エチオピアのスタートアップが目指すのは“ユニコーン”ならぬ“チーター”

経済成長が続くアフリカ東部のエチオピアで、スタートアップ企業を育てる取り組みが始まっている。スタートアップが目指すのは、評価額100万ドル以上の“チーター”だという。

Addis Garage

スタートアップ企業が集まるコワーキング・スペースには、スティーブ・ジョブズの言葉「ハングリーであれ、愚かであれ」が書かれている。

エチオピアは、2016年までの10年間で平均10%を超える経済成長率を達成するなど、世界全体でも有数の高成長を遂げてきた。首都アジスアベバでは、いたるところで新しいビルの建設が進んでいる。

一方でITなどの分野での起業はまだ、活発ではないという。

アジスアベバ中心部の商業ビルに、アジス・ガレージと呼ばれる施設がある。雰囲気は、渋谷あたりのおしゃれなカフェのようだ。農業やITといった分野のスタートアップ企業に投資している企業「ブルー・ムーン」が2017年に始めた。

技術やビジネスのアイデアを持つ若者を募り、施設内の作業スペースを提供し、4カ月かけて事業計画や試作品を磨き上げる。これまでに30社ほどのスタートアップ企業が参加してきた。

アジス・ガレージ

アジス・ガレージの作業スペース。

評価額が10億ドル(約1090億円)以上のスタートアップ企業は“ユニコーン”と呼ばれているが、アジス・ガレージの若者たちが目指すのは、100万ドル(約1億円)以上の企業で、彼らはそれを“チーター”と呼ぶ。

エチオピアでは、スタートアップ企業を立ち上げる人がまだ極めて限られており、ITなど技術の面でもまだまだこれからの面がある。このため、とりあえずは地に足についた目標を設定したようだ。

支援するブルー・ムーンもユニークだ。創業者の名刺に書かれた肩書は「チーフ・ハッピネス・オフィサー」(最高幸福責任者)で、事業計画づくりなどを支援する担当者は「チーフ・レインメーカー」(成果をもたらす責任者)だ。

Ms. Kisanet Haile

ゲームアプリの開発を進める、キサネット・ハイレさん。

キサネット・ハイレさん(24)は、アジス・ガレージでゲームの開発に取り組んでいる。大学卒業後、土木分野のエンジニアとして働いていたが、4〜5人の仲間とともに、アジス・ガレージの起業家支援プログラムに参加した。

ハイレさんは7歳のときに母を亡くした。自らの体験から、父や母が子どもたちに伝える価値観を身につけられるゲームの開発を目指しているという。

「ふつうは人を愛したり、友だちに優しくしたりすることは親から学ぶけれど、私にそれを教えてくれたのは兄弟でした。でも、この国にはそれができない子どもがたくさんいます。ゲームを通じて身につけられることのできる仕組みをつくりたい」

チーター

コワーキング・スペースの黒板にはチーターが描かれている。

若者たちが事業計画づくりや、プロダクトの開発を進めるコワーキング・スペースの黒板には、参加者たちが目指す将来の姿であるチーターが描かれている。

チーフ・レインメーカーのシェム・アセファウさん(56)は「エチオピアでは起業家が育つエコシステムが、まだまだ弱い。若者を支援することを通じて、4〜5年かけて何社かのチーターを育てることができれば」と話す。

ブルームーンは、5年間で300社のスタートアップ企業を支援する計画だ。

(文・写真:小島寛明)

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