【独占】SBI北尾社長「仮想通貨でNo.1目指す」「取引所買収は全く考えない」——手数料革命からマイニングまで

ネット証券、ネット銀行、そしてアセットマネジメントなどの主軸事業が飛躍的に拡大し、過去最高の収益をはじき出したSBIホールディングス。過去1年で株価は倍近く上昇し、時価総額は約6600億円まで膨らんだ。今後1兆円を目指すSBIがさらなる拡大のアクセルを踏み込む上で、成長の鍵を握るひとつが仮想通貨とブロックチェーン事業だ。

SBIホールディングス北尾吉孝社長

時価総額1兆円を目指す北尾吉孝社長率いるSBIホールディングス。

同社は中間持株会社のSBIデジタルアセットホールディングスを作り、仮想通貨のマイニングや交換業、ICO(イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨による資金調達)から仮想通貨のヘッジファンドやブロックチェーンを用いたeコマースまで、いわば「デジタル資産」のエコシステムを作り上げようとしている。

コインチェック社による巨額の仮想通貨不正流出などで市場環境が目まぐるしく変化する中、SBIを率いる北尾吉孝社長(67)は仮想通貨事業でNo.1を目指すと言う。秘策はあるのか?北尾氏に話を聞いた。

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—— 北尾社長の仮想通貨やブロックチェーンとの出合いを教えてください。

ビットコインが出てきて、サトシ・ナカモト(ビットコインを発明した人物と言われている)とは一体誰なんだろうなんていう話から出発して、なんで日本人の名前がついてるんだろうと、漠然たる興味だったね。

ひょっとしてこれはグローバル通貨になる可能性があるのかと考え始めるのと同時に、そのバックボーンになっているブロックチェーン・テクノロジーは非常に素晴らしいんじゃないかと思い始めた。

SBIホールディングス・北尾吉孝社長

「うちのスプレッドで他は儲からなくなりますよ」(北尾社長)

ブロックチェーンのテクノロジーは仮想通貨のみならず、広範囲に金融事業で使える。それで僕は早い時期に、リップル社(仮想通貨とブロックチェーンで知られるアメリカのフィンテック企業)に出資を決めるとともに、2016年に合弁企業をアジアで作った。

ブロックチェーンをうまく使いながら、そこに仮想通貨を噛ませれば、国際送金や国内送金が安くできるようになる。これはグローバルスタンダードになるかなとさえ思った。

「スプレッド革命を起こす」

—— 仮想通貨やブロックチェーン事業で北尾社長は以前、「No.1になる」と言われました。SBIはこの事業でどれほどの規模感を想定されていますか?

あまり数値的目標を定めることはしていない。仮想通貨取引所に関しては信頼が回復すれば多くの投資家が戻ってくると思う。日本には16社の交換業者が登録しています。僕はこれは多すぎると思ってる。もっと整理されてしかるべきだと思う。

なぜ整理されないでこんなに残っているのかというと、多くの業者がスプレッド(手数料)を取ってきた。儲けが十二分にあったんです。

僕はスプレッド革命を起こそうと思っている。うちは証券の手数料でも限りなく安さを提供する。銀行預金金利はできるだけ高くする。保険料はできるだけ下げる。すべて顧客中心主義を徹底して貫いてきた。このビジネス(仮想通貨関連事業)についても、僕は基本的には同じ考え方です。

だから、「うちがやりだしたらすぐにNo.1になりますよ」と言ったけれど、それは圧倒的に顧客中心主義で、スプレッド(手数料)を少なくするから。うちのスプレッドで他は儲からなくなりますよ

「玉を持つ」ことは必勝法の一つ

——SBIは仮想通貨のマイニング(採掘)もやられていますね。

SBIホールディングス・北尾吉孝社長

「マイニング(採掘)をやるということは、証券で言えば自分で玉を持つということ」

ビットコインをマイニングして持っていたのは中国です。コンピューター処理のための電気代が安いですからね。我々はマイニング領域にも入っていかなきゃいけないと思った。今ではビットコインキャッシュをマイニングしている。 現在は1カ所ですが、今後は3カ所にしていく。これは他に真似されるから、まだ言えない。場所もやり方も面白いよ。

最終的に僕は交換業では、4大通貨のビットコイン、ビットコインキャッシュ、イーサリアム、それとリップルを主にしてやろうと思っています。匿名性の高いものは扱いたくない。結局、(コインチェックの不正流出で)NEMが盗まれたけれど、どこに行ったのか分からんようになり、他のコインに変えられているわけですね。

当面は4大通貨に絞って、この夏頃から(交換業を)スタートする。それまでに金融庁でも研究会でさまざまな意見が出てるから、それらを凝縮してある程度の規制をさらにかけるでしょう。

その時に我々はマイニングをやってるわけですから、証券で言えば自分で玉(証券では株式のことを玉と呼ぶ)を持つことになる。さらに我々はリップルの10%の大株主です。これも玉を手に入れることができる。玉を持つ交換業者であることが必勝法の一つ。

証券、銀行、為替の顧客基盤

SBIグループの看板

2018年3月期、SBIは過去最高となる収益を記録した。

もう一つの必勝の理由は、我々の四百数十万の証券のお客様がいて、300万を超えるお客様が銀行にいて、100万を超えるお客様が為替にいる。これらのお客様がネットでつながっている。これらのお客様はうちが(仮想通貨交換業を)やるよと言うと、口座を開いてくれる。既存の生態系とのシナジー効果があるんです。

——国内の16社の登録交換業者は多すぎると言われました。北尾社長が言われるような業界再編がさらに進んだとしたら、SBIは他の交換業者の買収を考えたりはしませんか?

