2018年3月、Google Payで「ラスベガスモノレール」の乗車券が利用できるようになった。
日本でおサイフケータイを使うような感覚で、外国でもキャッシュレスで決済ができたら海外出張や旅行はもっと便利になるはず。ラスベガスでの取材の合間に、そんなスマホ決済の国際化を感じられる体験をしてきた。
グーグルは3月19日、同社のキャッシュレス決済サービス「Google Pay」が、米国ネバダ州の公共交通機関「ラスベガスモノレール」の切符に対応したと発表した。
理論上は、対応するAndroidスマートフォンであれば(国内向けスマホであっても)、ラスベガスのモノレールをチケットレスで利用できることになる。
ラスベガスのホテルをつなぐモノレール。取材時、Google Payのラッピング車両が運行していた。
ラスベガスはカジノの街でありシルク・ド・ソレイユに代表されるショーの街であると同時に、国際カンファレンスやトレードショーが多数開催される「イベントの街」でもある。
ラスベガスモノレールは、そんな現地のメインストリート「ストリップ」界隈の複数のカジノホテルとカンファレンス会場をつなぐ公共交通機関。ウーバーやLyftといった配車サービス全盛の今でも、出張や旅行者にとっては便利な移動手段だ。
購入は日本のアカウント、クレジットカード、スマホでもOK
まずは、乗車チケットを買ってみた。方法はいたってシンプル。スマートフォンのブラウザでラスベガスモノレールのサイトにアクセスし、目的のチケットを購入。その後、チケット情報をGoogle Payに登録するだけだ。
Chromeブラウザーでラスベガスモノレールのサイトにアクセス
トップの「Buy Tickets」のボタンから購入できる。
購入できるチケットの種類は券売機より多く、安い
オンラインでは、1回券が5ドル、1日券が10.40ドル、2日券が18.40ドルと最大7日間までのチケットがある。1日券は券売機と値段が変わらないが、1日券は券売機だと13ドルなので、オンラインの方がお得。
チケットと控えを受け取るためのEメールアドレスを入力
ここで入力するEメールアドレスには、領収書や購入したチケットへのリンクが送信される。
支払い方法は「Google Pay」を選択する
一般的なクレジットカードでも支払えるが、Google Payのウェブ決済機能が使える。
Googleアカウントに紐付いたクレジットカードを選べる
ログインしているGoogle アカウントに紐付いたクレジットカードが表示される。複数のカードが紐付いている場合は、選ぶこともできる。
チケット画面で「Save to phone」ボタンをタップ
無事購入できると、チケットの使い方を選択できる。Google Payを使ってスマホに登録するほか、QRコードでも改札を通過できる。
Google Payアプリに切り替わり、チケットが有効になる
ChromeからGoogle Payアプリ切り替わり、チケットが表示される。なお、チケットは1つの端末に1種類しか登録できない
日本のクレジットカードでも決済できていた
筆者は自分のGoogleアカウントに紐づけた日本のクレジットカードで決済したが、無事完了していた(別日に往復のため1回券を2枚買った)。
こういった決済サービスでは、何らかの制限がかかっていて旅行者が使えないケースも少なくない。例えば、中国のWeChat Pay(微信支付)では日本のクレジットカードでチャージできない、といった具合だ。
しかし、今回の場合は「日本で作成して使っているGoogleアカウント」「Google Payに登録済みのクレジットカード」「日本で買ったFeliCa&NFC対応スマートフォン」の組み合わせで利用できた。
ラスベガスモノレールの各駅にはGoogle Payに関する簡単な利用方法が掲示されていた。
なお、Google Payに対応するスマートフォンはAndroid 4.4以上かつNFC(およびHCE)をサポートしている端末だ。今回は国内で販売中のnuroモバイル版の「Xperia XZ Premium」で利用した。
iPhoneや、古いAndroidスマートフォン、NFC非搭載の格安スマホなどでは利用できないので注意だ。
読み取り速度はSuicaほど速くはない
次に、実際に購入した電子チケットを現地で試してみよう。改札には紙の乗車チケットを吸い込む部分と、電子チケットを読み込む部分の2カ所があるため、Google Pay利用時は後者の方にスマートフォンのNFCアンテナ(多くの場合は背面)を当てれば認証、通過できる。
ラスベガスモノレールの改札は「切符」「QRコード」「Google Pay」の3種類の方法で通過できる。
改札の読み取り箇所は、矢印でGoogle Payのアイコンと共に示されていて、迷うことはなさそうだ。ただ、QRコードの読み取り機と一体化しており、Google Payの読み取り部もガラス製になっているため、スマートフォンを当てるのには少しとまどう。
チケットを登録したスマホを、ガラス部にタップ。筆者の環境では、Google Payアプリを表示した状態でないと反応しなかった。
筆者が試した限りでは、スマホの画面にGoogle Payアプリを表示した状態でないと認識されず、また読み取り完了までに1、2秒はかかった(読み取る場所のコツを掴めばもう少し早くなるかもしれない)。方式がそもそも違うとはいえ、Suicaなどの日本の交通系ICカードの読み取り速度の優秀さ(と、そのシステムを実現している多大な設備投資)を意外なところで感じさせられた。
乗車以外でのユーザー体験が課題
日本国内サービスとラスベガスのチケットが並ぶGoogle Payのアプリ画面。ここに海外でも使える形で国内のクレジットカードなどを登録できると、利便性は一気に増すだろう。
Google Payでの乗車は、紙の切符を現金で買うより非常に快適な体験になっていると感じる。
一方で期待したいのは、Google Payでの「モノレール乗車以外」の日本人旅行者の決済だ。これは、まだ一切使えない状態だ。
そのため、モノレール駅構内の自動販売機やマクドナルドなどの店頭で物品を購入する際、Google Payでは決済できない。
なお、Google Japan Blogに投稿された2016年12月のAndroid Pay(Google Payの前身のひとつ)日本ローンチ時の記事によれば、
三菱東京UFJ銀行、Visa、Mastercardなどの企業との協力により、お気に入りのアプリからの Android Pay チェックアウトなど、今後もより多くのサービスの提供を予定しています。
とあるが、2017年が終わって3カ月以上経ったいまでも、クレジットカード系決済サービスについて公式のアップデート情報はない。
(文、撮影・小林優多郎)