3キャリア共同説明会で、5月スタートのメッセージングサービス「+メッセージ」が発表された。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアは4月10日、新しいメッセージングサービス「+(プラス)メッセージ」を5月9日より開始すると発表した。
電話番号だけでLINE風のやりとりができる
+メッセージは、現在携帯電話で使用可能なメッセージサービス「SMS」の機能拡張にあたる。SMSは基本的に短いテキストしか送れなかったが、+メッセージでは100MBまでの画像や動画、音声データ、現在位置情報が送れるようになる。感情を表すスタンプなども送れるため、「LINE風」のサービスと表現すればイメージしやすい。3社が同日、共同記者説明会で明らかにした。
3キャリア合同の質疑応答で代表して答えたNTTドコモ藤真良樹氏(コミュニケーションサービス担当部長)は、「(LINEとは)対抗意識はなく、メッセージングサービスの正常進化という位置づけ」とLINE対抗という姿勢は否定している。
テキストだけでなく、スタンプや画像、動画などが送りあえる「イマ風」のメッセージングサービスになっている。
LINEやその他メッセージサービスと大きく異なる点は、SMSと同様に「電話番号を知ってさえいれば送れる」ということだ。ビジネスの現場などでは電話番号のやりとりはするものの、プライベートな内容を含むサービスのアカウントを交換するのは気がひける。そんな相手でも、今後は手軽にコミュニケーションがとれるというわけだ。
アプリにはQRコードなどでの招待機能もあるが、電話番号で相手を特定する。機種変更などの際には、アプリからバックアップ用のデータを出力でき、新端末へ引き継げる(同キャリア間であれば、キャリアの移行サービスも利用可能)。
「都度課金はなし」の現代的な料金体系に
料金面はSMSとはまったく変わる。SMSは送信文字数や機種、相手の国に応じて利用料金が課金されていた(受信は無料)。しかし、+メッセージではLINEなどと同じくインターネット網を利用して通信するため、パケット通信量のみが消費される。感覚的には「実質無料で使える」という人がほとんどだろう。もちろん、Wi-Fi接続時でも利用できる。
利用には、各キャリアから販売される端末および契約済みのSIM、そしてアプリが必要。サポートOSはAndroid 4.4以上、iOS 9.0以上。iPhone・iPad向けにはApp Storeでの提供を予定している。
+メッセージアプリは、キャリアやOSによって配布状況が異なる。
Androidについて、2018年5月以降に発売される機種にはプリインストールされる。一方、既存機種に関しては、ドコモとauが自社サービス、ソフトバンクはGoogle Playストアを通してSMSアプリがバージョンアップする形で提供予定だ。
フィーチャーフォンや格安SIMユーザーは「使えない」
注意すべき点としては、+メッセージの機能や料金体系を有効にするには、自分も相手も+メッセージアプリを使う必要があることだ。相手が+メッセージを有効にしていない、もしくは利用できない端末の場合は従来通りSMSでのやりとりとなる。
では、利用できない端末とはどんなユーザーかだろうか?
3キャリアの契約者であれば、従来およびAndroidベースのフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)や、SIMフリー端末ユーザーだ。そして、キャリアの説明によると、現時点では格安SIMではどんな端末でも利用できない。ちなみに、ソフトバンク内のサブブランド「ワイモバイル」も、サービス開始時点では非対応となっている。
KDDI 商品・CS統括本部 商品企画本部 サービス企画部 部長の金山由美子氏。
NTTドコモ スマートライフビジネス本部スマートライフ推進部 コミュニケーションサービス担当部長の藤間良樹氏。
フィーチャーフォンへの対応については、説明会に登壇したKDDI サービス企画部部長の金山由美子氏が「Androidフィーチャーフォンには、今後展開していきたい」と述べており、この対応は3社共通のものとのこと。
また、格安SIMへの対応については、NTTドコモ コミュニケーションサービス担当部長の藤間良樹氏が「サービス当初は3社で始め、(格安SIMを展開する)MVNOへの提供も要望を聞きながら検討していく」と説明している。
企業利用も容易な世界規格で設計、今後のビジネス展開に注目
専門的な話をすると、+メッセージは、世界標準規格の「RCS(Rich Communication Services)」内のメッセージング規格を使って実装されている。RCSはグーグルも策定段階から深く関わっている規格で、インターネットの各種サービスの通知情報などを受け取ることもできる。
スタート当時はユーザー間のみだが、今後は各企業がサービスの一部をユーザーに直接届けられる仕組みをつくっていく。
スタート時点では、+メッセージでは個人間でのやりとりに制限されているが、今後は自社だけではなく外の企業とユーザーをつなげるサービスを展開していくという。
ソフトバンク テクノロジーユニット モバイル技術統括 IoT事業推進本部 事業開発統括部 AIデータコンサルティング部 部長の千葉芳紀氏。
実際、どのような企業と連携するサービスを提供するのか、という記者からの質問に対しては、ソフトバンク AIデータコンサルティング部・部長の千葉芳紀氏が「具体的なサービスの展開は検討段階だが、個人送金などもユースケースのひとつとしてはありうる」と回答している。
今回のように3キャリアが共同の会見を実施するのは珍しく、一時の「絵文字」のように共通規格はあっても各社でデザインが違うなどの差異があったが、+メッセージはスタート時から「3キャリア間で不自由なく同じ機能が利用できるサービス」というキャリアの意気込み感じられた。
スタート時点では、電話番号でLINE風のチャットが楽しめるというサービスに留まるが、機能アップデートや参入企業など、今後の展開に注目したい。
(文、撮影・小林優多郎)