ZOZOは1億円、年収数千万円クラス続出「日本のIT人材安い」に大異変。市場最強の転職人材の2つの条件とは?

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日本のIT人材は安いという通説が、崩れつつある。

Reuters/Steve Marcus

年功序列の給与体系が影響し、アメリカなどに比べ安いと指摘されてきた、日本の高度IT人材の給与水準に異変が起きている。2017年の転職市場で、年収の世界比較では、CIO/CTO(最高情報責任者/最高技術責任者)クラスで 年収5000万円、プログラムマネジャー2000万円などの職種で、日本が8カ国中で最高レベルをつけた。高度人材を専門とした人材紹介のロバート・ウォルターズジャパンの調査で、明らかになった。

4月にはファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが、AIやロボット工学の「天才」を最高年収1億円で採用すると発表。グローバルに打って出るIT企業の間で、ハイスキルなIT人材の獲得に、高額報酬を惜しまない空気が生まれつつある。

米、シンガポールに並ぶ高額報酬

日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、オーストラリア、中国、シンガポールを対象に、2017年の中途採用案件を調べた「ロバート・ウォルターズ給与調査2018」によると、世界最高レベルのアメリカやシンガポールと並んで、日本でも高額報酬の採用が行われていることが明らかになった。

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世界の転職市場のIT人材の年収比較。

ロバート・ウォルターズ調べ。

8カ国中で日本がもっとも高かったのが、役員クラスのCIO/CTOで年収5000万円。これにシンガポール(3645万円)、アメリカ(3392万円)が続いた。

業務分析を行う、ビジネスアナリストも日本が1500万円でもっとも高く、オーストラリア(1296万円)、シンガポール(1215万円)の順。ネットワークエンジニアも日本の1300万円が、もっとも高い

同社の扱う人材は、多言語で仕事ができることが前提のため、日本では高く出る傾向があるとはいえ、かつてのイメージからは大きな変化だ。

「天才」に1億円のZOZOTOWN

「これまで日本の企業は、他の職種との待遇の公平感(横並び)を重視し、IT人材に対してもグローバルで競争力のある報酬を出さないことで知られてきましたが、ここのところ変化が起きています。職種やポジションによっては、むしろ諸外国に見劣りしない報酬が提示されており、世界とのギャップは埋まりつつあリます」

日本法人IT部門ディレクターのトモカズ・ベッゾルド氏は、そう指摘する。

トモカズ・ベッゾルド氏

「日本のIT人材の報酬は変わり始めている」と話す、ベッゾルド氏。

提供:ロバート・ウォルターズ

さらにベッゾルド氏は、スタートトゥデイが4月に、最高1億円でAIやロボット工学の「天才」の採用を発表した例を上げた。

「国内外で注目を集める効果ももちろんありますが、単に目を引く事例にとどまらず、大きなトレンドを表していると思います。高度なIT人材を獲得しようと思うなら、競争力ある報酬を提示する必要がある。このことを、日本の企業も理解し始めたのでしょう」

サイバーエージェントも「優秀なエンジニアを能力に応じて評価しよう」と、2018年4月入社の新卒入社のエンジニアを対象に、一律の初任給の給与体系を廃止した。初任給の年棒が一律450万円〜だったのに対し、エキスパート認定されれれば720万円〜に上がるという。

日本のエンジニアは安かった

「日本のエンジニア職は(世界に比べて)安い」。従来から、そのイメージはIT業界につきまとっている。実際に年収水準の低さと、それに伴う満足度や人気の低迷が指摘されてきた。

経済産業省の「IT人材に関する各国比調査」(2016年)によると、IT先進国のアメリカと日本とでは、IT人材の平均年収が日本で600万円程度に対しアメリカは1200万円近くと、2倍近くの差がある。

また、 インドやインドネシアではIT人材と他産業の平均年収に10倍近い差があるのに対し、日本ではあまり変わらない実態があった。

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日本のIT人材は、他国に比べて報酬面での魅力が少ないという実態があった。

経済産業省「IT人材に関する各国比較調査」

人手不足とAIニーズ

しかし、この1〜2年で状況は確実に変わりつつある。

ロバート・ウォルターズの担当者は「人工知能(AI)の専門家や機械学習に欠かせないデータサイエンティストの求人が、2016年ごろから増えました。こうした分野では世界的に技術革新が急速なスピードで進むため、英語が堪能なバイリンガル人材であることが求められるのも近年の特徴です」と話す。

リクルートキャリアの調査では、3月の「転職求人倍率」を職種別に見ると、WEBエンジニアを含むインターネット専門職は2018年3月で5.82倍と最も高く、人材不足が突出。この1年間は5〜6倍で高止まりしている。

オフィスワーク事務職0.38倍、制作編集ライター0.67倍と、人手不足でも供給過多の職種がある中で、断トツに高い求人倍率だ。

高度人材の獲得競争に加え、深刻な人手不足も、IT人材の待遇改善の追い風となっていそうだ。

IT人材獲得のために今すぐやるべきこと

産業に置けるテクノロジーの存在感は増す一方だ。ますます白熱すると予想される、IT人材の獲得競争に、日本企業や日本を拠点とする企業はどう挑めばいいのか。

「日本には(日本語という)言語の障壁が立ちはだかっています。シンガポールやインドネシアは、英語が通じるという意味で、世界のIT人材には仕事がしやすい」と、前出のロバート・ウォルターズのベッゾルド氏は指摘した上で、次を挙げる。

1.世界的な競争力ある報酬

これは言うまでもない。

2.技術革新への投資

会社が新しい技術の開発や活用に投資することで、最新の技術環境を得られることは、エンジニアにとってこの上ない魅力だ。

3.明快なビジョンと面白い仕事

報酬や快適な環境も大事だが、仕事自体の面白さはそれ以上に重要だ。企業が明快な事業のビジョンを持っているのか。IT人材は見極めている。

4.スキルを磨けるトレーニング環境

日進月歩のIT業界で、スキルアップできることが全てと言っても過言ではない。

5.ダイバーシティ

グローバルから高度なIT人材を集めようと思うなら、不可欠だ。

それでは働き手の立場から、転職市場で最強の人材とは何か?この質問に対し、ベッゾルド氏はこう断言した。

「(複数言語を使える)バイリンガルかつ、何かに特化したスペシャリストであること。IT分野はもちろんですが(どの分野であっても)いろんなことを知っていても、それぞれについて少しずつしか知識のないジェネラリストではなく、何かに特化したスキルをもつスペシャリストが最強です

(文・滝川麻衣子)

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