アベマ、ネトフリ、アマゾンが激突する「恋愛リアリティショー戦国時代」

2018年の春シーズン。Netflix(ネットフリックス)、AbemaTV(アベマティーヴィー)、Amazonプライム・ビデオといったオンラインの動画配信サービス(動画サービス)でも、続々とオリジナルの新番組が始まっている。

中でも目立つのが、恋愛リアリティショーの数の多さだ。なぜ、恋愛リアリティショーは“動画世代”の心を射止めるのか?

恋愛リアリティショー勢力図

複数の関係者の話を元にまとめた、動画サービスの恋愛リアリティショー勢力図(2018年春シーズン)。

制作:Business Insider Japan (C)AbemaTV(今日、好きになりました。、真冬のオオカミくんには騙されない❤︎、恋する❤週末ホームステイ、恋愛学部交流会ラブ❤キャンパス、アプリで恋して何が悪い)、(C)フジテレビ(あいのり:Asian Journey)、(C)フジテレビ/イースト・エンタテインメント(TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS)、(C)アマゾンジャパン(バチェラー・ジャパン)

10代のアベマ、20代前半のネトフリ、“婚活世代”のアマゾン

動画サービスがオリジナルで制作する「恋愛リアリティショー」が人気だ。

AbemaTVが毎月発表している人気番組ランキングでは(視聴数ではなくAbemaTVが独自に集計した視聴データを元にしたもの)、2018年中は恋愛リアリティショーが毎月トップ3入りを果たしている。

特にヒットしたのが、恋愛ドラマに「人狼ゲーム」の要素を盛り込んだ『真冬のオオカミくんには騙されない❤』(オオカミくんシリーズ)

男性メンバーの中に1人以上、ウソをついて女性メンバーを翻弄する「オオカミくん」が混ざっているというコンセプトがSNS上で話題になり、最終回が放映された3月のランキングではトップに立った。

IT企業に勤める長尾暢子さん(23)は、SNSを通じて番組について知った。

「(オオカミくんシリーズは)中高生に人気があるイメージ。(出演者でモデルの)バンダリ亜砂也くんが『カッコいい!』とインスタでバズっていて知りました。あと、石原さとみさんに似ているメンバーがいる、というのも話題になっていましたね」

安倍乙さん(@abeoto0118)がシェアした投稿 -

Amazonプライム・ビデオは2017年2月、全世界225カ国以上で放送されている恋愛リアリティショー『The Bachelor』の日本版『バチェラー・ジャパン』を初上陸させた。

シーズン1では25人の女性が1人の独身男性(バチェラー)からの愛をめぐって争うというストーリーやラグジュアリーな婚活体験の要素がヒット。2018年5月からは、シーズン2の配信が予定されている。

公表はされていないものの予告動画を見ると、『バチェラー・ジャパン』シーズン2のバチェラー役は、AbemaTVの親会社であるサイバーエージェント社の社員であることが示唆されている。

一方でNetflixは、過去にフジテレビで放送されていた恋愛リアリティショー『テラスハウス』のNetflixオリジナル版を2015年9月から配信開始。

視聴データこそ出していないものの、2017年10月の調査を元に算出された「日本で最も抜け駆けウォッチされた作品」ランキングでは『テラスハウス Aloha State』が『ナルコス』に次ぐ第2位にランクインしている。

さらに2017年10月からは、かつてフジテレビで放送されていた『あいのり』もNetflixオリジナル版として復活。Netflix版『あいのり』は2018年秋からシーズン2が配信されることがすでに決定している。

恋愛リアリティショーは「コミュニケーション」

都内の大学に通う石川雄大さん(21)は、テレビで放送していた頃からの『テラスハウス』のファンだ。Netflixはスタンダードプランで月額950円。もともとは海外の映画を見るために契約していたところ、たまたま『テラスハウス』が配信開始。今まで継続して見続けている。

「友人と(内容について)『見た?あれなくない?』と話したりしています。コミュニケーションの一つになっていますね」

『バチェラー・ジャパン』も見ているという石川さんだが、その理由はPrime Studentというプランがあることが大きいという。学生であれば月額200円で通常のプライム会員の特典が利用できる。対象の映画やテレビ番組は見放題だ。

