シャープは2018年夏、国内通信キャリア向けに「AQUOS R2」の出荷を開始する。
よく日本で利用されているスマートフォンの半分が「iPhone」だと言われるが、その状況は最新の調査でも変わっていない。では、そのライバルと言ったらどのブランドを思い浮かべるだろうか。
国内Androidスマートフォン1位の座は長らくソニーモバイルの「Xperia」が握っていた。MM総研によると、スマートフォンにおける2017年1月から12月までのメーカー別国内出荷台数シェアは、1位がアップル(48.7%)、2位がソニーモバイル(13.5%)、3位がシャープ(12.1%)、4位が富士通(6.4%)だ。
しかし、そう遠くない先にこの順位が入れ替わるのではないか、とする見方が増えてきた。シャープのスマートフォン「AQUOS」シリーズがこの1年間で急激に延びているからだ。
iPhoneの最大のライバルはXperiaからAQUOSへ?
BCNランキングの調査によると、2017年の販売台数においてシャープ製Androidスマートフォンでトップに輝いた。
提供:シャープ
前述のMM総研の調査結果でも、2017年でのシャープ製スマートフォンの出荷台数は、前年比で約62%も増加。さらに、BCNランキングによると、2017年7月から10月までのAndroidスマートフォンの販売台数シェアは1位がシャープ(19.1%)、2位がソニーモバイル(17.9%)、3位がファーウェイ(15.8%)となっている。
調査期間も調査会社も異なるため、「国内Androidスマートフォン1位はAQUOSになった」と言うには時期尚早だが、少なくともシャープの成長が目覚ましいのは誰もが認めるところだろう。
シャープが5月8日に開催した2018年夏モデル発表会のなかで、シャープ自身が語ったところによると、その主な要因は
- ブランド名統一による認知度のアップ
- 安心して買ってもらえる商品力
の2点にあるとしている(いずれも同社の通信事業本部・本部長代行の中野吉朗氏の発言)。
主軸のキャリア販売が原因で発生した「ブランド」の乱立
AQUOSブランドは現在「AQUOS R」と「AQUOS sense」の2ブランド体制だ。
「AQUOS」ブランドのスマートフォンの歴史は長い。同社はAndroidスマートフォンに対し、2011年からAQUOSの名前を展開している(当時のブランド名の正式名称は「AQUOS PHONE」)。
ただし、2017年になるまでAQUOSスマートフォンは、ユーザーにとって親しみやすいとは言えなかった。それは、同社がNTTドコモやKDDI、ソフトバンクなど、通信キャリア経由での端末販売を基本としていたからだ。
そのため、例えばハイエンド機であれば、ドコモでは「AQUOS ZETA」、auでは「AQUOS SERIE」、ソフトバンクでは「AQUOS Xx」と、全く別のブランド名を展開。さらに、ソフトバンクは新モデルの度に「Xx2」「Xx3」と数字を重ねていったのに対し、ドコモとauは型番のみの変更で基本的に名称自体の変更はしないという、非常にわかりずらい状況だった。
ブランド統一後、昨年で2ブランド合わせて100万台の販売を達成した。
そこで、同社は2017年度からブランドを一新。高い性能をもつフラグシップ機を「AQUOS R」、性能は抑えて価格を重視するミドルレンジ機を「AQUOS sense」と定義。一部を除き、通信3キャリア、格安SIMを提供するMVNOで取り扱われる製品の名称を統一した。
安心さという面では、同社が製造するIGZO液晶による省電力性や、濡れたままでもタッチ操作できる強力な防水性能などが評価されている。また、2017年度以降は、端末発売から2年間のOSアップデートを保証することで、先進的な機能とセキュリティー性能を重視するコアユーザーからの評価も獲得したと言える。
2018年度は動画をシェアする若者層に狙いを定める
AQUOS R2は5色のカラーバリエーションを用意。販売するキャリアによって、扱われる色は異なる。
同社は2018年度も、2017年度までの「ブランド」と「安心さ」は継続しつつ、新たなユーザー層への拡大も画策する。
ソフトバンクから2018年5月18日に販売予定の「AQUOS R2」は、背面に2つのカメラを備えた「デュアルレンズ」を採用したフラグシップ機だ。複数のカメラを同時に備えること自体は昨今のスマートフォンのトレンドだが、R2は他社にはない一風変わった構造にしている。
AQUOS R2の背面二眼カメラは、他社のものとは構成が異なる。
R2の背面カメラは、静止画用・動画用にそれぞれ特化している。用途に応じた独立したカメラを用意することで、静止画は手ブレに強く高精細という従来の長所を活かし、さらに背景まで広々と撮れるダイナミックな動画撮影ができるようになった。
また、撮った動画の最も“いい場面”の前後10秒間を切り出す機能も搭載。短い動画をインスタグラムなどのSNSでシェアする若者層への普及を目指している。
Android派の支持を受け販売数を伸ばし、このままAndroidスマートフォンの国内トップをとるのか。追われる立場のソニー Xperiaがどう切り返してくるのか。夏モデル発表のこの時期だけに、各社の動向からは目が離せない。
AQUOS R2の二眼カメラを活かした新機能「AIライブシャッター」は、動画撮影中に自動で「いい構図」の写真を撮影してくれるユニークな機能だ。
AQUOS R2と同時発表された「AQUOS sense plus」は同社初の縦横比18対9のディスプレーを搭載したミドルレンジ機。SIMフリースマートフォンとして発売予定。
同社2018年度もAndroidスマートフォンでトップでいることを目標にしている。
(文、撮影・小林優多郎)