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ドコモ新料金「ベーシックシェアパック」に隠れた“総務省の要望”、au、SBの「4年縛り」問題

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4月27日、昨年12月から総務省で議論が続いていた「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の報告書が公開された。報告書ではキャリアによる「2年縛りの是正」「中古端末市場の活性化」「サブブランド やキャリアの関連会社のMVNOにおける料金・品質の妥当性」などが取り上げられている。

特に料金面に関しては「過去の利用実績等に基づき、利用料金が適正となる料金プランを 利用者に案内するようにキャリアに要請する」とあった。

総務省の資料

公表された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の報告書のうちの1つ。

そんな報告書が公開された数十分後、NTTドコモは、新料金プラン「ベーシックシェアパック」「ベーシックパック」を発表した。すでにKDDIが手掛けている 「auピタットプラン」のNTTドコモ版と言える内容で、家族であれば5GBから30GB、個人なら1GBから20GBの準定額制プランとなっている。まさに、ユーザーの利用実態に合わせて、適正な料金プランが適用される、総務省の意向通りの内容だった。

ベーシックシェアパックの内容

ドコモのベーシックシェアパックの内容。

キャッシュバックなき時代のユーザー獲得競争

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そもそも、NTTドコモは、総務省の考え方に素直に従う優等生のような存在だ。例えば、かつて「2年縛り」が問題になったときも、2年間の契約が終了した際、引き続き2年の契約を約束することで3000ポイントがもらえるが、解約する際は解除料9500円が必要となる「ずっとドコモ割コース」と、解除料が不要でいつでもやめられる「フリーコース」という2つのコースを新設した。

KDDIやソフトバンクも2つのコースが選べるが、解除料がいらないコースは月額300円、高い値付けになっているというのがミソだった。しかし、NTTドコモの場合はどちらも基本料金は変わらず同額という、ユーザーと総務省に“優しい”設計になっていた。

今回、総務省は、このKDDIとソフトバンク方式に噛みつき、報告書に「自動更新の有無 による提供条件の格差の縮小について検討を要請」とした。つまり、NTTドコモを見習って、2年縛りのコースに自動的に更新される場合も、自由に解約できるコースとの料金の差をなくせとしたのだ。総務省としては、キャリアに対して、2年縛りをできるだけなくし、ユーザーが解約しやすい環境をつくることで、3キャリア間の競争を促進させ、料金の値下げにつなげたい。そのために、2年縛りに対して茶々を入れることに躍起になっているのだ。

実際のところ、2年縛りのない、解除料が不要な「フリーコース」に関しては「NTTドコモをやめようとしている人が選択している」(NTTドコモ担当者)というが、一方で「本当にやめようという人は9500円を支払ってやめていく。おそらく他社の魅力的なキャッシュバックの誘いがあり、それが期間限定であれば、2年更新のタイミングではなくても、9500円を支払ってやめていく」(同)という。

結局、3社のユーザー獲得競争を促進させるには、総務省が最も嫌いな「キャッシュバッ ク」が最も効果的のようだ。ユーザーがやめやすいコースを強化するだけでは意味かなく、そこにキャッシュバックと いう「ニンジン」をぶら下げないことにはユーザーが他社に移動するということはないのだろう。

総務省の方針が見えない「4年縛り」。容認なのか問題視なのか?

総務省の検討会では「2年縛り」が問題視されているが、最近では「4年縛り」というものも登場している。

過度な端末割引ができなくなったため、月々の端末代金の支払いの負担を減らすために、48カ月払いという割賦方式がKDDIとソフトバンクで導入されている。

本来ならば、2年縛りよりも4年縛りのほうが、ユーザーを強く拘束するため、問題は大きいように思う。しかし、2年縛りはすでに直面している課題であるのに対し、4年縛りはまだ導入されて4年経過していないため、問題が水面下に潜っており、見えにくい状況にあるとされる。

優等生であるNTTドコモとしては、この4年縛りの存在がとても悩ましいようだ。

「ほかの2社が4年縛りを展開し、NTTドコモが提供していないとなると、他社のユーザーは 4年間、縛られてうちにこない。この状況はどうしたものか」(NTTドコモ関係者)。

4年縛りに関しては、27日午前に野田聖子総務相が会見で「4年縛りでユーザーが端末を安く買える一方、途中で解約しようとすると、いらないと思っていた代金の支払いを求めら れ、変更しづらいデメリットもある」と指摘。4年縛りをする際には、販売店がユーザーに対して、十分な説明をするように義務づけ、違反した場合は電気通信事業法に基づき業務改善命令を出す方針だ。

しかし、裏を返せば「しっかりと店頭で説明すれば、4年縛りは問題ない」ともとれる。NTT ドコモとしては4年縛りを導入すべきか、悩ましい選択を迫られているといえそうだ。


5月25日から開始するベーシックシェアパックの詳細

ドコモのベーシックシェアパック


ベーシックシェアパックの詳細

ベーシックパック


新たな「ずっとドコモ割プラス」は5月1日から開始する

ずっとドコモ割プラス


(文・石川温、写真・小林優多郎)


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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