フリーランスになってからもっとも増えたのは満足度で、もっとも減ったのは「働く時間」。ただし、収入は増えた人と減った人がほぼ同レベル——。
「試してみたい」と思っても、実際に挑戦するのは躊躇する人も多い、フリーランスという働き方。実際にフリーランスとして働く人たちの実態が、プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会がまとめた「フリーランス白書2018」で明らかになった。フリーランス、会社員合わせて約2100人に働き方の満足度や意識について聞いた。両者の価値観を比較し、会社員はより「忍耐」を重視していることも見えてきた。
会社を辞めてフリーランスとして働いている人がもっとも増えたと感じているのは「満足度」(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
年収の変化は?
調査では、フリーランスの回答者の97%が「過去に一つの会社に所属していた」と答えている。
会社員時代との比較で「増えたもの・減ったもの」を次の6つから選んでもらっている。
- 働く時間
- 人脈
- 収入
- スキル/経験
- 満足度
- 生産性
このうち、もっとも増えたのは「満足度」(8割超)、もっとも減ったのは働く時間(6割)という結果になった。一見、働きやすさは向上しているように見える。
ただし、気になる収入の変化は、増えた人と減った人がいずれも4割で、はっきりと分かれた。
年収については、フルタイム(月平均140時間以上労働)のフリーランスに限ると、全体の6割が300万円以上だった。
満足度が低いのは?
独立前後で、満足度の推移を見てみよう。
フリーランスになって満足度が上がったと8割の人が答えた項目は、「就業環境」や「達成感」、「人間関係」だ。一方で、もっとも満足していると答えた人が少なかったのは「収入」。不満な人が4割で、満足な人の3割超を上回っている。
収入面の不安定さは、フリーランスで働く上での課題となりやすいようだ。
「フリーランスを続けていくうえで障壁になっているものは」との問いに対しては、「収入がなかなか安定しない」が6割強でもっとも多かった。それに、「社会的信用を得るのが難しい」「仕事がなかなか見つからない」が続いた。
フリーで稼いでいる職種は?
フリーランスの年収。
出典:フリーランス白書2018
たしかにフリーランスは会社員と違って、毎月の収入が必ずしも保証されているわけではない。気になる年収を職種別に見てみると、人事や経理、経営企画といったビジネス系、IT・クリエイティブ系、士業系で、比較的年収が高かった。
特に士業は年収1000万円以上の人の割合が2割近くを占め、他の職種に比べてもっとも多かった。ビジネス系、IT・クリエイティブ系では300万-500万円ゾーンが約3割ともっとも多かった。一方、比較的年収が低かったのは、接客・作業系で100万円未満が3割強を占めた。
会社員は忍耐?
調査では、フリーランスとほぼ同数の会社員にも質問している。フリーランスと会社員の満足度比較では、「達成感・充実感」はもとより、「社会的地位」や「収入」の項目でもフリーランスがいずれも高いという結果になった。
特徴的なのは、「現在の働き方を続ける/成功させる上で需要だと思うもの」の質問だ。
フリーランスでは「自分を売る力」「成果に結びつく専門性・能力・経験」「やり遂げる力」といった項目が特に高かった。会社員との比較では、いずれの項目も重要視する人が多いのも特徴だ。
フリーランスと会社員の仕事に対する意識比較。
出典:フリーランス白書2018
唯一、会社員の方がフリーランスより重要視している人の割合が大きかったのは「忍耐力」だった。
働けなくなったときの保障を
調査を実施したプロフェッショナル・パラレルキャリアフリーランス協会では「フリーランスといった新しい働き方を日本で広めるためには?」について自由回答で聞いている。
そこでは、フリーランスの置かれた状況の課題も浮かび上がってくる。
誰もが選択できる働き方として、税金、年金制度、健康保険制度などの社会保障制度の見直しが重要。
リスクヘッジを求める声は多い。
雇われとフリーの最大のギャップがいわゆる「福利厚生」であることは散々指摘されていて、育児介護病気などで働けなくなったときのリスクヘッジが求められている。
子育て中の人からの声はこれ。
保育園の優先順位が低いことの見直し。
企業に対しての切実な声。
フリーランス=社員より安価に仕事を振れて、なおかつ残業や休日出勤を気にしなくていい発注先、という固定観念を払拭できればと思っています。
政府内でも見直しの動き
副業・兼業も含めて、フリーランス人口は全国で約1000万人とされ、多様な働き方の選択肢の一つとして注目を集めている。
一方で、会社員同様に働き方を縛る「名ばかりフリーランス」の防止や社会保障制度など、労働法の保護の枠外にあるその働き方については、政府内でも見直しの動きが起きつつある。
プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会代表理事の平田麻莉さんは「フリーランスとして独立するには向き不向きもあり、全ての人に勧めたいわけではありません」とした上で、今回調査の目的について「ダイナミックな時代環境の変化の中で、多様なフリーランスの声を集めて社会に発信することで、誰もが自律的なキャリアを築ける世の中を目指したい」と、話している。
プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会の平田さんや、Business Insider Japan編集長の浜田敬子も登壇する、フリーランスの働き方を考えるイベント「フリーランスを法律で保護って本当ですか」が5月22日に開催されます。
お申し込み、詳細はこちらから。