楽天も参入で加速する「PB家電」戦国時代 —— 大手量販店の売れ筋プライベートブランド商品とは?

楽天ビック

楽天とビックの協業は年度始め早々の大きなニュースだった。なぜ楽天がPBをはじめるのか? それはリアル店舗とノウハウを持つビックカメラとの親和性の高さにある。

約1カ月前の4月11日、EC大手の楽天がビックカメラとの協業による「PB(プライベートブランド)商品参入」を発表した。共同で新会社を設立し、楽天市場内に家電ECサイト「楽天ビック」を開設。オンラインとオフラインの連携を含むお客の多様なニーズに応えていくものだ。

家電量販店業界では、ここ数年でPB商品・メーカー共同開発商品(オリジナル商品)の取り扱いが広がっている。ビックカメラとの協業は、すでにPBのノウハウを持つビックカメラを通じて、この流れに楽天も乗っかろうという流れだ。

なぜPBをはじめるのか? なぜ提携の相手がビックカメラなのか? それは、家電量販店にとってPBの売り上げが思いがけず「大きな存在」であるからだ。

プライベートブランド商品は「儲かる」

楽天ビック

楽天ビックの会見で発表された取り扱い商品のイメージ。

なぜ家電量販店が競うようにプライベートブランドを開始しているのか。それは、メーカー製品に比べて利益率が高く、競合他社との差別化になるため、価格競争に巻き込まれにくくなる、という利点があるからだ。

例えば、スマホ時代の来店客は、ごく当たり前に、複数の家電量販店で価格の比較をする。そうしたケースでも、PB商品・オリジナル商品は独自の機能を備えているため、全く同じ商品の比較にならないというわけだ。

プライベートブランド家電が目立ち始めたのは2000年ごろ。その背景には、「大規模小売店舗法(大店法)」の改正、廃止がある。大型店の出店が加速するのに伴って価格競争が激化したのだ。

当初は、メーカーの通常商品の型番を独自型番に変えたものや、メーカー通常商品をベースに、カラーバリエーションを変更するだけといった簡易的なPB化が多かった。しかし、最近では、機能の「プラスα」にこだわった、「PB開発」に本腰を入れた商品が増えてきた。

大手のPB商品群は、大きく分けて3種類ある。

  1. 洗濯機、テレビなどの「家電製品」
  2. 電池、LED電球などの「消耗品」
  3. プリント用紙、衣類などの「非家電」

PBへの傾注度は家電量販チェーンごとに温度差があるものの、決して無視できない売り上げになっている。各社の状況を見ていこう。

楽天とのタッグでPB強化に力を注ぐビックカメラ

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ビックカメラ京王調布店。

楽天とタッグを組むビックカメラは、現在PB商品の数は約4000点と多い。しかも、「PB商品の開発強化に(一層)力を入れる」という方針だ。

2017年8月期連結決算では、約7906億円の売上高のうち、PB商品は4.6%を占めている。また、2018年8月期第2四半期連結決算では、2018年8月期上期約4150億円の売上高のうちPB商品が売上高構成比4.8%(昨年同期は4.1%)と、対昨年同期で増加傾向にある。

冷蔵庫

ビックカメラのPB商品の中で人気なのがamadana監修の家電シリーズ「TAG label(タグレーベル)」だ。写真は同ブランドの冷蔵庫。86Lの小型で、2万4800円(税別)。

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このタグレーベルは、家電だけでなく、寝具、肌着、自転車などアイテムの幅を広げている。

2017年9月、ビックカメラ京王調布店オープンの際、ビックカメラ社長の宮嶋宏幸氏は、次のように語っている。

「ネットとリアル店舗の行き来(いわゆるO2O)について考えている。当社では、ネットで買った商品を店舗に取り置きするサービスを実施している。国内需要は買い替え中心なので、買い替えサイクルを短くしてもらうのが重要だ。PBも増やしていく。当社はPBの専門チームを結成しており、お客様に満足してもらえる高性能な商品を開発し、リーズナブルな価格でご提供していく。PB商品の開発は会社にとってもメリットがあることで、戦略上、大切なことだ」

新市場を開拓する「楽天ビック」両社の思惑

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楽天ビックの発表会でガッチリと握手をする楽天の三木谷浩史社長(左)と、ビックカメラの宮嶋宏幸社長。

楽天ビックの特徴は、配送設置などの物流の2社連携のほか、楽天ビックのPB商品の開発といった競争力ある商品の品ぞろえも視野に入れている。

駅前に立地するビックカメラはIT好きのユーザーが多く、ECとの親和性が高い。楽天は、ビックカメラと組むことで、家電の配送・設置サービスを強化できる。

「楽天とビックカメラはより密接に連携を行い、両社の強みを活かした、利便性のいっそう高いインターネット通販サービスの提供を行うことになりました。その協業の流れの中で、家電PB商品の開発についても検討がなされ、実施が決定いたしました」(楽天広報)

