入社5年目男子が立ち上げた女性起業家支援CVC「次世代の女性ロールモデルを創りたい」

化粧品大手のポーラ・オルビスホールディングスがスタートアップに投資を行うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC=Corporate Venture Capital)を設立する。Business Insider Japanでは、パナソニック、電通、KDDI、トヨタ自動車、朝日新聞社、JR西日本など大手企業でCVCの設立ラッシュが続いていることを報じた。豊富な内部留保をもとに、自社の研究開発だけでは追いつかないようなテクノロジー分野のスタートアップに出資している企業が多い。

ポーラHDもシワ改善効果をうたう美容液「リンクルショットメディカルセラム」が大ヒットし、2017年12月期には過去最高益を達成している。社内初のCVCはこうした好業績が後押しになっていると考えられるが、従来と大きく異なるのは、目的が自社の成長ではなく、「女性起業家」を応援することにある点だ。

SHEの社内

投資1号はミレニアル女性のための講座を開く「SHE」、スクール内は落ち着いた雰囲気だ。

撮影:今村拓馬

プロジェクトを率いるのは入社5年目の岸裕一郎さん(26)。今回のCVCは岸さん自身が企画し、社内ベンチャー制度の公募で国内外から50件以上の応募があった中、採用されて実現した。

「女性起業家の皆さんを資金面はもちろん、流通・販路の開拓やブランディングなど、ポーラHDが培ってきたノウハウを活かしてサポートしていきます」

ポーラHDと同じく2017年12月期に過去最高の営業利益をあげた資生堂は、2016年に「資生堂ベンチャーパートナーズ」というCVCを立ち上げた。投資枠は計30億円で、第1号案件は生体・身体データを解析して健康状態に合わせたサプリメントを提供するシステムを開発したドリコスだ。資生堂は多くの美容や健康のサプリメントを販売しており、投資先としては妥当だろう。

ポーラHDが一見、自社商品とは直接の関係がない女性起業家に特化したCVCをつくった狙いは何なのか。

次世代のロールモデルとなる女性リーダーを

ポーラの岸裕一郎さん。

CVC設立を発案したのは入社5年目の岸さん。次世代のロールモデルとなるような女性リーダーの創出を目指している。

きっかけは、岸さんが新卒で入社後に配属された群馬県の支社でのことだ。

ポーラの化粧品を店頭で販売する「ビューティーディレクター(BD)」は社員ではなく、委託販売契約で働く個人事業主だ。岸さんはBDの中でも年商1億円を超える「グランドオーナー」をサポートする仕事をしていた。グランドオーナーは専業主婦や事務などの一般職から総合職までさまざまな経歴持つ女性がいるが、販売員としてのやりがいを感じスキルを磨くことで、今の地位に昇りつめた。彼女たちが目標を持つ大切さをBDたちに語ることで、BDの仕事に臨む姿勢がガラリと変わり、さらにやりがいを持って仕事に取り組むようになる姿を何度も見たという。

「女性が働く上で、明確なビジョンを持つロールモデルとなるような人の存在がいかに大切かを実感しました。これまではグランドオーナーのような社内での女性リーダーの創出に関わってきましたが、今後は社会にその舞台を移したいなと。次世代のロールモデルとなるような女性リーダーを創出することが目標です。今回のCVCは単なる投資業ではなく、女性の活躍を応援するツールだと考えています」(岸さん)

テクノロジーではなく、人の力でイノベーションを起こしたい。それがポーラHDの思いだ。

「ビジョンに共感」、CVCも起業家もミレニアル世代

中山紗彩さん

SHE社長の中山紗彩さん

提供:SHE株式会社

初めての投資先は、ミレニアル女性をターゲットに、デザインやマーケティングなどキャリア系のレッスンを月に30講座ほど提供しているSHE株式会社だ(東京都港区)。社長の中山紗彩さん(27)は新卒で入社したリクルートホールディングスで教育サービスを立ち上げた後、スタートアップの取締役を経て、2017年4月に起業した。これまでの受講生はのべ2000人。3月8日の国際女性デーには、ポーラとSHEのコラボレーションレッスンとして女性の新しい生き方を考えるワークショップを開催している。

岸さんはCVCの企画立案から立ち上げにあたり約50人の女性起業家に会ったが、投資の決め手になったのは、「ひとりひとりが自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中をつくる 」という中山さんのビジョンに強く共感したからだ。

一方の中山さんも、「仲間になって命をかけて、掲げたビジョンが実現される世の中をつくっていきたいか」という基準で社員や業務委託など事業に関わるメンバーを選んできたため、投資家も個人投資家のみで、途中で担当が変わる可能性のあるCVCからの投資は受けていなかったという。だが、ポーラHDの理念や岸さんのCVCへの思いやなどに共鳴して、投資を受けることにした。

「本質に裏付けされた本当に良いものを愛を持って届けたいというポーラの経営理念が、私の経営者としてのスタンスと一致します。ずっと一緒に戦いたいと思ったんです」(中山さん)

もともとは化粧品という商品や個人事業主という雇用形態を通じて女性を応援したいという企業理念を持っているポーラHD。今回のCVCもその流れにあると言えるだろう。投資額などは非公開だが、今後もジャンルを問わずさまざまな女性起業家を支援していくつもりだという。

(文・竹下郁子)

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