カンタス航空のボーイング747-400。
REUTERS/Daniel Munoz
- カンタス航空は、2020年までに最後に残った6機のボーイング747を退役させると発表。
- 代わりに、ボーイング787-9ドリームライナーを6機導入する。
- ついに、ボーイング747はカンタス航空から姿を消す。カンタス航空は1971年から同機を使ってきた。
- まだ747を旅客機として使用する航空会社もある。
- ボーイングはこれまで747を1500機以上販売してきた。だが、新規受注に苦戦している。
カンタス航空は5月2日(現地時間)、2020年までに最後に残った6機のボーイング747を退役させると発表。また、ボーイング787-9ドリームライナーを6機、追加購入することも明らかにされた。
ボーイング747は、1971年からカンタス航空の国際線を象徴する機体だった。
「これはまさに1つの時代の終わりであり、新たな時代の始まり」とカンタス航空のCEOアラン・ジョイス(Alan Joyce)氏は声明で述べた。
「747は40年以上にわたって当社の国際線を支えた。我々はボーイングのほぼ全てのタイプの航空機を使っている。747の退役が、2020年の創立100周年と重なるのはちょうど良いタイミング」
最後に残るカンタス航空の6機の747は、2002〜2003年に引き渡された747-400ERだろう。航続距離を伸ばすために燃料タンクが追加された747-400ERは6機しか製造されておらず、その全てをカンタス航空が保有している。
カンタス航空はこれまで747が就航していたロサンゼルス便を、エアバスA380とボーイング787-9に置き換えると発表した。
2017年、デルタ航空とユナイテッド航空の747-400が退役、アメリカの航空会社において旅客便として運航される747は姿を消した。
747はまだ、ルフトハンザ航空や大韓航空といったアメリカ以外の航空会社や、UPSやアトラス航空などの貨物航空会社によってアメリカの空を飛んでいる。だが、アメリカの大手航空会社が、紛れもなく最も象徴的で、成功を収めた航空機をもう使わないと決めたことは残念なことだ。
悲しいかな、経済性はノスタルジーに勝る。現実的には、4発の747は大きく、高価で、燃費が悪い。特にボーイング777やエアバスA350などの双発機と比べるとなおさら。ユナイテッド航空では777-300ERが、デルタ航空ではA350-900が747に取って代わった。
消費者の好みも変化した。747の全盛期には、長距離の国際線はほぼ主要なハブ空港間のみで運航され、いくつかの中継地で止まることがよくあった。現在は、ノンストップで、主要なハブ空港まで飛ぶ必要のない、直行便の人気がますます高まっており、ボーイング787ドリームライナーのような、より小型のワイドボディ機が人気となっている。
「空の女王」が歴史の中に消えてしまう前に、世界で最も象徴的な航空機の、その類いまれな歩みを見てみよう。
初飛行は1969年2月。
AP
747と製造工場のワシントン州エバレット工場は、ボーイングの従業員5万人がわずか16カ月で作った。
AP
関係者は「インクレディブルズ(Incredibles)」と呼ばれるようになった。
AP
※インクレディブルズ(Incredibles):信じられないようなことをやり遂げた人たち。
エンジニアリングチームを率いたジョー・サッター(Joe Sutter)氏は、「747の父」として知られている。
Boeing
サッター氏は2016年に95歳で亡くなった。
REUTERS/Anthony Bolante
747はボーイングにとって大きな賭けだった。当時は、超音速旅客機への期待が高まっていた。
AP
ボーイングは、人々がより安価に快適に旅行したいと望んでいることに賭けた。
AP
そして、各社はこぞって747を購入した。
Qantas
当時のパンアメリカン航空の社長が、2倍の大きさの機が必要とボーイングに語ったと伝えられている。
AP
当時、各社が運航していたのは、ボーイング707。
Boeing
パンナムの要求に応えるために、ボーイングはキャビンに2つ目の通路を設けた —— こうして、ワイドボディ機が誕生した。
AP
※ワイドボディ機:客室に通路が2本ある機体。1本のものはナローボディ機と呼ばれる。
ボーイングによると、747は3400個の荷物を運ぶことができ、わずか7分で下ろすことができた。
AP
座席は550席、747と比較すると707は本当に小さく見えた。それは当時の他の主力機も同様。
AP
例えば、ダグラスDC-8とイギリスのデ・ハビランドのコメットなどだ。
AP
1970年、パンアメリカン航空で就航、人々は魅了された。
AP
1970年代、747は3発のより小型なワイドボディ機と競い合った。ロッキードL-1011 トライスターや、
AP
マクドネル・ダグラス DC-10だ。
AP
ボーイングはオリジナルの747-100型を改良。
AP
1971年後半、より強力なエンジンで航続距離を伸ばした747-200型が登場。
Flickr/Aero Icarus
10年後、ボーイングは新しいエンジンと2階の客室部分を延長して747を再び改良。300型と呼ばれた。
Flickr/Aero Icarus
300型はボーイングが期待したほどの人気とはならなかった。そこで1989年、同社は400型を発表。最新のアビオニクス(飛行電子機器)、全面グラスコックピットを備え、航続距離もさらに伸びた。747ファミリーにおいて、最も人気のモデルとなった。
Boeing
2011年、最新バージョンの747-8型を発表。全長250フィート(約76.2メートル)は、これまでに製造された旅客機で最長。
何千人もの従業員と招待客の前で747-8を発表。ワシントン州の同社エバレット工場にて。
Reuters/Anthony Bolante
747は旅客機以外に様々な用途で使用されている。消火用や、
REUTERS/Johannes Eisele
スペースシャトルの運搬機、
REUTERS/Ho New
貨物機、
REUTERS/Johannes Eisele
政府専用機、
AP
そして、アメリカ大統領専用機。
AP
世界の主要航空会社が保有したことで、747はまさしく象徴的な存在となった。長年、747を保有しなければ、主要航空会社とは言えないと考えられてきた。
REUTERS/Toby Melville
ボーイングは1500機以上の747を販売。
Boeing
747は超音速旅客機コンコルドや同時期に登場したDC-10よりも長く飛び続けている。DC-10はMD-11、ロッキードL-1011、エアバスA340に置き換えられた。
AP
残念ながら、747は数多くのライバルが登場するなか、生き残ることは難しそうだ。ライバルは例えば、総2階建てのエアバスA380スーパージャンボや、
REUTERS/Pascal Rossignol
双発のA350XWB「ミニジャンボ」など。
Flickr/Delta
747はまた、兄弟機の登場によっても売り上げを減らしている。777ミニジャンボや、
KLM
787ドリームライナーだ。
Boeing
2017年、ユナイテッド航空と、
United Airlines
デルタ航空では747-400型が退役。その結果、アメリカの大手航空会社では747の定期便がなくなった。
Flickr/Tomás Del Coro
そのため、ボーイングは747の製造ペースを2カ月に1機のペースに落とし、新規受注に注力している。
British Airways
だが747ファンは、まだ心配には及ばない。今後数年間、ルフトハンザ航空、エアチャイナ、大韓航空などが747-8を運航する。
Boeing
[原文:One of the Boeing 747's most loyal customers is sending the jumbo jet to retirement (BA)]
(翻訳:conyac、編集:増田隆幸)