期間中、実験対象店舗では客がレジを通らず、スマホアプリだけで商品を購入できる。
撮影:小林優多郎
ローソンは、4月23日から5月31日まで都内店舗において、セルフ決済サービス「ローソンスマホペイ」の実証実験を実施する。
ローソンスマホペイは、入店した客自身が購入したい商品のバーコードをスマートフォンアプリで読み取り、決済まで行なう仕組みだ。
昨今、日本でもQRコードやICカードを用いたキャッシュレス決済の話題が盛んだ。また、米国ではアマゾンのレジなしコンビニ「Amazon Go」や中国の無人コンビニなども登場しており、ローソンスマホペイは国内で一般ユーザーが参加できる取り組みとして注目を集めている。
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1.店内でアプリを起動し、チェックインする
店内で「ローソン」公式アプリを起動し、ローソンスマホペイを立ち上げる。店内にはビーコンが設置されており、対応機種であれば画面の指示に従うだけ利用開始できる。
撮影:小林優多郎
2.商品のバーコードを読み取る
無事起動できると、自動でカメラ画面に変わるので欲しい商品を棚から取り、同時にバーコードを読み取っていく。
撮影:小林優多郎
3.読み取り結果を確認する
バーコードの読み取り後、読み取り結果を確認する。このとき余計なものを読み取っていないか、逆に読み取っていないものがないか確認する。
撮影:小林優多郎
4.キャッシュレスで決済する
読み取り結果に間違いがなければ、決済に進む。決済方法はクレジットカードのほか「楽天ペイ」が利用できる。iPhone版に関しては加えて「Apple Pay」も利用できる。(写真はiPhone版の画面)
撮影:小林優多郎
5.退店処理を実行する
決済が無事完了すると、QRコードが発行される。このコードを店舗の出口にある端末にかざして、ローソンスマホペイは完了となる。
撮影:小林優多郎
6.電子レシートが発行される
アプリ内では電子レシートを確認できる。なお、期間中ローソンスマホペイで支払うとPontaポイントもしくはdポイントが税抜100円につき3ポイント貯まる。これは、一部キャンペーンが適用されないための“特別レート”だ。
撮影:小林優多郎
実験対象となる店舗は、晴海トリトンスクエア店、大井店、ゲートシティ大崎店の3店舗。その内、24時間店舗である晴海と大井については、午前1時から4時の間に限り、従業員の負担軽減に向けた“レジの無人化”実験も行う。
ローソンのねらいは無人店舗ではなく「無人決済」
ローソン 上級執行役員 マーケティング本部長の野辺一也氏。
撮影:小林優多郎
前述のようにローソンスマホペイはアマゾンや中国の例をお手本とした“日本版無人レジ”の先駆け的存在に思える。
しかし、同社の上級執行役員 マーケティング本部長の野辺一也氏は今回の実証実験に関して「無人店舗が狙いではなく、あくまで無人決済のためのもの」と語る。
実は、今回の実証実験と同様の取り組みは1カ月前からゲートシティ大崎店において、同社社員を対象に行われていた。その結果、入店から退店までの平均時間が約3分から約1分に短縮。社員がスマホペイを使うことで行列が縮小し、一般の客も利用するレジの回転率も上がり、結果的に売り上げの伸びにつながったという。
同社は今回の実験を一般ユーザーに解放し「レジの通過数」「顧客の増減」「万引きなどのロス」の3項目をチェック。実用化につなげる方針だ。
「Amazon Go」をやりたいわけではない
ローソンスマホペイの導入には、ビーコン、情報表示用のタブレット端末、QRコード読み取り用のスキャナーなどになる。スマホアプリはユーザーが各自で、商品のバーコードも既存の商品のものを使うため投資費用は抑えられる。
撮影:小林優多郎
とはいえ、各店にオーナーがいるフランチャイズ展開をする同社にとって、このような新しい仕組みを全国約1万4000店舗に導入するのは容易ではない。
野辺氏は「一律全店舗導入はまったく考えていない」と話すが、スマホペイの導入費用について「セルフレジを導入するより安価」「全国展開も非現実ではない額」と語っており、同社としては“肝入り”の実験であることがわかる。
また、Amazon Goや中国の無人レジを参考にしたのかという記者の質問に対しては、「どちらも現地に赴いて視察をした」と回答。「中国の無人コンビニは品揃えが弱く、魅力が少なかった。また、Amazon Goは厨房施設が充実していて勉強になった。だが、1店舗に1億円規模の投資をしなければ実現できないというのは、投資対効果に合わない」と、全国チェーンの同社らしい視点で語っていた。
酒・タバコが買えないなど弱点もある
酒やタバコなど、非対象製品を読み取るとポップアップが表示され、有人レジの利用が促される。
撮影:小林優多郎
なお、実証実験ゆえに、スマホペイもまだ完璧とは言えない部分が存在する。
その課題の1つは、同社の主力商品「MACHI cafe(マチカフェ)」や「Lチキ」などのホットスナックが買えないことだ。コーヒーや唐揚げなどの一部商品はバーコードを付与することでスマホペイでの支払いにも対応するが、全てが対象ではない。これらの商品は混雑時の店内渋滞を生み出す大きな原因の1つとされており、「実証実験と並行して対策を早急に検討していきたい」(野辺氏)としている。
また、酒やたばこも本人確認が必要なことからスマホペイでは購入できない。アプリに登録されている個人情報から認証する手も考えられるが、野辺氏は「年齢確認に関して勝手な判断はできない。官公庁と相談をしつつ対応策を模索している」と、現状の仕様に対して理解を求めている。
コーヒーなど一部製品は、他店とは異なる販売形式に変えて対応している。
撮影:小林優多郎
今回の実証実験は1カ月程度という短い期間だが、一般ユーザーも参加できる貴重な機会だ。多くのフィードバックが集まり、日本のキャッシュレス決済や業務の効率化が1日も早く進むことを期待したい。
(文・小林優多郎、川村力)