トランプ政権下でなぜ「宗教映画市場」が盛り上がるのか

『Is Genesis History?』

『Is Genesis History?』

Compass Cinema

宗教映画の集客戦略は、かつては非常に単純だった。特定の宗教や教会をターゲットにした草の根的なマーケティングキャンペーンを展開し、信者たちを劇場へ送り込み、口コミが広がることを期待するのだ。

そういった戦略により、これまでに数々の宗教映画が見事なオープニング成績を収めてきた。最も有名な例は、イエス・キリストの最期を壮大に描いたメル・ギブソン監督作品『パッション』 (2004) で、R指定作品としては今もなお史上最高の興行成績を保持している。

だが、ストリーミング配信の出現により、宗教映画のマーケティングには明らかに変化が生じている。さらに関係者によると、ドナルド・トランプ氏が大統領選に出馬し、当選してたことも、影響を及ぼしているという。

「富は隙間市場に」

大統領選のキャンペーン中に支持者を歓迎するドナルド・トランプ氏。

大統領選のキャンペーン中に支持者を歓迎するドナルド・トランプ氏。

Jonathan Erns/Reuters

「トランプ大統領の誕生後、人々は組織を信用しなくなりました。彼らはいわゆる『トップダウン』を信用せず、リアルで正直なストーリーを求めています」とマーケター/プロデューサーのErik Lokkesmoe氏はBusiness Insiderに語った。「『物事が単純で分かりやすいはずがない』といった感じです。今の観客は、問題がいかに複雑かを理解しているのです」

コミュニティーのリーダーや図書館スタッフ、教師や牧師たちに、映画について直接伝えるだけの日々は終わったのだとLokkesmoe氏は語る。最近はクリスチャンの観客でも、さまざまな信念やセンスを持ったサブグループが存在し、宗教映画市場においては、「富は隙間市場にある」のだという。

「トランプ・オーディエンス」の見つけ方

現時点で誰もが狙っている隙間市場は、もちろん、トランプ氏の支持者たちだ。Lokkesmoe氏いわく、大統領の熱心な支持者について今はまだ正確に読み取ることはできないが、彼らが作品にもたらす影響力は分かってきた。

ドキュメンタリー映画『Is Genesis History?(原題)』は、創世記に記録された歴史が、この世界とどのように交わっているかを探求した作品だ。2月下旬にFathom Events(さまざまなイベントを映画館で上映するコンテンツプロバイダー)による一夜限りの特別上映として公開され、わずか704スクリーンで180万ドル(約2億円)の興行収入を叩き出した。これは同日(木曜日)に劇場公開された作品の中で最高の記録で、『レゴバットマン ザ・ムービー』や『フィフティ・シェイズ・ダーカー』の成績を上回った(どちらの作品も劇場数は『Is Genesis History?』の2倍以上だった)。

「あれは明らかにトランプ・オーディエンスです。『私たちは包囲されており、私たちの信念は攻撃されている。今夜はみんなで集まって、自分たちの信念を再確認しよう』という心理でしょう。まさにトランプの考え方です」とLokkesmoe氏は述べた。

トランプ氏による影響を受けているのは、劇場公開作品だけではない。急成長する宗教作品のストリーミング市場に注目する人々は、より情熱的な反応をインターネット上で感じている。

マイケル・スコット (Michael Scott) 氏は、「宗教作品市場におけるNetflix」と目されているPure FlixのCEO兼共同創業者。同社はインディーズの宗教作品を手掛ける世界トップのスタジオで、信仰や家族に優しいエンターテイメント作品を製作・配給する世界的リーダーでもある。スコット氏は、トランプ政権が発足して以来、顧客たちに活気が増したことに気づいたという。

「彼らにとって、今は以前よりもオープンに映画について意見を言ったり、話したりしやすいようです。宗教映画についても話しやすい環境になっています」と彼はBusiness Insiderに伝えた。

『The Case for Christ』

『The Case for Christ』

Pure Flix

Pure Flixでは、映画やテレビ番組、礼拝、教育的コンテンツまで、5000本以上の作品がストリーミング配信されている。また、オリジナル作品も製作しており、エリカ・クリステンセン(Erika Christensen)、フェイ・ダナウェイ(Faye Dunaway)、ロバート・フォースター(Robert Forster)が出演した最新作『The Case for Christ(原題)』は劇場公開されたばかりだ。2015年の創業以来、ストリーミング部門が成長し続けているが、信仰に基づいた観客のためには、彼らのニーズに合った物語を伝える必要があるとスコット氏は考えている。

「観客が宗教映画に足を運ぶ理由は、作品が伝えるメッセージにあります」と彼は話した。「まずはメッセージを強調し、それから、そのメッセージを中心にオーガニックな物語を描く必要があります。ただの素晴らしい物語というだけでは、ハリウッド映画を観に行けばいいわけですから」

その方程式は、2015年公開の『War Room(原題)』のような作品で功を奏した。トラブルだらけの家族が信仰を通じて強さを見出す姿を描いた作品で、最初の週末に1100万ドル(約12億円)以上の興行収入を記録した。オクタヴィア・スペンサーが神を演じた今年公開の『The Shack(原題)』は、1600万ドル以上のオープニング成績を記録し、週末興行収入ランキングで3位に初登場した(世界的には約5400万ドルを記録)。

だからこそ、今後の宗教映画では、入国禁止を命じた大統領令をはじめとする、トランプ政権が生んだ政治的問題を主軸にするべきではないのだとスコット氏は語る。

「そういった問題は、映画のわき筋では描かれるかもしれません」と加えたスコット氏は、Pure Flixが2014年に公開した『God’s Not Dead(原題)』には、イスラム教徒の一家が登場していたことを付け加えた。

『God's Not Dead』 (2014)

『God's Not Dead』 (2014)

Pure Flix

宗教映画市場の拡大

「メッセージを第一に」という方程式が変わることは想像し難い。しかし、トランプ時代の宗教映画市場においては、「意欲的な観客」として知られる新たなグループが登場している。

彼らは劇場での映画鑑賞やテレビ番組の視聴だけでは飽き足らず、それ以上の形でもコンテンツと関わりたいと考えている。そこには、映画や番組の原作本の購入や、コミュニティーへの支援や奉仕活動が含まれている。

「いわゆる意欲的な観客たちは、トランプに投票した人々ではありません。彼らはもっとアーティスティックで若く、それほど政治的ではないのです」とLokkesmoe氏は述べた。

『沈黙‐サイレンス‐』

『沈黙‐サイレンス‐』

Paramount

これらの意欲的な観客たちは、変化を生み出そうという風潮の時代に育った世代だ。Lokkesmoe氏が経営するAspiration Studiosは最近、この世代をターゲットにして、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙‐サイレンス‐』や新作テレビ番組『Genius(原題)』のためのキャンペーンを展開した。

また、Pure Flixは意欲的な観客の市場をターゲットに1000万ドル〜3000万ドルの予算を費やし、大物タレントをフィーチャーした映画を手掛ける新部門の設立を検討している(現在の製作費は400万ドル〜700万ドル)。

Lokkesmoe氏いわく、現時点までにトランプ時代から得られた最大の産物は、これまで以上に特定の観客に向けたコンテンツ配信への関心が高まったことだという。

「特定のトピックや話題を求める観客を探す方法だけでなく、それ以上のことを考えている出資者や人々が増えています」と彼は語った。

「『世界を変える一本の映画を作る』以上のことへの関心が高まっているのです」

source: Pure Flix 、 Paramount

[原文:How religious movies are thriving more than ever before under Trump

(翻訳:Thumper Jones)

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