コインチェック和田社長の「求心力」を頼ったマネックス

仮想通貨取引所コインチェックは週明けの4月16日、正式にネット証券大手マネックスグループの傘下に入る。社長の和田晃一良氏と、共同創業者の大塚雄介氏は、約580億円相当の仮想通貨が流出した事件の責任を取る形で、取締役を辞任する。

一方で、新しい経営体制を組み立てるうえで、マネックス側が神経を使ったとみられるのは、和田氏と大塚氏の取引所への運営への関与だ。創業メンバーの2人の求心力が高く、「和田さんと大塚さんが会社を辞めたら、一緒に辞める社員がたくさん出る」と指摘する関係者もいるからだ。

マネックス・松本社長のコインチェック訪問

Monex&Coincheck

6日昼ごろ、マネックスグループの社長の松本大氏は、渋谷駅近くにあるコインチェック本社を訪れた。

その少し前にマネックスグループは、コインチェックを買収すると正式に発表していた。松本氏はコインチェックの社員らを前に、「人事異動はない」と伝えた。

マネックス側は、コインチェックの社員の給与、待遇などについても「これまでの待遇を尊重する」(マネックス関係者)という。社名もロゴも変更せず、継続性を重視した形だ。

創業者の和田氏は「開発に没頭しはじめると、何日も部屋から出てこない」と言われる、生粋のエンジニアだ。コインチェックのアプリのほとんどを開発したのも和田氏だと言われている。

価格高騰で仮想通貨が注目を集めた2017年後半、コインチェックは、株取引などの経験がない人も含め、使いやすいアプリで一気に利用者を増やした。

和田氏の求心力

買収するマネックス側としては、当然、和田氏を残したい。しかし、金融庁が資金決済法に基づく業務改善命令でコインチェックに求める「経営体制の抜本的見直し」をクリアするうえでは、和田、大塚両氏の取締役辞任と、株主の総入れ替えは最低条件だった。

金融庁の要求をクリアしつつ和田、大塚両氏を会社に残すうえで、浮上したのが執行役としての残留だ。

コインチェックの新しい社長には、マネックスグループから勝屋俊彦氏が就任し、松本氏も取締役を務める。一方で、7人の執行役員には和田、大塚両氏も入った。日々の取引所運営に関する事柄は執行役員らが意思決定をし、さらに重要な事項については、マネックス側で占める取締役会が決定権を握る建て付けだ。

マネックスとコインチェックの会見

マネックスグループとコインチェックが4月6日に開いた記者会見

撮影:木許はるみ

6日の会見で松本氏は「マネックスの金融機関としての経験と、この未来のマネーを実現していこうという理念と、コインチェックさんの新しい技術と新しい思想、こういったものをフュージョン(融合)させる」と述べている。

和田氏はこの席で、「私と大塚は4月16日をもって退任する予定だが、引き続き執行役員として業界の発展、顧客の資産の保護を目的に責務を果たしていく」と語っている。

マネックスグループは、コインチェックの買収で36億円を投じる。

巨額の仮想通貨が流出した事件を受け、コインチェックは2018年2月以降、ヤフーや大和証券グループ、既存の仮想通貨交換業者など複数の企業と売却を巡る交渉を続けてきた。しかし、失われた顧客からの信頼の回復や、顧客への損害賠償など様々なリスクから、なかなかまとまらず、売却価格の値下げを余儀なくされたとも言われる。

急増したコインチェックの売上高

複数の関係者によると、コインチェックの2018年3月期の売上高は、1000億円を上回った模様だ。

同社は3月中に、流出した仮想通貨NEMの補償を終えた。補償額は概算で466億円にのぼる。仮に売上高が1000億円だったとすると、差引で536億円。人件費や様々な費用、税金を考慮しても一定の利益が予想される。

関係者のひとりは「バブルだった昨年の売り上げは異例だとしても、(買収費用の)回収はまったく心配していない」と話す。

仮想通貨取引所は、金融庁への登録が義務付けられているが、コインチェックは審査を通過できず、みなし業者として運営を続けてきた。現在、正式な仮想通貨交換業者としての登録を目指し、金融庁からの「さまざまな宿題」(関係者)に取り組んでいる。

(文・小島寛明)

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