドーやブルゴーニュの赤ワインと銀製の箸のほか、世界中から取り寄せた好みの物を常に用意させていた。そう語るのは、2000年代前半に正日氏と旅をしたロシアの高官、コンスタンチン・プリコフスキー(Konstantin Pulikovsky)氏だ。当時の北朝鮮は長年に及ぶ飢饉の後、人道支援に頼っていた。
プリコフスキー氏(中央)と金正日氏(ウラジオストク近郊、2001年7月)。
Igor Kochetkov/AP
Source: The New York Times
車中では「ロシア、中国、韓国、日本、フランス……どんな料理でも注文することができた」プリコフスキー氏は言う。この撮影日不明の動画は、正日氏の時代の食堂車の様子を捉えたものだ。その後、リノベーションされたと言われている。
Source: The New York Times
正恩氏がかつての父親のように列車の中にさまざまな贅沢品を用意させているかは分からない。だが、ケチだという情報もない。正恩氏は、スイスチーズや高級シャンパーニュの「クリスタル」、ヘネシーのコニャックが好きだと報じられている。
北京で、習近平氏と乾杯する金正恩氏。
KCNA/via Reuters
Source: The New York Times
(翻訳、編集:山口佳美)