マツモトキヨシとNTTドコモは4月18日に、東京都港区のNTTドコモオフィス内の会議室で、共通ポイント「dポイント」に関する発表会を開催した。
NTTドコモは、同社の「dポイント」加盟店として、ドラッグストア大手のマツモトキヨシが4月30日から加わると発表した。
同社とマツモトキヨシは2017年8月に業務提携を発表しており、今回は提携による具体的な施策やキャンペーンが発表された形。これによって、2社を単純合算した公表アカウント数では、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)のTポイントや楽天ポイントに並ぶ、巨大ポイントネットワークが誕生することになる。
登場から2年強になるdポイントだが、順調にパートナー企業を増やしている。
dポイントは2015年12月から提供開始した共通ポイントサービス。実店舗ではローソン、マクドナルド、高島屋など112社・3万1300店舗、ECサイトではメルカリや無印良品、ソニーなど93社106サイトが導入済みとなっている。
今回、スタートする両社の提携内容は以下の通りだ。
- 店頭でdポイントとマツキヨポイントの2種類が貯まるようになる(どちらも税抜100円につき1ポイント)
- 「dカード/dカード GOLD」で支払い時は、上記とは別に税込100円につき3ポイントが貯まる
- 店頭で1ポイント=1円としてdポイントが使えるようになる
- 上記に加え、期間限定のポイントアップやプレゼントキャンペーンも実施
- 両社が得るデータは、マーケティング目的で交換し合い、分析し他企業への提供などを行う
dポとマツキヨでWポイント獲得、消費動向のマーケ利用も
今回の提携で注目すべきポイントは大きく2つ。
dポイントカードとマツモトキヨシのポイントカードを会計時に提示すれば、両方のポイントが貯まる。レシートには両方のポイントの獲得数が印字される。
1つ目は、利用者へのメリットとして、2種類のポイントが同時に貯められることだ。現在でも東急ハンズ(新宿、渋谷、池袋、梅田、博多店のみ)などで、dポイントと独自ポイントを同時に貯められる仕組みを採用している例はあるが、一般的には店頭でのカード提示で獲得できるポイントは1種類だ(ローソンやマクドナルドなど)。
今回は、両社のポイントカード提示で2%(マツモトキヨシ1%、dポイント1%)、dカード/dカード GOLDユーザーであれば総計5%ものポイントバックとなるのは単純にお得だ。
NTTドコモとマツモトキヨシのマーケティング領域での協業イメージ(数字は2017年8月発表時のもの)
出展:NTTドコモ
2つ目は注意点。自分の購買データなどが分析され、両社以外のマーケティング活動に利用されうるということ。扱われるデータの内容については、NTTドコモの吉澤和弘社長は「個人を特定する情報は交換しない」と説明しており、両社ともに交換するのは、購入データおよび性別や年代などの属性データに限ると説明している。
スタート時点でサービス対象となるのは、東名阪エリアの約850店舗。対象店舗は順次拡大する予定だが、発表会場のマツモトキヨシ側の担当者によると「グループ会社である『どらっぐぱぱす』は5月中、それ以外は決まり次第順次展開する」と話していた。
マツモトキヨシの狙いは「新規顧客獲得」
マツモトキヨシの松本清社長。
マツモトキヨシ側の狙いについては、「既存顧客以外を獲得するため」(マツモトキヨシの松本清雄社長)。同社はオンライン、オフライン両方で販売をしており、より効率的に顧客行動を理解するためには、膨大なマーケティングデータも必要となる。
マツモトキヨシ側のポイント会員数は約2500万人なのに対し、dポイント側は約6500万人と2倍以上もの規模になる。既に「会員の被り」があったとしても、十分魅力的なデータが手元に入ることになる。
マツモトキヨシはポイント自体だけではなく、ドコモの持つ情報で新たな顧客を獲得しようとしている。
ポイントで「日本最大級の企業」を目指すドコモ
NTTドコモの吉澤和弘社長。
では、NTTドコモ側の狙いは何か。
同社は現在、格安SIMや他の通信事業者のユーザーへdポイントの拡大を目指している。発表会前日である4月17日には、dポイントの仕組みをリニューアルし、NTTドコモ契約者ではない家族(三親等まで)とのポイント共有利用を5月1日に提供すると発表している。
同社は従来、メイン事業である携帯電話の回線契約を基盤に各種サービスを展開していた。一方、発表会での囲み取材で、吉澤氏は「会員情報にいろいろなサービスや回線契約が乗っかってきている」と語っている。同社はこれまでメイン事業である携帯電話の回線契約を基盤に各種サービスを展開していたが、現在ではdポイントとそのアカウントを中心に戦略を組み立てているということだ。
同社は2020年までに加盟店数を300社まで成長させることを目標としており、吉澤氏は「日本最大級の(会員基盤をもつ)企業になりたい」と野心を見せる。
ポイントサービスの価値=“優良会員”の数
dポイント、Tポイント、楽天ポイント。大手ポイントネットワークの勢力争いが激化している。
現状、日本の大きな共通ポイントと言えば、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)の「Tポイント」、楽天の「楽天ポイント」などがある。各社広報によると、会員数はTポイントが約6634万人(2018年3月末時点)、楽天ポイントが約9500万人(2017年12月末時点)だという。
会員数だけで見れば、dポイントはTポイントとほぼ同規模。囲み取材で「Tポイントと同じぐらいの規模感に成長したと言えるか」という記者の質問に対し、吉澤氏は「同じぐらいと認識している」と答えている。
しかし、各社の「会員数の計測方法」を紐解くと面白い結果が見えてくる。NTTドコモは「単純なアカウント数」、楽天は「ID発行後、1回でもログインしたアカウント数」(いずれも各社広報談)で、現在利用していない非アクティブな会員を含んでいると認めている。
一方で、CCC広報は「1年以内に利用履歴があり、かつ*名寄せ処理後の数」と説明。これは、約6634万人のほとんどがCCCとそのパートナー企業にとって“優良会員”であることを意味している。
*名寄せ処理とは…… 複数のTポイントカードを持つ会員を1つのアカウント(=ユニークユーザー)ととすること。
ドコモと楽天両社は、非アクティブ会員の比率を公開していないが、このカウント方法では、少なくとも公表している会員数のほとんどが優良会員(アクティブユーザー)ということはなさそうだ。
dポイントカードとマツモトキヨシのポイントカードを提示するゲストの中条あやみさん。
ポイントサービスの普及を加速するための王道は、「貯まる・使える機会の創出」と「魅力的なキャンペーンの展開」だ。今回のマツモトキヨシとの提携は、NTTドコモにとっては新規顧客獲得だけではなく、既存会員への利用喚起を大いに含んでいると言えるだろう。
(文、撮影・小林優多郎)