シリアで再度、化学兵器による攻撃か? 専門家が注視する、トランプ大統領の次の一手とその危険性

治療を受ける子どもたち

治療を受ける子どもたち(ドゥーマ、2018年4月8日)。

Screenshot/The White Helmets

  • アメリカのトランプ大統領は8日(現地時間)、少なくとも40人が死亡した化学兵器の使用が疑われるシリアでの攻撃について、ロシアのプーチン大統領を非難した。
  • イアン・ブレマー氏はBusiness Insiderに対し、化学兵器の使用が確認されれば、アメリカはすぐにでもシリア軍に対し、攻撃するだろうと語った。
  • 議員からは、シリアのアサド大統領はその責任を取るべきだとして、トランプ大統領に行動を求める声が高まっている。
  • ブレマー氏は攻撃には賛成だとしながらも、不都合な点もあると指摘する。

数カ月にわたって、その「賢さ」を称賛し、再選を祝い、サイバーセキュリティー対策の組織をともに作ろうと言ってきたトランプ大統領は8日、ツイッターで就任後初めてロシアのプーチン大統領を名指しして非難した。

トランプ大統領は、7日にシリアのドゥーマで起きた、少なくとも40人が死亡した化学兵器の使用が疑われる攻撃についても、その責任の一部がプーチン大統領にあると指摘している。シリアでは、アメリカが反政府組織を支援する一方、ロシア政府は長年にわたってシリア政府軍を支援してきた。

「ロシアのプーチン大統領とイランには、野蛮なアサドを支援してきた責任がある」トランプ大統領はつぶやいた。「その代償は……大きい」

地政学リスクに詳しいユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏は、化学兵器の使用が確認されれば、トランプ大統領は恐らく、2017年4月のときと同じように、シリアに攻撃を命じるだろうと話している。

「(トランプ大統領は)恐らくシリアに対する攻撃を開始するだろう」ブレマー氏は8日、Business Insiderに語った。「当時、大統領の判断は明確だった。そして今、アサド政権による化学兵器の使用を容認することはないだろう」

アメリカでは、連邦議会も両党ともにトランプ大統領に行動を求めている。アリゾナ州選出のジョン・マケイン上院議員は、トランプ大統領が約束していた米軍のシリアからの撤退について「アサドをつけ上がらせる」ものだと主張している

「今日のトランプは、ロシアやイラン政府と合わせて、ツイッターでアサドを非難するのが早かった。目下の疑問は、この問題について彼が何らかの行動を取るかどうかだ」マケイン議員はプレスリリースの中で述べた。「去年アサドが化学兵器を使ったとき、大統領の対応は断固としたものだった。今回もそうすべきであり、アサドがその戦争犯罪の代償を払うことになると示すべきだ」

「決定的瞬間」

プーチン大統領とトランプ大統領

プーチン大統領とトランプ大統領(2017年7月)。

Reuters

ブレマー氏は、トランプ大統領のプーチン大統領やロシアを全般的に批判しない「奇妙な」姿勢が8日、ついに変化したと指摘する。

「トランプ大統領がなぜプーチン大統領にそこまで良くするのか、誰にも分からなかった。人への態度を良くしようというような話ではない」ブレマー氏は言う。「なぜプーチン大統領に良くしてきたのか、なぜ突然それを変えたのか? その理由を知っているという人は誰であれ嘘をついている」

トランプ政権はすでに、ロシアのオリガルヒ(政治的な影響力を持つ新興財閥)や組織に制裁を課していて、数十人の外交官を追放している。ブレマー氏は、アメリカがロシアに対し、より厳しい制裁を課したり、サイバー攻撃をしたり、プーチン大統領に関する秘密の情報を流すこともできるだろうと言う。

同氏は、オバマ前大統領がその領域に踏み込まなかったのは、「問題をエスカレートさせれば、非常に危険な状態に陥ることを認識していた」からだと見ている。

トランプ大統領は同じ日のツイッターで、前任者は「越えてはならない一線」を引いておくべきだったと、オバマ前大統領のことも批判している。

「1つだけ分かるのは、トランプ大統領はオバマ前大統領とは違うということを明確に示したがっているということだ」ブレマー氏は言う。

サウスカロライナ州演出のリンジー・グラハム上院議員は8日、ABCの「This Week」に出演し、アサド政権の空軍をたたき、和平を実現させるためにいわゆる安全地帯をつくることを提案、トランプ大統領にはシリアの「状況をリセット」するチャンスがあると述べた。

「ツイートの意味がなくなれば、北朝鮮問題で自身に傷をつけることになる。ツイートの内容に沿って行動しなければ、ロシアやイランの目に(トランプ大統領は)弱く映るだろう」グラハム議員は言う。「大統領、ここが決定的な瞬間だ。今こそツイートの内容に従わなければならない。オバマ前大統領が正しく下せなかった決断を示すべきだ」

アサド政権に対する国際社会の取り組み

ミサイルの打ち上げ

米軍によるシリア軍への空爆(2017年4月7日)。

Mass Communication Specialist 3rd Class Ford Williams/U.S. Navy via AP

「国際社会が広く支持する数少ないトランプ政権の外交政策の1つが、大統領が命令した2017年4月の空爆だ」ブレマー氏は言う。

フランスやイギリス、その他の国とともにアメリカが呼びかけた国連安全保障理事会の緊急会合は、9日に開かれる。アメリカのニッキー・ヘイリー国連大使は8日午後、これは「シリアの罪のない市民に対する恐ろしい化学兵器による攻撃を受けて」の会合だとツイートしている

「(化学兵器による攻撃が)あまりに横行している」ヘイリー大使は書いた。「断固とした行動が必要だ」

空爆をめぐっては、アメリカはフランスと提携する可能性がある。ブレマー氏は、フランスのマクロン大統領が「最近、独自にアサド政権に対する越えてはならない一線を引き、致命的な化学兵器による攻撃を行った基地を攻撃する考えを示していて、独自に実行すると話している」と言う。

ブレマー氏は「マクロン大統領とトランプ大統領がこうした考えを示していることから、アサド政権に対する攻撃は理にかなっていると、わたしは考えている」と述べた。その上で、アメリカはロシア軍を攻撃しないよう気を付けなければならないと指摘する。

ただし、攻撃によって起こりうる不都合な反応の1つとして、ロシアがサイバー攻撃を強める可能性があるとブレマー氏は言う。これにより、アメリカとロシアの緊張はさらに高まるかもしれない。

「我々はロシアとの核戦争に向かっているわけではない。だが、危険な時期だ」ブレマー氏は言う。「アメリカ人がロシアやイランから直接的な支援を受けているアサド政権に直接的に攻撃することは……危険なことだが、今の状況では適切な行動だとわたしは考えている」

[原文:'This is a dangerous period': Trump is finally calling out Putin by name, and experts are anxiously watching what he'll do next]

(翻訳、編集:山口佳美)

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み