「Dyson Pure Cool」。左がテーブルファン、右がタワーファン。清浄能力はほぼ同じだ。
ダイソンは4月12日、都内で発表会を開催、PM0.1レベルの微粒子を99.95%とらえるという空気清浄機「Dyson Pure Cool」を披露した。
床置き型のタワーファンと、卓上用のテーブルファンの2種類があり、公式のオンラインストアで即日販売を開始した。家電量販店でも順次発売する。
公式サイトの直販価格は「Dyson Pure Cool タワーファン」が7万2144円、「Dyson Pure Cool テーブルファン」が5万9184円(いずれも税込)。それぞれ清浄能力にはほぼ差はないが、スペックシートによるとタワーファンの方が60分の清浄能力がわずかに高い。
ダイソンのこの形状の家電といえば、2009年11月に国内発売した羽根のない扇風機「Air Multiplier」が知られる。一方で家電量販店では、高級扇風機の市場は一時期の熱気からかなり落ち着いてきているとされ、ダイソン関係者もこれを認めている。
ダイソンとしては、掃除機と並ぶ主力製品のこの分野で、「空気清浄機」+「扇風機」の付加価値をさらに突き詰めて、市場を獲っていこうという狙いがある。
見えない空気を「見える化」する、ダイソンの考え
「空気清浄機」+「扇風機」の付加価値を高めるための最大の特徴が、本体正面につけられたモニターだ。ここでは、Pure Coolがいま検知している微粒子や大気の情報をリアルタイムで知らせて、自動的にパワーを調整しながら清浄化していく。
動作を見ていると、微粒子の状態を示すグラフが時間経過にしたがって下がっていく(微粒子除去が進んでいる)ことがわかり、目には見えない空気という存在を、目視で確認して安心できる「見える化」にこだわった設計になっている。
本体全面のモニターの表示例。
Pure Coolの全面モニター画面の表示例。早送りにしている。
ダイソンのヘルス&ビューティー部門のバイスプレジデント、ポール・ドーソン氏。2000年にデザインエンジニアとして入社。
発表会に登壇したダイソンのヘルス&ビューティー部門のバイスプレジデント、ポール・ドーソン氏は、空気清浄機に求められる機能として、
- 検知すること
- 捕らえること
- 綺麗な空気を循環させること
という3つを挙げ、新たな機能への思い入れと開発の裏側を語った。
このアプローチでは開発にあたって、まず「検知」の精度が重要になる。認識精度を世界トップレベルの大気センサー設備と同様の水準になるよう、中国の北京大学、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンと協力。6カ月間、毎秒288点・計50億点以上のデータを収集し、センサー較正(こうせい)を行なった。これらのデータを使うことで、大学に設置されている設備と同じ水準の検知とフィードバックが行えることを確認したという。
「つまり、機械(Pure Cool)がキレイだと判断したら、本当にキレイだということです」と、ドーソン氏は言う。
発売にあたってはテストルーム以外に実際に日本の家屋(東京、福岡)に設置してテストも行なっている。
Pure Coolのテーブルファン。ブルーのカラーは直販限定モデル。直販価格は5万9184円(税込)。
Pure Coolのタワーファン。価格は7万2144円。
外観のデザインは従来からキープコンセプトの意匠が使われているが、サイズが少しずつ変更されている。
マーケティング担当者によると、本体下部の筒状の部分の直径がやや拡大され、筒の高さも変わっているという。これは単位時間あたりの清浄性能を左右する「容積」を増やすための変更で、これによって30分間での清浄性能は、従来の9畳分から12畳分へと向上している(従来機「Pure Cool Link」と「Pure Cool」の比較)。
交換式のHEPAフィルターと活性炭フィルター。ちなみに折り込まれたHEPAフィルターは、まっすぐ伸ばすと9mの長さ。その広い表面積で粒子状物質などをキャッチする。
これから夏に向けて日本では温度・湿度が上昇していくシーズンだが、そのあとには冬が来る。四季の移り変わりがある日本独特の「冬対応」の要望として、「空気清浄機能は使いたいが、風にはあたりたくない」というものがあった。
これに対しては、新たに搭載する「ディフューズモード」という背面の上の方に拡散した空気を吹き出すモードで対応する。
ディフューズモードの動作機構。リモコンを操作すると送風モードが切り替わり、前方掃気から後方45度の掃気に切り替わる仕組み。
日常生活の「空気の汚染源」はどこにあるのか?
産業技術総合研究所(産総研)篠原直秀主任研究員。室内の空気が汚れるメカニズムと空気の清浄化についての適切な手法を語った。
粒子状物質は多くが屋外由来だが、キッチンやタバコからも発生する。
前後するが、発表会では冒頭、産業技術総合研究所(産総研)の主任研究員で、室内空気汚染などが専門の篠原直秀氏も登壇した。さまざまなリサーチ資料を提示しながら、室内空気汚染と、その原因である空気中のVOC(揮発性有機化合物)やNOx(窒素酸化物)といった微粒子や、昨今注目されているという室内のカビの胞子がどのようにやってくるのかを解説した。
室内の空気は日々入れ替わっているが、とりわけ微粒子は、重力で床付近にたまる性質がある。
また、ダイソンは揮発性有機化学物質について、厚生労働省による実態調査からの分析として「室内の空気は、屋外より最大7倍汚染されていることがある」と説明している。
こうした状況の改善には、篠原氏は「重要なのは汚染発生の抑制」だとして、適切な空気の導線を確保した上での換気の必要性を説いた。またその助けとして空気清浄機を取り入れる場合は、室内のどこの空気を浄化し、どこに空気を出しているかの「循環」も考えた上での改善が重要だと語った。
(文、写真・伊藤有)