副業時代の「2枚目の“肩書き”考えます」スキルシェアが生んだ超人気“名付け親”

子どもの命名に迷ったら……。神社に相談するよりも、スキルシェアサービスで相談をする。ある母親は、長男の名前を付けるため、スキルシェアサービスで人気の高いコピーライターに頼り、「白玖(はく)」と命名した。

子どもの命名のほかに、副業に伴い新たな肩書きを作ったり、インスタグラムのアカウントを考えたり、スキルシェアによるネーミングの幅が広がっている。

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「白玖」という長男の名前は、スキルシェアでもっとも人気の高いコピーライターからもらった。写真は、母親の綾子さん。

2017年1月に誕生した白玖君。母親の綾子さん(34)は、白玖君が生まれる1カ月前、子どもの命名に迷い、コピーライターの加来幸樹さん(34)に相談した。加来さんは、スキルシェアサイト「タイムチケット」でもっとも人気の高いコピーライターだ。

タイムチケットとは、個人が自分の特技・スキルを生かして、個人にサービスを提供する「スキルシェア」のサイト。

自分の周りの人ではなくて、他人の方に相談したくて」(綾子さん)

アイデアや発想力のある加来さんに相談をすることにした。漠然とした子どもの名前のイメージを、加来さんに伝えた。

綾子さんが重視したのは、「響きが良くて、流行りのシワシワネーム(◯◯之助、◯◯太郎など)じゃないもの」「海外でも発音しやすい」ことなど。さらに、綾子さんを悩ませたのは、自身の苗字。綾子さんの苗字は、全国ランキングで上位に入るぐらい多い苗字。

下の名前もランキングに入るようなものだと、同姓同名がクラスにもう1人いることになってしまいます」

綾子さんは、「太郎」「二郎」など、オーソドックスな名前に憧れていたが、苗字との兼ね合いがネックになった。

綾子さんは自身の要望を加来さんに伝え、話し合うこと約1時間。「芯の強い子になってほしい」という願いを込め、「白玖」のほか、「京」「京生」「不二」「暁」など、8候補ができあがった。綾子さんには「白玖」がしっくり来て、家族と相談し、命名した。名前の意味は、「『玖』が磨かれた黒い石という意味で、人生が白いところから始まり、色をキャンバスに塗り詰めて、最後は真っ黒になってほしい」ということ。

綾子さんは「命名を神社にお願いする人が多いとも言いますが、画数も大切だけど、私たちは違うところに優先事項がありました」。

加来さんとはもともと知り合いだったため、「頼みやすかった。知らない人だったら、確かにハードルが高くてやりにくいかもしれませんね」。

「時給」が30分500円から1万2000円に

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タイムチケットの加来さんのページ。2017年にグランプリを受賞、殿堂入りしている。

出典:タイムチケット

今回“名付け親”になった加来さんは、タイムチケットで「殿堂入り」をするほど、スキルシェアサービスのトップ人気を誇る。加来さんは2014年、ウェブの広告代理店に勤務しながら、副業としてサービスに登録した。

「仕事には厳しい上司も、私の名前を付けるスキルは上手だと褒められ、同期が起業する時にも名前を相談されたりすることがあった。もっと世の中のサービスにできたら」

副業でネーミングの仕事に挑戦してみた。

加来さんの評判は口コミで広がり、週に7回、相談を受けることも。3年間で300人に利用された実績を持ち、2017年はタイムチケットでグランプリを受賞。当初は30分500円で始めたサービスも、今では30分1万2000円に値上がりした。

利用者のニーズはサービス名や企業名、プロダクト名のネーミングが多い。子どもの命名はまだレアケースだ。

世にある肩書きでは語れない仕事

最近は、「肩書きを考えてほしい」という依頼が多い。「世の中にはすでにある肩書きでは、語れない肩書き」を求める人が多い。本業だけでなく、副業や趣味を含めた自分の肩書きを探す人が増えているという。

あるスタートアップの役員には、「コミュニティハッカー」という肩書きを考えた。

「その方は自分の家を持たずに、毎日銭湯を転々とし、時にはAirbnbで1カ月くらい拠点を借りたりしている人。銭湯が好きで、サウナコミュニティを作ろうとしている」

そんな意味を込めて名付けた。

制作会社でプロデューサーをしている男性には、「辺集長」という肩書きを提案。

「その方は人と人をつなげるのが得意。ただ、人をくっつける役割の人は、アイデンティティーを感じるのが難しい」

そこで周辺の人々をつなげる能力や立場を「辺集長」と名付けた。

その男性は餃子好きの趣味が講じて餃子の記事を書く。副業を始め、名刺で餃子のコミュニティを作る時も「辺集長」と名乗っている。

スキルシェアから新会社を設立

このほか、ブログやインスタのアカウント名を依頼する人もいる

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副業から新会社設立につながった加来さん。新会社は、勤務先の子会社として立ち上げることになった。

通常プロのコピーライターにネーミングを依頼するのは費用の面もあって敷居が高い。そもそもどのコピーライターに頼めばいいのか、そういう人に依頼していいものか、などに悩む。スキルシェアだからこそ、コピーライターが身近で、かつ低料金で相談ができる。

加来さんは、「サービスを始めて、こんなにニーズがあるんだと驚いた。誰に相談していいかわからないという人が、僕の所に来てくれていると思います」と話す。

4月2日にはスキルシェアで培った経験をもとに、対話やワークショップを通じて事業・企業支援をしようと、新会社「SIGNCOSIGN」を立ち上げ、WeWork新橋に入居した。新会社設立の理由は、これまでに相談に応じてきて、「ネーミングを作るというよりも、ネーミングをする場づくりをしている」と感じたからだ。

新会社での自身の肩書きは、「FUTURE CO-CREATOR」。

「僕は何をしている?と考えると、(従来の肩書きでは)表現仕切れない。ミッションやコンセプト、ビジネスを考え、その人の未来を作っていきたい」

共創の意味も込めたネーミングだ。

「名前を作ること自体が、事業のすべてに関わると思っています。ネーミングが持つ価値に期待しています」(加来さん)

スキルシェアサービスで、ユニークな名前、自分ぴったりの名前が広がることで、世の中には新しい仕事や価値、人生が生まれていく。

(文・撮影、木許はるみ)

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