Bridgewater Associatesの創業者、ダリオ氏
Astrid Stawiarz/Getty Images for LinkedIn
JPモルガン・チェースのCEOジェイミー・ダイモン( Jamie Dimon )氏は先頃、アメリカは「これまでにないほど強大になっているかもしれないが、明らかに何かが間違っている」と述べた。
米大手ヘッジファンドBridgewater Associatesの創業者、レイ・ダリオ( Ray Dalio )氏は、Business Insiderの週刊経済ニュース番組The Bottom Lineのインタビューで、編集長のヘンリー・ブロジェット( Henry Blodget) に「彼の言うことは正しい」と語った。
ダリオ氏が立ち上げたBridgewaterは、世界最大のヘッジファンドに成長し、米経済誌フォーブスによると、2016年の彼の報酬額は14億ドル(約1555億円)だった。
ダイモン氏は株主宛の年次書簡の中で「私たちは全くチャンスに恵まれない世代を生み出している」と述べたが、ダリオ氏も教育制度への問題意識を強めている。ダリオ氏の妻が資金提供したコネティカット州での研究によると、同州の生徒の22%が、学校教育から離脱、またはつながりを絶っているという。
ダリオ氏は 「そうしたことは子供たちの個人的な悲劇にとどまらず、社会的な悲劇になりかねない」とプロジェット氏に語った。「格差のある世界を作り出す教育システムは、資源のひどい浪費であり、非効率的でもある。人的インフラに問題があるんだよ」
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ブロジェット:ジェイミー・ダイモン氏が先日、「この国は素晴らしい国だが、問題がある」と語りました。
ダリオ: 彼は正しい。
ブロジェット: 彼の意見に賛成ですか。
ダリオ:もちろんだ。色々と非効率になっている。この国の多くの場所で、『基盤』がうまく作られていない。別の言い方をすれば、最低レベルの教育基盤が整っていない。場所によっては最低水準の環境さえない。あらゆる場所で、私たちは人的インフラを失いつつあるという悲劇に直面している。
まともな投資がされていない。私の妻はコネティカット州で最も治安が悪い地域の教育に深く関わっていた。彼女はその問題を非常に重視し、教育から離脱したり、つながりを絶ったりした若者たちについての研究に資金提供をしていた。離脱した若者とはつまり、高校には行くが活動に参加しない生徒のことだ。クラスには行くが、宿題も何もしない。つながりを絶った若者とは、学校に来ず、どこにいるかも分からない子どもたちのことだ。研究からは、コネティカット州の生徒の22%が離脱しているか、つながりを絶っていることが分かった。
こうしたことは子供たちの個人的な悲劇にとどまらず、社会全体の悲劇につながるだろう。彼らは最終的にどうなるのか。社会はどこへ向かうのか。その状況をどう理解すればいいのか。格差の大きい世界を作り出す教育システムは、資源の浪費であり、非効率と言うほかない。人的インフラに問題があること、それこそが深刻な問題だ。
ブロジェット:今のインフラは、あなたが何かをやりたいと思ったときに、あなたを後押ししてくれたインフラとは違うものになっているのでしょうか。
ダリオ: そうだね。幸運なことに私には私を気にかけてくれる両親がいて、学校にも行くことができた。私にはこの素晴らしい国のインフラによって、チャンスやひらめきを得ることができた。あなたの周りにもいたはずだ。だから夢を見ることができた。
『スーパーマンを待ちながら』(原題『Waiting for “Superman”』)という秀逸なドキュメンタリー映画がある。この映画は、スーパーマンになりたいと切望し、その後はスーパーマンを待ちわび、けれどもスーパーマンはいなかった、という話なんだ。彼は来ないし、希望もない。でも、人には希望が必要だ。家族が、インフラが必要なんだよ。私はそこから恩恵を得られたが、多くの人々はそうでない。しかし、誰にとっても間違いなく必要なものだ。
[原文:RAY DALIO: There is a human tragedy taking place in America]
(翻訳:Takae Ito)