「男女は割り勘」「仕事は転職より同じ会社で長く」スマホネイティブZ世代のリベラルと保守の塩梅

1980年代生まれ以降のミレニアル世代の中で1995年以降生まれの若年層(16〜21歳)は早くからスマホやSNSを使いこなす世代だ。いわゆる「Z世代」と呼ばれる、この世代の価値観を調査したレポートが2018年4月に発表された。

調査によると、Z世代は、リベラルだが保守的、という一見相反する価値観が同居しているという。家事・育児の分担も男女平等という感覚が定着している一方で、キャリアに関しては「転職・起業より会社で長く働く」という伝統的な仕事観や、「有名な大学に行った方が有利」と堅実な考えを持っている。

あるZ世代の大学生は、「広くて怖いから中心に寄っていく」と意外なことを口にした。その意味するところは?

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Z世代が応援したくなる人は、「共感」を感じる人。一方、学業など最低限のことをやっていないと、支持できないそうだ。写真は、大学生が参加した座談会のまとめ書き。

世代ギャップはSNS、キャリア、結婚で顕著

調査は、Z世代の調査・研究をする「Z世代会議」が行った。会議は、元電通でコミュニケーション・ディレクターの通称さとなおこと、佐藤尚之さんと学習院大学経済学部の斉藤徹特別客員教授と同大学生らでつくるプロジェクトチームだ。

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出典:Z世代会議

Z世代とは、スマホやSNSを使いこなす「ソーシャルネイティブ世代」。対して、1981〜1994年生まれの世代は幼い頃からネットが身近にある「デジタルネイティブ世代」で、「Y世代」と呼ばれる。

今回の調査はミレニアル世代の16〜35歳の2824人を対象に、インターネットを通じて行った。SNSや生活、キャリアや結婚に関し、104項目から回答者が自分に近いものを選んだ。

若年層(16〜21歳、Z世代)が一番多く選んだ項目は「家庭では男女の区別なく家事・育児を分担した方が良い」。続いて「自分が気に入れば有名ブランドの商品でなくて良い」だった。

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16〜21歳が選んだ項目ベスト10。

出典:Z世代会議

高年齢層(29〜35歳)と若年層の間で違いが目立ったのは、結婚観や男女間の感覚。

「結婚をしないで子どもを産んでもいいと思う」という人はミレニアル世代の中でも高年齢層の方が若年層よりも多く、一方、「恋人同士でのデートや食事は割り勘が当たり前」の項目は、若年層が高年齢層よりも多かった。

このほか、「1つのSNSで複数のアカウントを使い分ける」「直接会ったことのない人ともSNSでやりとりする」「人の目が気になる」「人付き合いが苦手」「上下関係は大事」、転職・起業より会社で長く働く「伝統的な仕事観」という特徴がZ世代に顕著だった。

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SNSのアカウントの使い分けや結婚観について、若年層と高年齢層の間で大きな差が出た。

出典:Z世代会議

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自分のスマホを初めて使った年齢。

出典:Z世代会議

ネットで選択の幅は広がったけど、逆に……

調査の中心になった斉藤氏は、「Z世代はリベラルだけど、保守的な要素を合わせて持っている」と分析する。

なぜ、相反する価値観を併せ持っているのか。

3月下旬に開かれたZ世代会議メンバーの座談会を取材した。

「僕たちは、生まれた瞬間からネットが身近にあった。ネットは、自分と違う性質の人たちのことを否定するものじゃないという情報が入ってきやすい。いろんなことを受容できる幼いときから、そういう情報がガンガン入ってくる

学習院大学1年の浅尾碧城さん(20)は、同世代がリベラルな理由をこう話した。

一方で、「僕たちは、景気が悪かった時代のことが心の中にある。就職氷河期っていう言葉が小中学校の時がずっとテレビで流れていた。だから、王道に乗って安心して生活したい。(ネットが出てきて)認められる(価値観の)幅が広がっているけど、怖いから中心に寄っていくのでは」と説明する。

