語学学習の鍵はメソッドより「やめないこと」。挫折防ぐ5つの方法

語学学習

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大学入試の終了とともに英語の勉強をやめ、TOEICすら受けたことのなかった私は33歳で英語学習を再開し、翌34歳のときに中国語の勉強を始めた。

10年経った今はフリーランスとして中国語・英語の経済ニュースを中心とした翻訳業務に従事している。また、中国在住時代には大学の日本語学科の教員になり、「優秀外国人教師賞」を2度受賞した。

私の本職は「経済担当の記者」で、外国語や語学教育は”片手間”にやり始めたことだったが、今は本業を支える貴重な副業スキルになってくれた。新年や新年度に立てた目標がフェードアウトしやすいこの時期、「独学」「語学試験」を念頭に、経験をシェアしたい。

英語ができないと、突然泣きを見る

セミナー

自分の仕事には英語は必要ないと思っていたが、その考えは甘かった。

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30代で英語学習を再開したのは、仕事上の苦すぎる失敗がきっかけだった。

2007年末、私は韓国政府の招待で、北朝鮮取材に行くチャンスを得た。声がかかったのは世界で30数人、日本からは私を含めて2人だった。ベールに包まれた北朝鮮の内側に入れると張り切りまくっていたが、誤算だったのは、北朝鮮での全てのやり取りが英語で行われ、通訳は韓国との国境までしかついてこなかったことだ。

私はさまざまな建物に案内されながら、それが何なのかを理解できなかった。さらにつらかったのが、各国記者との食事会。隣に座るフランス人が、私に何か話しかけてくれるが、分かるのは「コナン」の単語のみ。その場にいた記者で私と中国人記者の2人だけが談笑の輪に入れなかった。

このままでは記事も書けないと焦っていると、ある男性記者が「自分の取材ノートをシェアするよ」と救いの手を差し伸べてくれた。しかし、地獄に仏と思ったその男性は、強烈なセクハラ男だった。夜、ホテルの内線電話で連絡をくれ、ノートを持ってきた彼は、私がドアを開けると突然抱き着き、顔面を押し付けてきたのだ。

その後の顛末を詳しく書くと違うテーマになってしまうので、ここでは省略するが、語学力不足で貴重な取材の機会に何もできず、さらには取材ノート欲しさに隙を見せてしまった自分への嫌悪感といったらなかった。

帰りの飛行機の中で、「帰国したら即英語の勉強を始める」と強く決意し、2008年に初めてTOEICの試験も受けた。

私と同世代の皆さんにはうなずいていただけるだろうが、英語が必要なさそうに見える仕事でも、キャリアを重ねていくとある日突然、英語を使う仕事が降って来る。そしてにわかで勉強しても絶対間に合わないのが、語学なのだ。GWを迎え勉強マインドが薄れかかっている同志に、私はもう一度リマインドしておく。

今やめてしまったら、後で泣きを見ますよ。

「楽しく学ぶ」「楽して学ぶ」は幻想、覚悟を決めよう

トンネル

語学は使えるようになると楽しいが、そこまでの過程はトンネルを使って登山をするようなものだと思っておいた方がいい。

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当初、この記事では独学社会人のための学習メソッドを紹介するつもりだった。だが、TOEICで言えば700点台後半、中国語で言えば新HSK5級くらいまでは、どんなテキストを使っていても、勉強を続けさえすれば到達できる。おそらく多くの人にとって、身につかないのはメソッドやセンスでなく、習慣なのだ。

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一流の講師、よく考えられたテキスト、空調の整った自習室がそろった大学入試の予備校で、「これだけやれば合格するよ」と示されても、言われたことをやり通せる人は多くない。仕事や付き合いに追われる社会人にとって、学習アプリをダウンロードし、テキストを買うことはできても、それをやり遂げることは実に難しい。

私は中国の大学教員時代、日本語人材の就職にとって極めて重要な試験、「日本語能力試験1級(N1)」対策クラスを主宰していた。最初の授業の日、必ず言っていたのは「語学は楽しく習得できるものではなく、会話できるようになって初めて楽しさを感じることができる、ご褒美後払いのスキルだ」ということだ。

語学の(とりわけ試験を想定した)勉強は、トンネルの中を登って山登りするようなものだと思っていた方が後々の離脱も避けられる。きついし、単調だし、何よりもゴールまでの距離感や自分の現在地が分からない。

もちろん、字幕なしでアニメやドラマを見たいなど、趣味を兼ねて上達していく人もいる。ただし、景色を楽しみながらが、いつの間にか高いところに登っている人のやり方を形だけ真似しても、大半の学習者は同じ成果は得られないだろう。

とは言え、語学学習のトンネルには出口があるし、外に出たら、入り口にいたときと全然違う世界が広がっていることに気付く。

だからトンネルの中はあれこれ考えず、素晴らしい世界が待っていると信じて、最短で通り抜けた方がいい。そして、トンネルを歩きぬくために必要なのが自己管理力。電車内の吊り広告で見かける高額スパルタ塾は、メソッドとコーチの両方を提供してくれるが、自分で自分をコーチできるようになれば、英語だけでなく、他の言語や資格などマルチスキルの獲得にぐっと近づく。やっと本題に入ったが、現実的な学習継続術をいくつか紹介したい。

