Paulo Whitaker/Reuters
- 座っている時間が長いほど、記憶に関する脳の領域が薄くなっている傾向があることが最新の研究で明らかになった。
- 研究者によると、脳のこの領域が薄くなると、認知能力の低下、アルツハイマーなどの認知症につながる可能性がある。
- 研究では、座っていることが脳が薄くなっていることの原因か否かは分からなかった。だが現時点では、座わらないようにすることには十分な理由があるようだ。
座りすぎは心臓や腰に悪いだけではなく、脳にも悪影響を与えるようだ。
プロスワン(PLOS ONE)に発表された最新の研究によると、長時間座っている人は、記憶に関する脳の領域が薄くなっている。
研究者によると、脳のこの領域が薄くなると、認知能力の低下、アルツハイマーなどの認知症につながる可能性がある。
また残念なことに、激しい運動をしてもこの影響を相殺するほどの効果はないと研究者は記した。
UCLAの科学者らは、45〜75歳の間の健康な35人を対象に調査を実施。被験者に平日の運動レベルと座っている時間を聞いた。さらに脳の健康状態を測るためにMRI検査も実施、記憶形成に重要な役割を果たす脳の領域、内側側頭葉(MTL)を詳細に調べた。
その結果、これまでの見解に反して、運動量は内側側頭葉の厚さに大きな影響を及ぼしていないようだった。しかし、座っていることは影響していた。
被験者は平均して1日3〜7時間座っていた。そして、座っている時間が長くなればなるほど、内側側頭葉とその関連領域はより薄くなっている傾向があった。脳のこの領域が薄くなると、認知能力が低下する兆候を示す可能性があると研究者は指摘した。
つまり、座らないようにすることは、脳の健康を促進し、アルツハイマーのリスクを軽減する手段になるかもしれない。
研究にはいくつか留意点もある。今回の研究は特に大規模なものではない。また被験者をある時点でのみ評価しただけであり、座っていることが脳が薄くなっていることの原因か否かは分からなかった(単に相関関係があった)。
だが、相関関係があるということは、かなりの因果関係があると言えそうだ。
研究者らは追跡研究を行い、座ることが脳が薄くなることの原因なのか、他の統計的、あるいは行動的な要因が影響していないかを調べる予定。また、立ち上がったり、歩き回ったり、座っていることを中断する行為が、内側側頭葉の厚さに違いをもたらすかも調査する。
とはいえ、研究者は、座らないようにすることは認知能力にメリットがあるようだと示唆している。ライフスタイルをよりアクティブにする方法があるなら、試してみよう。
[原文:Sitting too much may weaken areas of the brain associated with memory, a new study found]
(翻訳:山口玲子、編集:増田隆幸)