マネックスグループは、買収するコインチェックの金融庁への仮想通貨交換業者の登録とサービス再開を、今後2カ月程度で行うことを明らかにした。また、将来的にはコインチェックのIPO(新規株式公開)を目指していく。
2018年4月6日、都内のホテルで開かれた記者会見。(写真・左から:マネックスG・取締役の勝屋敏彦氏、マネックスG・会長の松本大氏、コインチェック現・社長の和田晃一良氏、コインチェック・現取締役COOの大塚雄介氏)。
買収金額は36億円。2018年4月6日に株式譲渡契約を結び、4月16日に株式を取得する。
コインチェックの代表取締役にはマネックスGの勝屋敏彦・最高執行責任者(COO)が就き、執行部にはコインチェックの和田晃一良・現社長や大塚雄介現・取締役ら7人が務める。監査役は両社の幹部ら3人で構成する。
松本大・マネックスG会長兼CEOは、「コインチェックがやっている内部管理体制の構築強化がしっかりと前進している状況を考えると、2カ月以内に営業登録ができるだろうと考えている」とした上で、「コインチェックはIPOを目指していく。仮想通貨交換業の本質がますます銀行に近い物になると予想される中で、資本を強くすることも重要ですし、内部管理体制を強固にするには、外部けん制をしていくのは重要で、IPOをして強い会社にしていきたい」と述べた。
マネックスGの仮想通貨の事業形態について、松本氏は「仮想通貨の交換所、販売所が中核だが、新しい形の金融的グループを作っていく中で、まったく新しい形の資産クラス、(コインチェックが持っている)新しい支払い手段を含めて、マネックスグループが協力することで加速的に進めたい」と話した。
若年層、ブランドに期待
マネックスGは、買収により、若年層の取り込みも狙う。
松本氏は、「マネックスとコインチェックともに口座数は170万程度あり、稼働口座は70万。これはかなりの規模であり、まったく違う客層もあると思う。特に若年層は仮想通貨のお客様の方がはるかに多いと思う。マネックスの新卒採用のプロセスの中でも、『株式投資信託は触ったことがないが、ビットコインは持っています』という学生も多く、年齢層でかなり違う層が顧客層だと思う」と新たなターゲット層に期待した。
現在、コインチェックは3団体の集団訴訟を抱え、訴訟リスクも想定されるが、松本氏はリスクを限定的ととらえる。
「コインチェックは仮想通貨交換ビジネスの先駆者であり、世界的なブランドがある。このブランド価値をつくることは到底できない、我々がしっかり支えることで、お互いにいい形ができる」と、松本氏はマネックスGが買収に踏み切った理由を話した。今後、コインチェックの社名は残していくという。
金融庁による交換業者の登録は2カ月が目標、将来的にはIPOも視野。
コインチェックの和田社長は、自身の社長退任について、「(NEM流出の)責任は私にあると考えていて、この経営体制のままではしっかりと顧客に安全なサービス提供が難しいと思い、取締役は降りることにした」と説明。今後は執行役員として、開発・プロダクトの分野を担っていく。
松本氏は、金融庁との話し合いの中で、内部管理体制を見直すために、取締役、監督と執行で分けて、マネックスGの人員の派遣になったことを説明し、将来的には和田氏再任の可能性も示した。
今回の買収を巡っては、他に大手証券会社らが買収案を提示した。コインチェックが買収先にマネックスを選んだ理由について、和田氏は、「複数社検討し、このグループであれば、なるべく早く意思決定ができ、しっかり守るべきところは守る、強化するところは強化するサポートをしてくると考えた」と述べた。
また、現在同社が取引を停止している匿名性の高い通貨などの取り扱いは、「決まったことがない。マネーロンダリングのリスクも適切に検討し、それを踏まえた上で、しっかり決断する」と述べた。
(文、撮影・木許はるみ)