前述の長尾さんも「テラスハウスはもはやインフラ。見ないと話題についていけない」。

大学生たちの「コミュニケーションのインフラ」ともなっている『テラスハウス』。「副音声」を選択するとスタジオの芸能人によるツッコミを聞くことができ、人気コンテンツとなっている。

動画:Netflix Japan

一方で石川さんは、視聴体験という点では動画サービスとテレビではそんなに変わらない、とも語る

Netflixで実写作品を担当するコンテンツマネージャー・坂本和隆さんも「ネットだから、作品を大きく変えるということは特にはなかった」と語る。

Netflix版『あいのり』では、旅行中のスマートフォンの使用は禁止だったり、手書きで日記をつけたりと、現代の恋愛においては“不自然”ともいえるルールもあえて残されている。

共同テレビジョン 取締役の西山仁紫さん(左)とNetflix コンテンツマネージャーの坂本和隆さん。

共同テレビジョン取締役の西山仁紫さん(左)とNetflixコンテンツマネージャーの坂本和隆さん。

長年『あいのり』のプロデューサーを務めてきた共同テレビジョンの取締役・西山仁紫さんは、Netflix版『あいのり』について「結果的に今のSNSに対するアンチテーゼの番組になっている。SNSに慣れた子たちが参加すると、余計にあいのりの魅力に気づいてくれるようになった」と語る。

AbemaTVで『恋する週末ホームステイ』などのプロデューサーを務める濱崎賢一さんは、以前はテレビ朝日で『いきなり!黄金伝説。』などのバラエティ番組を担当していた。

恋愛リアリティショーはAbemaTVで初めて手がけたそうだが、(番組作りにおいて)テレビとの違いを感じたことはほとんどないという。

仕上がりはドラマっぽいですが、ドラマとは全然違うなぁ、と。むしろバラエティに近いと思います」(濱崎さん)

インフルエンサー化する出演者

それでも動画サービスとテレビの違いはある。それは、出演者が「インフルエンサー化」しやすい、という点だ。

IT企業に勤める新卒1年目の蓙谷香乃さん(23)は、「テラスハウスは、私たちと生きている世界が同じ。バチェラー・ジャパンはちょっとセレブ」。モデルなどの出演者をインスタグラムでフォローすることも多いという。

前述の石川さんによると、『テラスハウス』では番組で起こったことがきっかけで出演者のインスタグラムが軽い炎上状態になってしまうこともあるという。そういった現実とのつながりが“リアルさ”を感じさせる、と語る。

AbemaTVで『オオカミくんシリーズ』のプロデューサーを務める横山祐果さんは、出演者を選ぶ時には、モデルだったり一芸を持っていたりなど「インフルエンサーかどうか」を意識しているという。

「例えば『ゴシップガール』(ニューヨークに暮らすセレブなティーンの日常を描いたドラマ)などは憧れの目線で見るじゃないですか。それに近い感じで見てもらいたいな、と」

AbemaTVの恋愛リアリティショーでは、ファンがツイッター上で番組に関連した「ポーズ」を投稿するムーブメントも起きている。『恋する週末ホームステイ』に出演していた岡田祥詠くんを表した「しょうえいポーズ」に始まり、「今日好きポーズ」「恋ステポーズ」「オオカミくんポーズ」などが続出している。

“年齢層の拡大”がキーワード?

AbemaTVで恋愛リアリティショーのプロデューサーを務める濱崎賢一さんと横山祐果さん。

各プラットフォームごとにさまざまなコンセプトの番組が乱立し「戦国時代」となっている動画サービスの恋愛リアリティショー。

次なる戦略をNetflixとAbemaTVの番組プロデューサーに尋ねると、現在の主な視聴者層ではない年齢層にもリーチしてみたい、という回答が返ってきた。

「(『あいのり』が再放送される)フジテレビの深夜の視聴者はF1層(20歳から34歳までの女性)がほとんどいない。若い人たちにもっと見てもらえるように、開拓の余地はまだまだあるのでは、と思っています」(西山さん)

「女子高生向け(のタイトル)は揃ってきたなという感じがするので、次は20代。うちも負けられないね、と」(濱崎さん)

恋愛リアリティショーの次の“覇者”はどのタイトルになるのか。

(文・西山里緒)

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