ビックカメラも同様のコメントをしている。

PB開発に関するビックと楽天の役割については「非公開」。とはいえ、PB開発の専門チームを置くビックカメラの協力を得ることで、楽天は約9500万の会員データを生かしたPB開発に着手しやすくなったといえる。

一方、ビックカメラ側は、宮嶋社長が楽天ビックの会見で「女性ユーザーが多い楽天会員の来店を期待している」と語っており、女性客数の増加をねらっている。

大手家電量販のPBの「売れ筋」最新事情

楽天・ビック陣営以外の家電量販店のPB展開はどうなっているのか。大手3チェーンの状況をまとめた。

エディオン:数を絞ったPB展開、エアコンが人気

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広島エディオン蔦屋家電。エディオンは2012年に「イシマル」「エイデン」「ミドリ」「デオデオ」のストアブランドを「エディオン」に統一した。

中国・四国地方を中心に全国に出店する大手家電量販店エディオン。オリジナル商品「Kual(クオル)」ブランドで約100アイテムを展開する。その中でも売れ筋は、エアコンだ。

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エディオンで人気というクオルブランドのエアコン。

「当社のオリジナル商品“Kual(クオル)”の中でも、利益貢献度が高いのがエアコンです。例えば、ダイキン様と共同開発したモデルは、塩害対応熱交換器を搭載し、室内機の清潔性にこだわるなど、お客様に好評です。オリジナル商品は約100アイテムあり、ここ数年アイテム数は大きく変わっていません。2017年度のオリジナル商品の売り上げは前年比103%で伸長しています」(エディオン・広報担当者)。

同社ではエアコン以外に、炊飯ジャー、グリル鍋、クリーナーなどでもクオルをラインナップしている。価格だけでなく、便利なプラス機能を搭載していることが、お客に喜ばれるポイントだと語る。

ヤマダ電機:家電から消耗品まで幅広いPB攻勢

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家電住まいる館YAMADA大宮宮前本店。

業界最大手のヤマダ電機は、PB「HERB Relax(ハーブリラックス)」を展開して6年目に入る。2018年4月現在のアイテム数は406点。

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ハーブリラックスのレンジは白いデザインの箱なのでみつけやすい(下段)。

2013年にハーブリラックスが登場した際は、ヘアドライヤー、ケトル、トースター、アイロン、ヘアアイロンなど家電を中心とした展開だった。現在は家電製品だけでなく、消耗品も含むラインナップで広くPBを押している。

現在のハーブリラックスで人気の商品は、電池、コピー用紙、全自動洗濯機、電子レンジ、テレビ台など。電池やコピー用紙などの消耗品は、メーカーにこだわらず価格を重視する層が多いため、PB商品の売れ行きがよいという。ヤマダ電機広報によると「PBの家電製品は、メーカー製品と同等の機能を持ちつつ、価格が手ごろだという点が人気」だそうだ。

ノジマ:4K対応テレビ、ミネラルウォーターなど多彩なPB展開

ノジマ

ノジマ

携帯電話販売代理店のITXや大手インターネットプロバイダーのニフティを買収するなど、独自の戦略を打ち出すノジマ。同社は神奈川を中心に展開している。

「当社のPB『ELSONIC(エルソニック)』は、1994年7月にテレビを発売したものの、その後は大きく展開していませんでした。しかし、2011年3月の東日本大震災をきっかけに本格的に開発・発売することになりました。当時、高単価だったLED電球を手頃な価格で販売し製品の普及につとめました」(ノジマ 広報担当)。

現在、ELSONICのアイテムは、1200点以上。冷蔵庫、掃除機といった白モノ家電、シェーバーなどの美容家電、液晶保護フィルムやケーブル類、ミネラルウォーター、折り畳み傘などラインナップは多様だ。担当者によると、PBの売り上げは「数十億円規模、成長は毎年120%程度の伸び」だという。

なかでも昨年秋に発売した「ELSONIC」の4K対応液晶テレビは、55型「ECS-TU55R」(税別6万9800円)、49型「ECS-TU49R」(税別5万3800円)という価格が話題となり、予約開始数日で完売した。

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同社は、ELSONICの4K対応テレビ第二弾として、55/49型の4K液晶テレビ「ECC-TU55R3」(写真)と「ECC-TU49R3」を3月末から発売中。

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モバイルバッテリーなど、横浜DeNAベイスターズとコラボしたアイテムも開発・販売する。

(文、写真・伊森ちづる)


伊森ちづる:家電ジャーナリスト、エディター。家電関係のコールセンター、調査会社での勤務を経て、家電流通専門誌の編集記者へ。家電量販店を中心に流通企業の本部、店舗、スタッフなどを幅広く取材。そのほか、家電製品を実際に使うレビュー記事、開発者へのインタビューなども積極的に行う。

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