絶好調のソニー決算 牽引するのはPS4、ジュマンジ、音楽。ドリームチームが育てる「投資家好みのソニー」

ソニーの旗と国旗

営業利益が20年ぶりに過去最高を更新したソニー。

REUTERS/Thomas Peter

世界中の投資家たちにとって、ソニーがさらに魅力的な企業となる兆しが見えてきた。「ドリームチーム」とも呼ばれるソニーの新経営陣がいかに利益率の高いソニーを作り上げていくのか、市場の視線は強さを増していく。

ソニーは2018年4月27日、2017年度(2018年3月期)の営業利益が20年ぶりに過去最高を更新して、7348億6000万円となったと発表した。売上高は8兆5440億円を計上し、時価総額は6兆8000億円をつけた。

PS4(プレイステーション4)を主軸とするゲーム&ネットワークサービス事業、世界でヒットした「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」で高い劇場興行収入を収めた映画事業、ストリーミング配信売り上げの増加が続く音楽事業と、ソニーの増収増益を支えた要因は、同日に開示された決算資料に並んだ。

ソニーは27日、2018年度(2019年3月期)の見通しを、営業利益で6700億円、売り上げを8兆3000億円とした。減益を予想するソニーだが、為替影響などの要因を除けば、2017年度並みの利益を継続させることが重要と強調した。また、ソニーは4月3日にニューヨーク証券取引所に上場した音楽ストリーミングのSpotifyの株主でもある。同社は5.7%のSpotify株を保有していたが、その約半分を売却し、2018年度に株式評価額と売却益の約1000億円を計上する。

ドリームチームと呼ばれる理由

JUMANJI

東京・品川のソニー本社ビルロビーに設置される映画「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」の看板。

Business Insider Japan

4月に就任した吉田憲一郎・CEO(最高経営責任者)と十時(ととき)裕樹・CFO(最高財務責任者)は今後、今以上に利益にフォーカスした経営を牽引していくだろうと、市場の期待は高まる。そして、吉田、十時両氏で編成するソニーの経営体制を「ドリームチーム」と呼ぶのは、ジェフリーズ証券のアツール・ゴヤール氏。

ゴヤール氏はシャープや任天堂など日本のテクノロジー企業を担当するアナリストで、ソニー株には「BUY」のレーティングをつけている。同氏は4月23日にまとめたレポートで、ソニーのマネジメントチームは「Best in class(クラス最高峰)だ」と述べ、その理由の一つとして利益性を重視した経営手法をあげる。

全てのプロダクトを全ての市場で競争させるのではなく、特定のプロダクトにおいては特定の国・地域で戦うことを決め、また他の市場では製品カテゴリーの中の特定のプロダクトを除外するような取り組みを行っているという。ソニーはこの戦略を収益性分析を基に行っていると、ゴヤール氏は指摘する。

同アナリストは、「過去3年間、ソニーはいくつかの事業セグメントで幹部人事の変更をしてきた。ソニーは以前より実力主義型・組織にシフトしてきているように見える」と述べる。現に、吉田氏と共に仕事をしてきた関係者は、吉田氏が側近の人選と投資家との対話を重要視すると話す。ソニー小会社のソネット(So-net)で、吉田CEOの下、十時氏がCFOとして共に働いてきた過去を踏まえると、十時氏がソニーの財務のトップに就いたことは自然な流れだ。

言い訳なき収益目標の達成

Spotify

ソニーは保有するSpotify株の約半分を売却し、2018年度に株式評価額と売却益の約1000億円を計上する。

REUTERS/Lucas Jackson

ゴヤール氏はさらに、ソニーが過去数年、一度決めた収益目標を「Excuse(言い訳)」することなく達成してきたその実行力を高く評価している。2018年3月期の営業利益は、中期経営計画で掲げていた営業利益目標(5000億円)をはるかに超えた。株主としての投資効率を図る指標であるROE(Return on Equity=自己資本比率)では、同経営計画の目標を10%以上としていたが、同期では18%を達成している。

吉田氏が2014年4月にCFOに就任して以来の数年間、ソニーに激しい向かい風が吹く場面もあったが、設定した目標を達成してきた。2015年3月期には、スマートフォンの販売不振から、モバイル子会社の営業権の全額1800億円を減損損失として計上している。

【ソニーの2018年3月期の主なセグメント別・営業利益と2019年3月期の見通し(単位:億円/ソニー連結業績概要より】

FY2017 FY2016 FY2018見込み
ゲーム&ネットワーク  1,775 1,356 1,900
音楽  1,278 758 1,120
映画  411 △805 420
ホームエンタメ&サウンド  858 585 860
イメージング・プロダクト  749 473 750
半導体  1,640 △78 1,000
金融  1,789 1,664 1,700
モバイル・コミュニケーション  △276 102 △150
連結  7,349 2,887 6,700

27日の決算発表会の壇上で、十時CFOが強調したのは、やはり利益を安定的に持続させることに尽きる。

20年ぶりに最高益を更新したことにコメントを求められると、十時氏は、「5000億円以上の連結の営業利益を続けられたことは今までにない。利益を安定的に持続させることに主眼をおいていく。個人的には何が一番大事かというと、緊張感を保つことだ」と加えた。

利益の安定性の持続

ソニー2017年度決算発表会

2018年4月27日、ソニー本社で開かれた決算発表会。中央に座る十時CFO。

Business Insider Japan

CFOに就任する以前、2014年秋からスマートフォン事業の責任者として収益性の改善に努めてきた十時氏だが、モバイル・コミュニケーション分野は2018年度も営業損失を見込んでいる。

十時氏は「結果として業績のターンアラウンドができていないことは、重く受け止めている」とした上で、「それでもモバイル事業をソニーとして継続するということは、5Gの技術は恐らく将来、スマートフォンのみならず、さまざまな機器に入ってくる。その技術を内部でつないでいくことは、我々のブランド・ハードウェアにとって大きな可能性をもたらすことになる」と話した。

「年間1000万台程度の販売台数でも利益が出せるような収益構造に転換をしたい。赤字でも仕方ないと思っていることはない。どんな事業であろうと赤字を継続するということは、その事業をより困難にさせる。サステイナブル(持続可能)にしていきたい」と述べ、飽くまでも収益力を高める経営体制を終始、強調し続けた。

(文・佐藤茂)

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