マネックス・松本会長、コインチェックのIPOを視野 —— 買収会見で仮想通貨に強気

マネックスグループがコインチェックを買収して、本格的に仮想通貨の世界で事業を拡大していく。巨額の仮想通貨を流出させたコインチェックを傘下に置いて再建させることで、オンライン証券事業を中核に持つマネックスGは今後、企業価値のさらなる向上を狙う。

そして、コインチェックの争奪戦は、仮想通貨市場の注目を集めるだけでなく、株式トレーダーや投資家たちもスポットライトも当てる。マネックスGの株価の勢いは一気に増した。

マネックスG・会長兼CEOの松本大氏は4月6日、「将来、コインチェックのIPO(新規株式公開)を目指している。仮想通貨交換業の本質がますます銀行に近いものになることが予想される中で、資本を強くすることも重要であるし、内部管理体制を強固にするためにも、IPOをして強い会社にしていきたい」と述べた。

MonexーCoincheck

マネックスGは同日午前、580億円相当の仮想通貨NEMの不正流出事件があっったコインチェック(本社・東京渋谷区)の全株式を36億円で買収することに合意し、コインチェックの経営の立て直しと信用の回復を進めていくと発表。コインチェックの新社長にはマネックスの勝屋敏彦・最高執行責任者(COO)が就き、現在の経営陣は退任する。

コインチェックは累計で約170万口座(3月8日現在)を保有し、仮想通貨業界内ではトップクラスの顧客基盤を持つ。仮想通貨交換業への進出を目指していたマネックスGにとっては、魅力的な買収ターゲットだ。コインチェックの買収を巡っては、マネックスGの他に大手証券会社らが買収案を提示するなど、仮想通貨市場の成長を有望視する企業は多く存在する。

松本会長が注視するブロックチェーンと仮想通貨

マネックスG・会長兼CEOの松本大氏は以前から、仮想通貨に対して注目してきた人物の一人だ。

マネックスGとコインチェックが6日に都内のホテルで開いた記者会見で、松本氏は「(両社が保有する口座数をあわせると)かなりの規模がある。若年層は仮想通貨のお客様がはるかに多いと思う。マネックスの新卒採用のプロセスの中でも、株式投資信託は触ったことがないが、ビットコインは持ってますという学生も多い」と話した。「仮想通貨は金の5パーセントを超える時価総額を持っており、これはかなりの存在感のある資産クラス」と加えた。

マネックスGとコインチェックの記者会見

2018年4月6日、都内のホテルで開かれた記者会見。(写真・左から:マネックスG・取締役の勝屋敏彦氏、マネックスG・会長の松本大氏、コインチェック現・社長の和田晃一良氏、コインチェック・現取締役COOの大塚雄介氏)

撮影:木許はるみ

マネックス証券を中核に置くマネックスGは過去2年で、年間450億円〜550億円規模の営業収益(売上高に相当)を計上する。そのうちの6割近くが、株式の売買手数料などを含む受入手数料によるものだ。

1月31日に開示された決算(2017年4月〜12月)では、同社の営業収益は前年同期比15%増加し、384億円となった。受入手数料が9%増えて大きく貢献した。マネックスG株価は翌2月1日、前日から2.4%上昇し414円(終値ベース)となった。

そして、約2カ月後の4月3日、マネックスGによるコインチェックの買収提案が報じられると、同社の株価の勢いはさらに増した。4日以降、株価は年初来高値を更新し、時価総額は1300億円に近づいた。 6日、マネックスG株は買収発表後、制限値幅の上限(ストップ高)まで上げ幅は拡大。480円(前日比20%)まで上昇した。

6日の発表資料によると、コインチェックの売上高(2017年3月期)は*概算で約9億8000万円、営業利益は7億1900万円だった。

*仮想通貨の売却収入を売上高、仮想通貨の売却原価を売上原価にそれぞれ含めた 財務諸表に基づき、売却収入から売却原価を控除した純額を売上高とした場合の 2017 年 3 月期における経営成績(概算額)。(6日の発表資料より)

株主セレスの事業拡大

一方、携帯電話向けのインターネットマーケティングなどを手がけるセレス(東京都世田谷区、東証一部)は同日、コインチェックの株式を売却したと発表した。セレスは、コインチェックの法人株主5社のうちの1社だった。売却額は5億1500万円、売却益は4億7600万円としている。

セレスは、2017年9月に仮想通貨交換業を行う子会社マーキュリーを設立。同年7月には、仮想通貨交換業者ビットバンクと資本業務提携するなど、仮想通貨関連の事業を拡大している。

セレスが締結した株式譲渡契約には、「*アーンアウト条項」と呼ばれる条件が含まれている。セレスが開示した資料によると、同条項は、契約上の売却額に追加して、コインチェックが今後3年間で計上する税引後当期純利益の相当額の50%分から訴訟費用などを差し引いた額が、売却時のセレスの持分比率に応じて、セレス側に支払われるというもの。

アーンアウト:M&A(合併・買収)の契約において、一部の支払いを一定の条件が成立したことを条件に行うなどの双方の合意のこと。売主が一定の業績を上げることができるまで、買主はそれに見合う支払いを行わないことなどを約束すること。

(文・佐藤茂、小島寛明)

(編集部より:マネックスG・松本大会長兼CEOのコメントを追記し、記事を再度更新しました)

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