スペースX創業者、イーロン・マスク。2018年2月。
Joe Skipper/Reuters
イーロン・マスクは2002年、わずかなスタッフとともに、ロサンゼルスの空きオフィスでスペースXをスタートさせた。
現在、社員は5000人以上、約16億ドル(約1700億円)を集め、これまで様々なストーリーを重ねてきた(そしてコストのかかる)宇宙産業を破壊しつつある。
同社のビジネスは、比較的小型の衛星打ち上げ用ロケットからスタートし、コストを競合の4分の1に抑えた大型ロケットへと拡大してきた。
また、史上最も広い範囲をカバーする衛星インターネット・ネットワークを開発中、一方で100人を1度に火星へ送ることができる宇宙船の製造を進めている。
そして、事業を成功させるために、同社は数百万ドルを投じて、アメリカ全土で施設の改築や新設を行っている。
マスクとスペースXが宇宙を目指して働く、主要施設を見てみよう。
スペースXの所在地
Google Earth; Business Insider
スペースXは2002年、カリフォルニアで創業、すぐにマーシャル諸島で打ち上げテストを開始した。だが、打ち上げをアメリカで行うようになって以来、同社の施設はほぼアメリカだけとなっている。
現在、スペースXが拠点を置いているのは、カリフォルニア州、フロリダ州、ニューメキシコ州、テキサス州、バージニア州、ワシントン州、そしてワシントンDC。オフィス、発射施設、工場、テスト施設など。
本社 —— カリフォルニア州ホーソーン
Google Earth; Business Insider
スペースXの広大な本社は、ホーソーン市営空港(Hawthorne Municipal Airport)とセンチュリー・フリーウェイ(Century Freeway)の真南にある。本社ビル(元ボーイングの施設)の屋根には「X」をかたどったソーラーパネルがある。
隣にはテスラのビル、周辺には倉庫や工場があり、ファルコン9、ファルコン・ヘビー、そして近く製造が開始される火星を目指すビッグ・ファルコン・ロケット(BFR)のエンジンや部品などの組み立てが行われている。
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スペースX本社の内部。焦げ跡のついたドラゴン宇宙船が管制室の外側に吊り下げられている。
SpaceX/Glassdoor
開発およびテスト施設 —— テキサス州マクレガー
Google Earth; Business Insider
スペースXの創業直後、マスクはロケットエンジンのテストや宇宙船のプロトタイプの打ち上げができる場所を探していた。そして最終的に、テキサス州マクレガーにあるビール・エアロスペース(Beal Aerospace)の閉鎖された施設を引き取った。
この施設は銀行家でビリオネア、そしてギャンブラーとしても知られるアンドリュー・ビール(Andrew Beal)が作ったもの。ロケットエンジンのテスト場もあった。地元民の家からは十分離れていた。
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ロケットの部品はカリフォルニアや他の場所で作られ、マクレガーで何度もテストされる。打ち上げの際の激しい衝撃に耐えられるかどうかを確認するためだ。使用済みのロケットも、マクレガーで再整備し、テストする。
テスト中のエンジン。テキサス州マクレガーにあるスペースXの開発施設にて。
SpaceX
ロケットの打ち上げテストが失敗しても、十分なスペースがあるため、上空から燃えながら落ちてくる破片が誰かに当たることはない。
スペースXのグラスホッパー(Grasshopper)ロケット。エンジン・センサーの不具合が起き、空中で爆発。2014年8月。
SpaceX/YouTube
フロリダ州のケネディ宇宙センターとケープカナベラル空軍基地にも、複数の施設がある。
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第40発射施設(SLC-40)—— フロリダ州ケープカナベラル空軍基地
Google Earth; Business Insider
スペースXの主力の発射台は、SLC-40(Space Launch Complex-40)。ロケットは発射台のすぐ南側の建物で寝かした状態で組み立てられ、発射台まで運ばれた後、ゆっくりと垂直に立てられる。
同社は2018年、30回の打ち上げを目標としている。そのほとんどがファルコン9。1社による商業ミッションの打ち上げ記録を容易に破るはずだ。
同社は、70回の打ち上げが予定され、売り上げは約100億ドル(約1兆700億円)にのぼると2017年に述べている。
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だが、2016年には大きな打撃を受けた。酸素タンクの設計ミスでファルコン9が爆発。発射台を修理し、再稼働するまでに約1年かかった。
爆発したファルコン9。動画からの静止画。フロリダ州ケープ・カナベラルにて。2016年9月1日(現地時間)。
