ビル・ゲイツ、世界は4つの所得グループで考えるべき —— 先進国、開発途上国の区別は意味がない

ビル・ゲイツ、世界は4つの所得グループで考えるべき —— 先進国、開発途上国の区別は意味がない

Nick Ut/AP Images

ビル・ゲイツは極度の貧困をなくすという使命を持っているのだろう。だが彼は「開発途上国」に焦点をあてて、使命を成し遂げるつもりはない。

「私はずっと先進国と開発途上国について語ってきたが、そうすべきではないだろう」とゲイツは4月3日(現地時間)、ブログに記した

「先進国」「開発途上国」の区別をやめるというゲイツの決意を支えたのは、『Factfulness』という書籍。著者はゲイツの友人で、医師であり、統計の達人として知られるハンス・ロスリング(Hans Rosling)。ロスリングは2017年、すい臓がんで死去したが、息子と義理の娘が残った部分を完成させ、出版した。

ゲイツは、『Factfulness』を「今まで読んだ中で、最もためになる1冊」と呼び、多くの人が読めば、世界はより良いものになるだろうと語った。

『Factfulness』は、多くの人が世界を運命論的に捉えていることを変えようとするロスリングの最後の挑戦だ。彼は、統計的に見れば、世界は私たちが思っているほど悪くないことを知って欲しいと望んでいた。

ロスリングは、私たちが世界の現状を捉えるときに、感情に支配された「本能」にあまりにも頼り過ぎていると考えていた。私たちは教育から医療、自然災害に至るまで、すべてを事実よりもはるかに暗いものとして描いている。

ロスリングがこの本を書いた最大の目的は、「先進国」と「開発途上国」を対立させる2元的な枠組みを置き換えることだ。

その代わり、彼は世界の所得水準を4つの階層で考えることがより有用(かつ正確)だと述べた。レベル1の人たちは、毎晩、指で歯を磨き、レベル4の人たちは、輝くような歯を磨いた後、電動歯ブラシを充電している。

だが、世界の所得の捉え方を変えようとしているのはロスリングだけではない。世界銀行も今、同じような4階層のシステムを使って世界の所得水準を捉えている。ゲイツも同様だ。

「この考え方を発展させていきたい」とゲイツは3日、ブログに記した。

世界の所得水準を4つに分けて捉えたモデルを見てみよう。

レベル1:1日2ドル(約210円)以下で暮らす。ロスリングは、10億人が当てはまると推定した。彼らは裸足で歩き、焚き火で調理し、バケツで水を汲み、地面で寝る。

子どもをおんぶするマダガスカルの幼い女の子。

子どもをおんぶするマダガスカルの幼い女の子。

flickr http://www.flickr.com/photos/ricephotos/2709827010/in/photostream/

ネパール、マダガスカル、レソトなどの国の人々が、このカテゴリーに当てはまる。

レソトは世界で最も寿命が短いとロスリングは記した。

レベル2:世界の人々の大多数が当てはまる。1日2ドル(約210円)〜8ドル(約860円)の所得があり、自転車、マットレス、自宅で料理するためのガスボンベなどがある。

中国で子どもを乗せて自転車に乗る男性。

中国で子どもを乗せて自転車に乗る男性。

Lucy Nicholson/Reuters

バングラデシュ、中国、ザンビア、ナイジェリアなどの国の人々が、このカテゴリーに当てはまる。だがもちろん、特に大都市に住んでいる数多くの中国人とナイジェリア人の所得ははるかに高い。

これが、世界の国や地域を「先進国」と「開発途上国」といった大きなカテゴリーで分類することは馬鹿げているとロスリングが主張する理由だ。意味がない。

レベル3:ロスリングの分類で、レベル2に次いで2番目に人口が多い。1日8ドル(約860円)〜32ドル(約3400円)の所得で暮らしている。蛇口をひねれば水が出て、バイクや車を所有し、日々の食事は豊かで色鮮やか。電気と冷蔵庫があり、様々な栄養に配慮した食事を取ることができる。

パレスチナのラマラで行われた結婚式で踊る新郎新婦と出席者。

パレスチナのラマラで行われた結婚式で踊る新郎新婦と出席者。

Paula Bronstein/Getty Images

エジプト、パレスチナ、フィリピン、ルワンダなどの国の人々が、このカテゴリーに当てはまる。

短い休暇を楽しむ余裕がある。子どもたちは、お金を稼ぐために早く社会に出る必要はないため、自由に高校生活を楽しむことができる。

レベル4:レベル1と同様、約10億人が当てはまる。1日32ドル(約3400円)以上の所得があり、自宅で水(温かい水と冷たい水の両方)が使え、車道には車が走り、毎日、たくさんの食事を楽しむことができる。また、12年以上の学校教育を修了することができる。

赤ちゃんの食事を与える与える女性

More Good Foundation

アメリカ、メキシコ、南アフリカ、スウェーデン、韓国などの国の人々が、このカテゴリーに当てはまる。

基本的に人々が「先進国」と考えるもの全てが揃っている。世界の人口の約7分の1。

自分が最高のレベル、あるいは最も「普通」レベルと考えるのは慎重にとロスリングは指摘した。

十分な所得を得て、余暇を楽しむ人々

Farid Alouache/Shutterstock

「レベル4の基準で、他の世界を一般化してはいけない。特に他の人をまぬけだと考えてはいけない」とロスリング。

世界中の人々は、日々、それぞれのレベルで、直面する問題を解決する独創的な方法を考え出している。ロスリングは、家がずっと建築中の状態にあるチュニジアの家族の事例をあげた。

「スウェーデンでは、もしそのような家を建てれば、プランに深刻な問題があるか、建築業者が途中で逃げたのではないかと考えるだろう」

ロスリングは、チェニジアの家が常に建築中なのは、銀行を簡単に利用できない彼らにとって、それが財産を守る最善の方法だからと述べた。山積みのお金とは違い、ゆっくりと家の形に固められたたくさんの煉瓦は簡単に盗まれることはない。

「何かが奇妙に見えるときは、好奇心を持ち、謙虚になるように。賢明な解決策は何か?を考えよう」

「レベルアップ」が必ずしも良いことではないことを思い出そう。

ケニアの象の孤児院。

ケニアの象の孤児院。

Chris Weller/Business Insider

レベル4ではないからといって、不十分で貧しい暮らしを送っているわけではない。

ロスリングによると、世界の人々の80%が電気を利用している。これはレベル2、3、4の人々が毎日、電気を利用していることを意味する。もちろん、全員の寝室に電気があるという意味ではない。だが日常生活のどこかのタイミング、つまり家、仕事場、学校、あるいは町のどこかで電気を使っている。

一方、レベル4の人々はすべてが正しいわけではない。CO2の排出レベルは他のレベルの人々よりも、はるかに高い。ロスリングによると、カナダの1人あたりのCO2排出量は「中国の2倍、インドの8倍」。さらに、レベル4の人々は、毎年、地球上で消費される化石燃料の50%以上を使っている。

(敬称略)

[原文:Bill Gates says he now lumps the world into 4 income groups — here’s how it breaks down

(翻訳:Setsuko Frey、編集:増田隆幸)

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