同じく学習院大学3年の飯塚浩太郎さん(21)も「世界同時多発テロとか世界的な危機もたくさんあって、自然と安定を求めるのかな。お金、就職も」。リベラルの要因は、「ネットで新しい価値観が生まれたのかな」とみていた。

学業を投げ出す「ガチ勢」は応援できない

座談会

3月下旬に開かれたZ世代会議。主催はマンダム。同社は今夏のデオドラント商品を、「ガチ勢」をテーマに広報しようと、座談会でガチ勢について、大学生に意見を聞いた。

座談会のテーマは「ガチ勢」(何かに打ち込んでいる人のこと)。どんなガチ勢を応援できるか、自分がガチになっていることを話し合った。

学業や授業を投げ出して、別のことに打ち込むガチ勢は応援できないという参加者が多く、「学業が本分」という堅実な意見が出た。「大学全入時代だからこそ、『大学の意味は何?』って逆に問われていて、とりあえず入学したという人を否定してしまうのかも」とある参加者は話した。

ガチになっていることは、「アイドル」「断捨離」「英語」などさまざま。同級生と競い合わず、ライバル意識の薄い、ガチのあり方。そんなZ世代は何をモチベーションにしているのか。

参加した大学生インフルエンサー(通称・くーりー)で、慶應大学3年の栗原恒河さん(20)は、

「ガチ勢っていう認識は、インターネットで変わったと思うんです。母親からよく聞くんですが、『アイドルってもっとすごかったのよ。男の子は一人の人が好きだったのよ。テレビに映っている人が誰でも知っているような人で』と。逆に、今はアイドルはたくさんいる。それと同じで、〇〇ガチ勢と言っても、そんなことないじゃんって。自分よりすごい人が周りにいて。じゃあ、違うもので勝負しよう、っていう人が周りにすごく多い。自分しかできないものを探したり自分だけの世界を作る人がZ世代に多いと思う」と自らの世代を分析した。

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大学生インフルエンサーのくーりーさん。Z世代は、「自分にしかできないものを探す」世代だという。

細分化する世代「ギリギリZ、ピュアZ」

Z世代会議は、2017年に斉藤氏とその自主ゼミのメンバーで立ち上げ、企業のマーケティング向けに学生の座談会を開催してきた。これまでに朝日新聞社やパナソニックでの開催の実績がある。同会議は、今回からメンターに佐藤氏を迎え、本格的な調査・研究を始める。自前のメディアをつくることも計画している。

学習院大学

冨田侑希さん(左)と斉藤徹特別客員教授(右)。冨田さんは、就活のあり方を変えたいと、新たなプロジェクトにも取り組んでいる。

Z世代の学生を見てきた斉藤氏は「Z世代は、SNSで一人一人の力が強くなった。常に誰とでもコミュニケーションが取れて、何か問題があっても隠せない。自ずと平等とか公正とか、基本的な価値観、道徳観が重要になる。社会はリベラルな方向に自然に動いていく。保守的なのは、失われた20年の影響が大きいと思います」と話す。

会議の中心メンバーの学習院大学出身の冨田侑希さん(22)は、座談会で会ったインフルエンサーについて、「共感を呼びやすい人だった。自虐的なところがあって。『インケだから』と言っていて。自分をアピールするところじゃないところを、あえて伝えることで共感を生むというか」という世代の特徴を分析。

今回の調査でも、Z世代では「SNSの複数アカウントを使い分ける」「人の目が気になる」という回答が多く、斉藤氏は「Z世代は、小さい頃からプチ炎上を体験しているので、悪目立ちするのがいやなんです。Y世代はSNSを積極的に使うけれど、Z世代はむしろ息苦しくて。承認欲求ってよくないな、と感じてる世代」という。

ミレニアル世代といっても年齢の幅が広く、YとZでは大きく価値観が異なる。

冨田さんは「私はギリギリZ。感覚的にはY。私はSNSが苦手ですが、ピュアZの大学1年生を見ていると、(SNSの使い方が)全然違う」。ミレニアル世代は、急速に普及したSNSと連動するように、Y、Z、さらにはピュアZと世代の価値観が細分化されている。

(文、撮影・木許はるみ)

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