会社を辞めてフリーランスで働きたいあなたが知っておくべき10のこと

時間や場所に縛られない自由な働き方として、フリーランスを選ぶ人がここ数年で増えている。クラウドソーシンングサービス大手のランサーズ調査によると、副業を含めたフリーランス人口は1119万人(人口比17%)に達し、2015年比で2割増となっている。“自由な働き方”として注目を集めるフリーランスだが「好きなことをして食べていく」道は、それなりにリスクが伴うのも事実。

「フリーランスは、すごくシビアな世界」という、プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会代表理事で、自らもフリーランス歴8年の平田麻莉さんと、労働訴訟を数多く扱ってきた今泉義竜弁護士に、会社を辞めてフリーランスとして働こうとする人がまず考えるべきポイントについて聞いた。

歩道をゆく人々。

一つの組織に縛られない働き方は、魅力的だが、リスクもある。

撮影:今村拓馬

会社を辞めて独立したい、その準備はできているだろうか。平田さんが挙げるポイントをチェックしてみよう。

1. スキルに再現性があるか

フリーランスとして働き続けるには「結果を出すことに再現性がないといけない」と、平田さんは指摘する。

「フリーランスは時間の切り売りでなく、パフォーマンスに対価をもらっています」

そして結果は「出す」のみならず、「出し続ける」ことが必要になる。

「誰しも一つの会社で何かを達成した経験を持っていると思います。さらに、全く違うクライアントや全く違うタイミングでも、その結果を再現できることが大切です。それがないと、なかなか仕事が広がらず、セルフディスカウント(自分を安売り)せざるを得ないでしょう」

2. フリーになっても成長できるか

「収入が安定し、伸ばしていけるかの分かれ目は、成長できるかどうかです」(平田さん)

フリーランス協会の調査でも95%以上の人が、会社勤務の経験があるが、その“貯金”だけでは持たなくなる。

平田さん

プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会の発起人で、代表理事の平田麻莉さん。

撮影:滝川麻衣子

「会社員は研修があったり、指導やダメ出しをしてくれる人がいたりしますね。一方、フリーランスの一番のリスクはフィードバックを誰もくれないことです。パフォーマンスが悪くても、育成コストをかけて育てるより、笑顔で契約を終えればいいからです」

勉強して資格を取ったり、いろんな業種の人と交流したり、「常に成長できるようアンテナを張ること」は必須だ。

3. 自分の専門性を見極める

自分は何者で何の専門家なのか。どの分野なら、対価に対して結果を出せるかを、分かっておくことが必要」と、平田さんは言う。

専門性の掛け算も重要だ。「例えば、単に広報のプロならごまんといます。その上でスタートアップの広報なのか出版や医療に強いとか。経験の掛け算の中で『ここだな』みたいなものを持った人が強いです」

4. 横のマネジメント力はあるか

「権力もポジションもない中で、納得感や信頼で相手を巻き込む、横のマネジメント力が大事になってきます」

会社員のマネジメントは上司と部下といった縦のマネジメントなのに対し、フリーランスはフラットな関係の上でのマネジメントだと平田さんは指摘。

フリーランスは1人で仕事していると思われがちですが、実はやり取りする相手がすごく多い。案件ごとに違うクライアントや業界と付き合ったりしますので」

5. 副業でやれないか

「好きなことで食べていこうと挑戦するのは素晴らしいことですが、いきなり会社を辞めて結局食べていけなかったとなるのはよくない。副業から始めるのはおすすめです」と平田さん。

インターネット上のマッチングサービスの利用が広がるなど、独立のハードルは下がって見える。ただし、ニーズがあってのことだ。

「自分が本業でやっているスキルを生かしながら、力試しに副業から始めてみる。食べていけそうだったら、割合を増やしていくのがいいのではないでしょうか」.