Launch Report/Handout via REUTERS
39A発射施設(LC-39A)—— フロリダ州ケネディ宇宙センター
Google Earth; Business Insider
アポロやスペースシャトルの打ち上げで有名なLC-39A。スペースXは2014年、NASAと20年のリース契約を結んだ。ファルコン9の打ち上げのほとんどは、ここで行われる予定。
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スペースXは3基のブースターを備えたファルコン・ヘビーをLC-39Aから打ち上げたところ。マスク所有のテスラ・ロードスターを火星へ送った。
Thom Baur/Reuters
もうすぐここから2人を月飛行へと送り出す。
スペースXの宇宙服とクルー・ドラゴン(Crew Dragon)宇宙船。
Elon Musk/SpaceX; Instagram
第4発射施設(SLC-4)—— カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地
Google Earth; Business Insider
スペースXは、機密性の高い偵察衛星といった軍事衛星の打ち上げで、次第にユナイテッド・ローンチ・アライアンス(United Launch Alliance)などの企業と競合するようになってきている。
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数多くの打ち上げを行うために、フロリダだけでなく、カリフォルニア州ロンポックにあるアメリカ空軍の発射場も使っている。
地球観測衛星PAZを打ち上げるファルコン9。2018年2月22日。
SpaceX/Flickr (public domain)
スターリンク・サテライト・ファクトリー —— ワシントン州レドモンド
Google Earth; Business Insider
2015年、マスクは驚くべき計画を明らかにした。地球の周りに数千個の衛星を打ち上げ、地球上のあらゆる場所での高速インターネットの実現を目指す。
この計画はスターリンク(Starlink)計画と呼ばれる。マスクはワシントン州レドモンドに、衛星の製造とテストを行う施設を作った。約1万2000個の低軌道衛星を製造し、打ち上げる計画で、これは人類がこれまでに打ち上げて来た人工衛星の数の2倍以上にあたる。
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計画は2018年2月下旬、重要な1歩を踏み出した。2基のプロトタイプ衛星を打ち上げた。
BFR工場 —— ロサンゼルス港(計画中)
スペースXは、20万平方フィート(約1万9000平方メートル)の火星宇宙船工場をロサンゼルス港に建設する予定。
Google Earth; Business Insider
最終的に、マスクは巨大で再利用可能なビッグ・ファルコン・ロケット(BFR)を使って火星を植民地化したい。だが、ホーソーンの本社には、約106メートル(自由の女神像より高い)のロケットを作るスペースはない。同社はロサンゼルス港のバース240(Berth 240)と呼ばれる18エーカー(約7万3000平方メートル)の敷地のリースを希望している。
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ロサンゼルス港がリースを承認した場合、同社は巨大ロケット工場を建設する予定。またここなら、アメリカ史上最大級のロケットの輸送も容易に行える。
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テストはマクレガーで行われるため、BFRはまずテキサス州の南端に送られることになるようだ。だが、巨大なロケットをどのようにして約640キロメートル内陸のマクレガーまで運ぶのかについて、スペースXは言及していない。
Google Earth; Business Insider
南テキサス発射場 —— テキサス州ボカ・チカ州立公園(建設中)
Google Earth; Business Insider
スペースXはボカ・チカの小さな村をBFRなどの打ち上げの宇宙基地する予定。マスクは、2022年に火星に向けた最初の無人ミッションを、2024年に初の有人ミッションを行いたいと考えている。
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アメリカ最南端の発射場は、打ち上げに極めて有利となる。赤道に近いほど、地球の自転スピードが速く、軌道到達に必要な燃料が少なくて済む。
Google Earth; Business Insider
スペースXはBFRを超高速な地球上の移動システムにすることも考えている。だがマスクのビジョンが実現するか否かは、その時になるまで分からない。
(敬称略)
(翻訳:Ito Yasuko/編集:増田隆幸)