「経営者に必要なものは3つのQと情熱」アリババのジャック・マー会長が未来の起業家に向けて語る

早稲田大学のイベントに登壇するジャック・マー氏。

早稲田大学の大隈記念講堂のイベントにジャック・マー氏(写真中央)。

アリババグループ会長であり、ソフトバンクグループの取締役でもあるジャック・マー(馬雲)氏は、世界で最も有名な起業家のひとりだ。そんな超大物が4月25日、早稲田大学でトークイベントを行った。

イベント情報の公開時、報道関係者はもちろんだが、将来経営者や実業家を目指す若者にも衝撃的なニュースだったに違いない。実際、当日は約4480名の事前応募者の中から抽選などで選ばれた約1200名(報道関係者など含め)が会場である大隈記念講堂に集まった。

また、学内には4カ所のサテライト会場が用意され、YouTubeのライブ配信も実施された。SNSなどでは「#ジャックマー早稲田講演」のハッシュタグで内容や感想が拡散された。

満席の大隈記念講堂

当日、大隈記念講堂は満席。会場には日本人だけではなく多くの国籍の人が集まっていたようで、さまざまな言語が飛び交っていた。

イベントは、同学大学院に在籍し既に起業家である登壇者3人と出席者がマー氏に直接質問をするという形で進行した。その中から興味深い問答を紹介する。

起業家に必要なのは「3つのQ」そして「情熱」

ジャック・マー氏

身振り手振りを交えながら英語で質問に答えていくマー氏。

質問内容は多岐にわたったが、最も多く求められていたのは「マー氏の実業家としてのアドバイス」だ。

象徴的だったのは、イベントの冒頭で「潜在的なニーズに応えるソリューションには、批判が伴うが、どう対応すればいいか」という起業家としての心構えに関する質問の答えだ。

マー氏が示したのは3つの“Q”だ。

  • IQ(Intelligence Quotient)
    …… 知能指数。高ければ“成功”はたやすい
  • EQ(Emotional Intelligence Quotient)
    …… 心の指数。苦難を乗り越えられればチャンスは広がる
  • LQ(Love Quotient)
    …… 愛の指数。“成功する”=“愛される”ではない。愛される人間になる必要がある

この3つはマー氏が考える起業家に必要な素質だ。加えて、マー氏は繰り返し「経営者にはビジョン、情熱が必要」と話している。

「起業家にはビジョンが必要。人と同じビジョンだったら、勝算はない。違うからこそ勝てる。
そのためには情熱が必要。毎月、毎日のように、自分たちが正しいことをやっているのか、実現できるのかを問うている。
人がいいと思ったものを信じてはいけない。自分が自分なりにできることを信じる。人と違うことが起業家だ」

新しい仕事のためには、教育を変える必要がある

ジャック・マー氏

マー氏は「教育は抜本的に変える必要がある」と熱弁。

また、マー氏は未来の仕事に関しても言及した。理工系の学生からの「ITは教育を変えるか?」という質問の中で答えている。

マー氏はアリババ設立前には、杭州電子工業大学で教鞭をふるっていた。それだけに、教育に関してはほかの話とは少し異なるトーンで話していたように感じた。

マー氏は「知識は頭から生まれるが、知恵はハートから生まれる。機械にはチップはあっても、ハートはない」と人間の可能性について希望的に述べた。

「ITは教育を変える、あるいは教育を変えるためにITを使うという、両方ができると思う。
今後30年で人間の生活は大きく変わる。データ技術によって多くの仕事はなくなるだろうが、多くの新しい仕事が出てくるだろう。
ただ、人はなかなか新しい仕事の雇用には対応できないかもしれない。そのために教育を変えないといけない。世界中の大学の多くは、大きな課題に突き当たることになる。
したがって、教育制度を変えないといけない。例えば、ただ計算を勉強させるとしたら子どもより機械の方がより速く、間違えないし、疲れない。学校で子どもが学ぶべきことは、機械と違うこと。将来の仕事に就くための技能をつけるかが重要だ」

信用は恒久的ではない。積み重ねるもの

登壇者以外の質問者

質問は登壇者だけではなく、会場の参加者からも受け付けられた。

イベントの最後には、日本人学生が昨今国内で発生している日本企業の不祥事について触れ、「失った信用はどのように取り戻せるか」と質問した。

アリババは1999年に登場し、急成長を遂げたネット企業だが、その成功の裏には従業員などによる模造品の取り扱いなどの不祥事も発生している。

マー氏は「人からの信頼を得るように、ずっと諦めないことが大事」と答えている。

「そもそも信頼はずっとあると保証されているわけではない。私なんて、実の父から長年信頼されていなかった。
日本を含めどの会社も、お客さんやチーム、友人、パートナーからの信頼を失っても決して諦めてはいけない。誰でも過ちは犯す。私自身もそうだ。

(アリババ設立から)19年間、色々な惨事や問題があった。アリババは大きな会社になったと言われるが、多くの過ちも犯してきた。自分の自信を失うこともあった。
模造品の問題が起きたとき、泣き寝入りをするのか、文句や不満を言うのかと問われたが、信頼を取り戻すために是正措置をとった。
なぜなら、これから100年以上も仕事をしていく上では、信頼を回復しなくてはいけない。信頼を回復しては失う、その繰り返しになる。起業家としては、いつも信頼と尊敬を得られるように努めている。
幸か不幸か、互いに信頼しない世の中になってきている。通商摩擦も起きている。決して諦めてはいけない。信頼は得るだけではなく、積み上げていくものだ」

大盛り上がりの会場

講演後、ジャック・マー氏と早稲田大学総長の鎌田薫氏によるセルフィーが撮影されたが、参加者は皆両手を上げて会場の盛り上がりを表現していた。

(文、撮影・小林優多郎)

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