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シリアで使用が疑われる化学兵器は「サリン」か? 神経ガスの恐るべき毒性

泣いている子ども

化学兵器の使用が疑われる攻撃にあい、運ばれる子ども(2018年4月7日、シリア・ドゥーマ)。

White Helmets/Reuters

  • シリアのドゥーマにある病院が4月7日(現地時間)に受けた攻撃では、サリンと塩素ガスが使われたと報じられている。
  • ソーシャルメディアに投稿された動画や写真には、子どもたちを含め、口から泡を吹いている遺体や呼吸困難に陥る人たちの姿が捉えられている。
  • 化学兵器の使用が疑われるこの攻撃により、40~150人が死亡、数百人が負傷したと報じられている。
  • 神経ガスのサリンは、引きつけや痙攣、呼吸困難を引き起こし、しばしば死に至らしめる。

4月7日の夜、シリアのドゥーマにある病院の近くでサリンと塩素ガスが入っていたとみられる樽爆弾が爆発し、子どもを含む多くの犠牲者が出た

この地域は反政府組織が支配していて、攻撃があったのは政府との協議が失敗に終わった数日後のことだった。アサド政権は、一般市民も暮らす反政府組織の支配地域への攻撃に、2013年から化学兵器を使用していると言われている

シリア政府は化学兵器の使用を否定している。同様の疑いがあった2017年4月の攻撃についても、同盟国であるロシアは「でっち上げ」だとして、西側諸国に報復しないよう警告した。

しかし、ロイターによると、アメリカの国務省は9日、「信用できる医療の専門家」が報告し、ソーシャルメディアのトラウマになりそうな動画や写真が捉えた犠牲者たちの症状は、「ある種の窒息性ガスと神経ガスの症状に一致する」と述べた。

アメリカのトランプ大統領は8日、アサド大統領はこの疑惑の攻撃について「大きな代償を払う」ことになるだろうとツイートした

塩素ガスは非常に刺激が強く、人体にも有害だが、致死性の高さで知られるものではない。しかし、空気よりも重く、地面付近で広がるため、地下や低い位置にいる人を窒息させる。

一方、サリンはごくわずかな量でも非常に危険だ。

ロイターやその他のメディアも引用しているアメリカ疾病予防管理センターによる、サリンが人体に与える影響は以下のとおり。

サリンとは?

化学兵器に漏れがないか確認する軍関係者

ロシアの都市サラトフから東200kmのGorny村にある倉庫で、化学兵器に漏れがないか確認する軍関係者。

REUTERS

神経ガスのサリンは:

  • 1938年、ドイツで農薬として開発された。
  • 有機リン酸エステルという殺虫剤に似た合成物質だが、はるかに強力。
  • 無色透明、無味無臭の液体で、水にも溶けやすい。
  • すぐに濃密なガスに変わり、空気よりも重いため、地面付近で広がる。神経ガスの中で最も揮発性が高い。
  • 爆弾の場合、2つの化学物質を混ぜ合わせることで神経ガスを発生させる。
  • 肌や目、肺だけでなく、汚染された食べ物や衣服からも吸収される。
  • 1994年の松本サリン事件、1995年の地下鉄サリン事件で使用された。
  • 2013年、シリアでアサド政権が使用したと、国連は結論付けている。

神経ガスはなぜこれほど有害なのか?

以下2つのイラストは、サリンのような神経ガスの多くがどう人体に影響するか、まとめたものだ。

症状をまとめたイラスト

どのように暴露したかにもよるが、タブンやサリン、ソマン、シクロサリン、VXといった神経ガスは、人体に似たような症状をもたらす。重度の場合、引きつけや痙攣、意識障害、呼吸困難、麻痺を起こし、死に至ることも。

Diana Yukari/Business Insider

こうした症状は、神経ガスが神経伝達物質アセチルコリンの分解酵素の働きを阻害することで起こる

筋肉の収縮がコントロールできなくなり、引きつけや痙攣、呼吸困難に陥り、死に至ることもある。

神経ガスの働き

上段は正常な酵素の働き、下段は神経ガスを吸収したときに起こる異常を図解したもの。分解酵素の働きが阻害されている。

Diana Yukari/Business Insider

[原文:The deadly chemical used in a suspected gas attack on a Syrian hospital feels 'a knife made of fire' in your lungs]

(翻訳、編集:山口佳美)

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