<目標を小分けにする>

「外国語が話せるようになる」という目標はあまりに漠然としている。「出張で外国人とコミュニケーションする」「東京オリンピックまでにTOEIC800点」は具体的に思えても、どうやってという道筋が見えにくい。独学で重要なのは、トンネルの途中にいくつか「目印」を置き、そこを直近の目標にすることだ。具体的には、

1.今すぐテストに申し込む

テスト

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私が主宰していたN1対策講座は、次の試験に申し込んだ人しか参加できないルールにしていた。試験を控えているかどうかで、モチベーションは大きく変わる。最低でも1~2年は続く外国語学習では、スランプもあれば仕事が忙しくて中断を余儀なくされることもある。その際に、試験を受ける予定がなければ、そのままフェードアウトするリスクが格段に高まる。定期的に試験を受けることで、小さな達成感を得られるし、結果が良くても悪くても1つのステップにできる。「もう少し力がついてから」「もうちょっと勉強してから」試験を受けようと思っている人は、今すぐ申し込んだ方がいい。

2.成長と悔しさを感じる機会を意識してつくる

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単語や文法を覚えたりテキストを音読したりするのが「筋トレ」だとすれば、会話練習は「試合」だ。そして語学学習の場合、試合の意義は達成感を得、課題を発見できる点にある。

私は日本語学科で会話力アップゼミを開いていた。「後悔した買い物」「占いが当たった経験」など身近なテーマで各自1分話し、フリートークに移る。30分~1時間、外国語だけで会話のキャッチボールできれば自信になるし、自分が話したいことの表現方法も覚えやすい。会話のレッスンや海外旅行、語学学校が提供しているセミナー、英語で実施される勉強会などは、モチベーションを維持する方法として、意識して参加した方がいい。

<勉強から逃げだせなくする>

人が何かから抜けられなくなる要因……仲間、コスト、楽しさなどで、自分を縛っていこう。

3. 目標を宣言する

目標宣言

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TOEICなど語学試験に申し込むことには、目標の小分け以外に「後にひけなくなる」という効用がある。さらに、それを身近な人に宣言することで、ますます放棄しにくくなる。

「海外出張できる程度」と違い、「6月のTOEICで〇〇点」という数値目標は、他人でも検証できるし、勉強していることを宣言することで、飲み会などの付き合いも抑えやすい。社内で目標共有する機会があるなら、大風呂敷を広げてしまおう。

4. 仲間をつくる

勉強会の仲間

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これは、朝活、読書会などの延長でもあるが、社会人勉強グループのリスクは、集まることが目的となり、飲み会化してしまうことだ。グループをつくる、グループに入るときには、同じ日のTOEICに申し込むなど、脱落者を極力出さない仕組みをつくろう。

メンバー構成も重要で、マラソンが趣味、10キロ以上のダイエットに成功したことがある、塾なしで難関大学に入ったなど「淡々と何かをやってきた実績がある人」が多い方がいい。意欲の強い人が集まったとしても、その意欲が飲み会のアルコールに変わり、蒸発してしまったら元も子もない。

5. 今の生活のルーチンを一つやめる

我慢

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社会人が語学学習を続けられない最大の理由は「忙しくて時間がない」こと。本気で勉強しようと思えば、何かを捨てて時間をつくるしかない。私は新聞社を辞める前の1年、人とランチを食べることをやめ、勉強に充てていたほか、午前0時から毎日オンラインレッスンを入れ、会食のお酒は最初の1杯だけと決めた。お酒が入ると、「今日はいっか。明日からやろう」となりがちだ。

まずはTOEIC700点台が目安

中国語

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語学試験のスコアが履歴書に書ける段階まで上昇すると、忙しくても、気が乗らなくても、たとえ10分でも惰性で勉強できるようになる。TOEICなら730点、中国語なら新HSK5級だろうか。勉強を始める時点の初期値にもよるが、700点台に到達する頃にはそれなりの時間的投資が行われており、「せっかくここまで頑張ったんだから、落としたくない」という意識が強くなる。

その段階までは、メソッドよりも続ける習慣づくりを優先し、自分のやりやすい勉強方法を選んだ方がいい。1日30分でも勉強を続け、3カ月から半年に1度試験を受けていれば、勉強方法が根本的に間違っていない限り、スコアは伸びていく。

ところで、私は2014年7月、TOEICで870点を取ったのを最後に、試験を受けていない。英語留学、スクール通学なしでこの結果を得たので満足していたが、語学学習を語るには900点は必要だと薄々感じているし、翻訳ばかりやっていて言葉が出なくなっているので、4月下旬、4年ぶりにTOEICのための勉強を再開した。2018年中の目標クリア目指して頑張るぞ!と、この場を借りて不特定多数に宣言しておきます。

(文・浦上早苗)

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