道をゆく人。

現状、フリーランスは労働法の枠外に置かれている。

撮影:今村拓馬

いざ、フリーランス生活を始めるにあたり、押さえておきたいことは何か。「フリーランスリスクについては知っておくべき」と、今泉弁護士は言う。

6. 法律を知っておく

「まず、フリーランスは基本的に労働法で保護されません。けがをしたり働けなくなったりしたときの保障が基本的にない。調子がいいときはリスクについては考えないでしょうが、長い職業人生で働けなくなる時期は必ずある。基本的には保障されないと知った上で選択すべきです」(今泉弁護士)。

労働法には、労働時間の規制や休日など最低基準を定める労働基準法、仕事中のけがや病気、死亡の際に保障する労災保険法、失業や育児中など働けない時の収入を保障する雇用保険法など、労働に関する全般が含まれるが、フリーランスは基本的に適用外だ。

「フリーランスになると、基本的には、発注者と対等であることを前提とした、自由な契約に放り込まれてしまいます」

7. 契約を全て書面化する

契約締結時には、その内容を書面化していくのは最低限の防衛手段として必要です。フリーランスは労働法の適用がない以上、契約書が最低基準になるのです」

今泉さんが扱ってきた訴訟や相談案件でも、単価や納期、支払日などの条件を定めるのに「契約書がないケースはなかなか大変。あれば勝てたのにという事案は結構ある」という。

今泉弁護士。

「自由な働き方のリスクも知っておくべき」と話す、今泉義竜弁護士。

本人提供

「たとえ書面がなくても、少なくともメールやLINEのやり取りなど記録しておくこと。最低、録音でもいいので、証拠になるものを残しましょう。リスクがあることを前提に、将来の自分を守るための記録を取っておくことが重要です」

8. フリー同士のつながりをもつ

「普段から、フリーランス同士の横のつながりを持っておくことは、リスクを軽減させるのに有益です」

今泉さんはそう指摘する。

「いざトラブルがあっても集団で対応できる。ユニオン(労働組合)はその一つです。普段から集まれるような同業者ネットワークを持つことは、お互いの情報共有ができますし、ベテランから学ぶことができます。フリーランス全体の底上げにつながるでしょう」

9. 企業に都合のいい人材になっていないか

「同じ仕事を安いお金でやってくれる人を探すのが企業の正義。それ自体は企業として当然の行動原理で、道徳的にどうこう言っても始まりません。最低賃金の縛りも残業代もつかないフリーランスは、企業が雇用の負担を負わずに、使いたいときに使える、都合のいい人材になりがちです

今泉さんは「自由な働き方」の落とし穴について警鐘を鳴らす。

パソコンの手元。

契約の書面化は重要だ。

shutterstock

「次も仕事をもらうためには(納期や価格など)無茶な要求に応えざるを得なくなるかもしれない。長時間労働も、自分で決めたことなら問題ないと言えるのか。それが本当に、自由な働き方でしょうか」

10. フリーランス保護の動きを知っておく

ただし、労働法の枠外に置かれていたフリーランスの働き方を保護しようという動きが、政府内でも本格化しつつある。公正取引委員会は今春、フリーランスの保護のために独立禁止法を活用するとの見解を示した。

これにより、報酬面や囲い込みなど、不利な条件を押し付ける企業を取り締まることができるようになる

「業界でガイドラインを見直す動きもあるので、政府の動きは、アナウンス効果としては成果をあげていると言えます。すぐに個々の労働者に影響は出ないかもしれないが(フリーランスの働き方を改善する)一つのきっかけであり、前進だと思います」(今泉さん)。

灰色の雇用文化の反動?

最後に、フリーランスの働き方に憧れる風潮について、今泉さんは忘れてはならないポイントを指摘する。

「若い世代にフリーランスが魅力的に映っているとしたら、背景には雇用文化があまりにも灰色ということがあると思います。長時間労働で、男性は家族と過ごす時間がなかったり、女性は妊娠・出産を理由に差別されたり、能力が正当に評価されなかったり。こうした雇用環境を変えていくことも、私も含め上の世代の責任でしょう」

(文・滝川麻衣子)


プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会代表理事の平田麻莉さんがパネラー、Business Insider Japan編集長の浜田敬子がモデレーターを務める、フリーランスの働き方を考えるイベントが5月に開催されます。政府関係者やフリーランスで働く人たちも続々登壇します。

オンライン中継とリアルタイムアンケートも交えて、これからの時代のフリーランスの自由とリスクについて、徹底的に語り合いませんか。

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