Amazonが現金主義社会を攻略する日、フィンテック本格進出Xデーを考える

Amazon Cashロゴ

最近、Amazonの多角化経営が本格化してきており、多くの経営者が自社の事業ドメインにAmazonが参入してこないかと戦々恐々としている、というニュースが出てきています。

その中でも大きな仮説として、Amazonがいつフィンテック事業に本格参入するのか、という話題は尽きることがありません。

最近のいくつかのニュースを組み合わせてみると、Amazonのフィンテック事業に対する目的がなんとなく見え始めてきたので、今日はその話を書いてみたいと思います。

アメリカで擬似デビットカード機能「amazon cash」を提供開始

まずはじめに、Amazonがアメリカで擬似デビットカードのような機能であるamazon cashをリリースしました。

Amazon Cashの宣伝ページ

amazon cashというのは、このページで得られるバーコードをセブンイレブンなどのコンビニに持参することで、その場で現金をAmazonのアカウントに入金することが出来る機能です。

そしてオンラインで、その入金した現金を使ってAmazonで買い物ができるという仕組みです。

何故このような仕組みが必要かと言うと、アメリカではクレジットカードを持てない人が多数いるだけではなく、銀行口座でさえも持てない人が相当多数いるからです。

Amazonのメキシコにおける敗因...

AmazonはメキシコでAmazon.com.mxという自社サービスを提供し始めていますが、現時点ではeコマースにおける3番手のプレイヤーに留まっています。

2016年におけるメキシコでの売上は$253M(約253億円)と推測されており、決して大きい存在感があるわけではありません。

Amazonは昨年、メキシコにおいてもamazon cashと似たような仕組みを導入してきました。ユーザーはセブンイレブンなどのコンビニで1回あたり100〜5,000ペソ ($5-$270)、1日あたり最大1万ペソ ($540) までを、Amazonアカウントに入金することができる、というものです。

一方で、この仕組みはあまり使われていませんでした。というのは、入金可能なコンビニエンスストアが限られていたためです。

クレカ普及率が3割以下のメキシコでデビットカード Amazon Rechargeableをリリース

そもそもなぜメキシコでこのような仕組みが必要かと言うと、メキシコにおけるクレジットカード普及率は1/3以下であり、80%のユーザーは未だに現金での支払いを好んでいるという現実があります。

クレジットカードの画像

参考までに、日本のクレジットカード利用率というのも諸外国に比べると決して高いとは言えません。

がしかし、メキシコの80%が現金というのは、おそらく日本よりも相当高い率で現金支払いが残っている国だと言えるのは間違いないでしょう。

現金で支払いたいというユーザーの習慣を変えることは難しいため、現金払いとオンライン注文という間の溝を埋めていく必要があるわけです。

メキシコのeコマース市場の規模

このグラフからわかるように、メキシコのeコマースの市場規模自体は年平均25%で成長しており、もしも現金決済とオンライン注文の溝を埋めることが出来れば、より速いスピードでより大きな成長が可能になるわけです。

そこで Amazonはメキシコで、Amazon Rechargeableという仕組みを導入しました。

Amazon Rechargeableは、MasterCardやメキシコの銀行であるGrupo Financiero Banorteとの提携によって実現しており、対応するメキシコにあるほぼ全てのコンビニエンスストアで Amazonアカウントへ入金が可能になった、という仕組みです。

AmazonのFintech進出の真の狙い

「Amazon Checking-Account Plan Sees Banks as Partner, Not Prey」という記事にも詳しく書かれていますが 、Amazonのフィンテック進出は、メキシコでの実験のように、既存の銀行とのパートナーシップで実現していく可能性が非常に高いと考えられます。

というのは、少なくとも現時点では、Amazonが楽天のように複数の金融事業を自社で採算部門として持つというよりは、どちらかと言うとEC化率を上げる、つまり現時点でまだeコマースにアクセスできない人をeコマースにアクセスできるようにする、という施策に重きを置いているように見えるからです。

そしてそれを実現するためには、amazon cashのように、自社でひとつひとつのコンビニエンスストアと提携をするよりは、既にATM網を有している既存の銀行とパートナーシップを組んで、OEMのような形で Amazonブランドのデビットカードを発行していく形の方が、遥かに展開が早いと考えられるからです。

以上、Amazonの最近のフィンテック進出を考察してみましたが、皆さんはどのように感じられましたでしょうか。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。

決算が読めるようになるノートより転載2018年4月3日公開の記事

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