考えないね。全く考えない。自分らでやっていきます。証券でもそう。うちはどこともくっつかないで一社で今日まで育てて、大きくしてきたんです。だから、買おうなんていう発想は全くないです。

いま真剣に考える「シンギュラリティ」

——最後に5年後、10年後の我々の生活を大きく変えるテクノロジー、またはフィンテックは何だとお考えですか?

北尾吉孝氏

「シンギュラリティ(技術的特異点)」は北尾社長が今、研究を進めるテーマだ。

撮影:小田垣吉則

僕は一番大事なテクノロジーは、ブロックチェーンとAIだと思ってるんです。例えばね、ファクトリーオートメーション(FA)というのものは工場の労働者を減らしてきたわけです。塗装ロボットやピッキングロボットと次々と、ロボットが人間を代替していくんですね。

今度の革命はホワイトカラーの革命です。今までやってきた定型の仕事の多くをロボットが代替する。「RPA」、ロボティック・プロセス・オートメーションと呼ばれるものです。そこにAIがつくことで、今まで無理だと思っていた例外対応、あるいは非定型の仕事もロボットが代わってやってくれるようになる。

ブロックチェーンとAIは大きな社会変革をもたらしていきますよ。日本は人口減少の時代に入り人手不足なると言われるけれど、雇用はやっぱり減っていくわけです。さらに問題は、AIが人間の脳力を超えて、AIがAIを作る時代に入っていく。これはシンギュラリティ(技術的特異点)と呼ばれるものだけれど、これはいつ来るのか?2045年に来ると言う人もおります。100年は来ないと言う人もおる。遅かれ早かれ来るでしょう。いったい、人間は何をしたらいいのか?

北尾吉孝氏

あと20年は世の中の動きを読み、勝ち抜いていく自信はあると答える北尾社長。

撮影:小田垣吉則

創造的破壊というものがこのAIの世界でどういうふうに起こるのか?あるいはこのシンギュラリティがその速度をもっと速めて訪れるかもしれない。その時に本当に創造的破壊が起こった場合、人類はどうなるのかというのが僕の今の研究テーマなんです。

僕はあと20年は生きてる自信があるけど、たぶん20年後は一線ではもうやってませんよ。ただ、この20年は近未来を予測して、世の中がどういうふうに動いてるか、そして動いていくかを読んで、勝ち抜いていく自信はあるね。

(聞き手・構成:佐藤茂、写真・小田垣吉則)


北尾吉則:1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部、英ケンブリッジ大学経済学部を卒業。野村證券に勤務している頃、ソフトバンクの孫正義氏に出会い、ソフトバンクへ転身。1999年にソフトバンク・インベストメント(現在のSBIホールディングス)社長・CEOに就任。


Business Insider Japan初の書籍出版記念:「仮想通貨の新ルール」イベント開きます!

5月30日仮想通貨イベントサムネイル

仮想通貨の記録的な値上がり、ICOの流行、仮想通貨交換業者への続々の参入表明と、「仮想通貨バブル」の果てに起きたのが2018年1月末のコインチェック事件でした。

この数カ月で、仮想通貨やブロックチェーン界隈の風景は一変しました。金融庁は監督を強め、撤退する取引所が相次いでいます。ビットコインをはじめとする仮想通貨は、乱高下を繰り返しています。

Business Insider Japanは、ミレニアル世代から高い支持を得ている仮想通貨とブロックチェーンについての取材に力を入れてきました。一連の取材を通じて私たちは、仮想通貨とブロックチェーンは単なるマネーゲームの装置にとどまらず、広く社会に浸透していくイノベーションであると考えています。

2018年5月18日に、これまでの取材成果ををまとめた新書『知っている人だけが勝つ 仮想通貨の新ルール』 (講談社+α新書)を発売いたします。出版を記念して、国内外の仮想通貨・ブロックチェーン事情に極めて詳しい論客のお二人を招いて、徹底議論するトークセッションを企画しました。

仮想通貨関連の監督官庁やスタートアップを追いかけてきた筆者の小島寛明記者とともに、「仮想通貨をとりまく最新状況」を語り尽くしましょう。

■日時:5月30日(水)19:00-21:00

場所:Book Lab Tokyo(東京都渋谷区道玄坂 2-10-7新大宗ビル1号館 2F)

参加費:3000円(ワンドリンク付き)

■定員:先着50名

ご興味のある方はぜひ下記のPeatixページからご登録ください。

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