「和田社長続投」「お金返して」被害者たちが新生コインチェックに望むこと

コインチェックのNEM流出問題の被害者らは、2018年4月6日のオンライン証券を中核事業とするマネックスグループによる買収発表をどう感じたのか。和田晃一良社長ら経営者らの退任に「当然」とする人がいる一方で、「続投」を願う熱心なファンもいる。ただ、ある被害者の思いは「金を返して」という現実的な願いだ。

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2018年4月6日に都内で開かれた記者会見。コインチェック側の出席者は、和田晃一良社長(左)と大塚雄介取締役(右)。

「基本は金を返してくれればいい」

マネックスGによるコインチェックの買収が明らかになった後、コインチェックの集団訴訟に参加する原告らに話を聞いた。

エンジニアの男性(47)は、「コインチェック被害者の会」に所属し、同社に対する集団訴訟に3月下旬に参加した。男性は訴訟で、同社で保有する10種ほどの仮想通貨の返還や価格の下落分を求めている。請求総額は、「300万円〜500万円」。

さらに男性は、NEM流出事件以降、同社で保有していた仮想通貨を、別の取引所に移す「送金申請」をしているが、取引が凍結されたままで、送金されていない通貨がある。

今回、マネックスGが買収したことで、「通貨が返ってくる確証が定まった」と一安心した。

男性は、NEM流出問題の当初からコインチェックの買収と経営陣の刷新を希望していて、結果的に希望通りになった。同社の経営体制について関心はあるが、「基本は金を返してくれればいいんですよね」(男性)。流出問題の被害者にとっては、残された現実的な課題に目が行ってしまう。

和田社長の解任は仕方ない

コインチェック

4月6日の会見の冒頭の様子。質疑応答で、和田社長(右から2人目)は「(NEM流出問題の)責任は私にあると考えている。この経営体制のままではしっかりと顧客に安全なサービス提供が難しい」と退任の理由を説明した。

コインチェックの顧客の20代女性は、2018年1月に同社で数十万円の投資をし、一旦は集団訴訟の原告になったが、保有していた仮想通貨の取引が再開したため、訴訟を取り下げた。

女性は当初、「若い社長が頑張ってきたので、失敗しても叩きたくない。これを機に生まれ変わってほしい」と話していたが、今回は「和田社長の解任は仕方ないですよね。表向きはさすがに出せないでしょう。会見のイメージがあるから、これが妥当な結果」と受け止める。

買収に好印象かを聞くと、「買収のニュースが流れた時、仮想通貨の相場が一時、急に上がったので、コインチェックご祝儀だと思いますよ」と歓迎する。

マネックスGが買収後、コインチェックの仮想通貨交換業者の登録が済めば、「投資先の選択肢として、コインチェックはあります」と女性。「金融庁がチェックしたので、まともになるんじゃないですか。ほかの取引所の方がずさんかもしれない」と期待をしている。

またコインチェックに投資したい

「和田社長が退任してしまうのは、もったいない」。コインチェックで仮想通貨を保有する男性(32)は、率直な感想を語る。なぜなら、「和田さんは、仮想通貨の未来について、展望を持って取り組んできた」と感じているから。コインチェックでNEMの取り扱いがまた始まれば、「再投資したい」と話す。

「ほかの取引所は監査に入り、営業停止になったところもある。コインチェックが特にずさんだったかというと、そうではないと思う」と男性。「仮想通貨市場はまだできたての市場で、ルールができていなかった。マネックスに入るから安心ということはないかな」と買収には冷めた見方だ。

「訴訟リスクは限定的」

マネックス

会見の最後、記者席から登壇者同士の握手を求められるも、マネックスGの松本大会長兼CEO(左から2人目)は、それを避けた。

コインチェックは現在、3つの集団訴訟を抱える。買収には訴訟リスクが伴うため、前出の原告の女性は「正直、買収はびっくりした」という。

ただ、4月6日の会見で、マネックスGの会長兼CEOの松本大氏は、リスクは限定的との見方を示した。

仮想通貨に詳しい法律の専門家も「訴訟リスクは限定的」と同じ意見だ。

みずほ法律事務所の三平聡史弁護士は、「被害者に対し、大部分の補償は終わっているので、潜在的な債務とは言えないと思う」と話す。コインチェックはすでに流出したNEMに関する被害者の補償を終えているため、裁判は仮想通貨の価値の下落分や一部凍結中の仮想通貨の取り戻しなどが、主な請求内容になるからだ。

36億円の買収額について三平氏は、「評価が難しい。自前での参入の難しさ、NEM流出問題のネガティブなイメージをどう評価するか、色々と混みでの評価だと思う」ととらえ、「仮想通貨交換業は収益性が良いので、金融庁への登録申請が殺到している。マネックスGが(仮想通貨交換業の参入までの)時間を買ったような状況では」とし、コインチェック側も「金融庁からセキュリティ面の改善について指摘を受けているので、外部の協力を入れざる得ない状況があったのかもしれない」とみている。

ユーザーにとっては「純粋に大きな資本が入れば、安心感が変わってくる」。

「買収自体は話題性があり、ネガティブなイメージがうまく払拭されているのでは。そのまま引き継がないのも、言葉によってはパフォーマンス。ある意味で、上手くセレモニーになっている」(三平氏)

4月6日に和田氏、松本氏ら両社の4人が出席した記者会見。1時間にわたる会見が終わる際、会場の記者から4人に「握手をお願いします」と撮影用にポーズを求められたが、松本大氏はこれを避けた。セレモニーの中にも、各方面への配慮が見え隠れしているようだった。

(文、撮影・木許はるみ)

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