入社初日に「辞めたい」:超早期退社する新入社員は「社長の話にがっかり」「労組加入が恐怖」

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今年も4月に多くの新入社員が生まれたが、入社初日で大企業への違和感を感じる人も(写真はイメージ)。

REUTERS/Toru Hanai

2018年4月1日は日曜日だった。多くの企業が2日に入社式を開く中、働き方のコンサルティングを手がける「クロスリバー」CEOで、3つの大学で講師をする越川慎司さんの元に教え子3人から、Facebookメッセンジャーが送られてきた。いずれも別々の大手企業にその日に入社した教え子たちだった。

「社長の話にがっかりした」「労組の組合にハンコを押す儀式が、一生会社にいる恐怖感を感じた」

3人に共通したのは「もう辞めたい」という意思。入社初日から大手企業の体質に違和感を覚えていた。

メガバンクをすでに退社

越川さんによると、3人は中堅私立大学出身の男女。メガバンクに就職した男性は起業準備のために、すでに退社したという。あと2人は、大手IT企業と大手コンビニに入社し、5月中旬現在ではまだ会社に留まっている。

3人の退職検討理由として、こう伝えてきたという。

「同期は全員リクルートスーツで社長、人事もダークスーツ。こういう会社で個性が出せるか」「人間ロボットが働くことに疑問を感じた」「大企業の社長の話というと、ビルゲイツや孫正義のようなプレゼンを想像するが、紙を出して読んでという社長の姿にがっかりした」

まず入社式への違和感。そして、

労働組合の説明会があり、給与から組合費が天引きされる。加入のためにハンコを押す儀式があり、一生会社にいる恐怖感があった

(会社の)慣習への抵抗感があった。

中には「内定を得てから入社までの1年間で心情が変化した」という“内定ギャップ”を吐露した人もいた。

越川さんは、すぐに3人とスカイプで会話し、こう伝えた。

「目的を実現する手段として職場を考えた方がいい。目的とそのための手段の具体策がわかっているなら、早く辞めてもいいと思う」

同時に、「企業は新入社員を一生で3億円の投資をすると考えて、採用している。初日に辞めるという態度は失礼になる」と指摘もした。

4月辞め新社会人向けのサービスも

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3月説明会解禁、6月選考解禁の短期スケジュールが、学生に考える時間を与えない、いう声も(写真はイメージ)。

撮影:今村拓馬

売り手市場で企業による学生の争奪戦が過熱し、就活は短期決戦になっている。

「(短期間でとにかく)内定をもらう競争の中で、(とりあえず)内定をもらって自己満足したり、辞めてもどこにでも入れると勘違いをしたりしている場合がある。4月に辞めた新社会人を狙うエージェントや企業も出始めている」(越川さん)

結果、超早期離職が生まれている可能性がある。

日本の場合、入社まで配属や職種がわからないという配属リスクもある。

人事部も売り手市場なので、学生に職場の良い面だけを言い続けているかもしれない。すぐに内定が出ると、学生は希望の職種につくまで、我慢するエネルギーが湧かないのでは」(越川さん)

学生と企業のギャップを埋めるため、企業側は内定後の職場体験や先輩社員との交流を企画したり、内定から入社までの“待ち時間”を短縮するため通年採用を始めたり、試行錯誤している。

内定を得てから落ち着いて考える

まさに「とりあえず内定競争」を象徴するような話も聞いた。

今まさに就活中の大学院生の女性は、「(6月ごろに)内定が出たら、ほかの業界を見たり、本当に何がしたいか考えたりしようかな」と話す。何がしたいか考えてから就活するという発想とは真逆だ。

女性は都内の難関大学を卒業後、大学院に進学。修士論文の準備をしながら、就活を続けている。

自分が本当に何をしたいか考える暇もないまま、就活をしています

一斉に走り出した就活の波にいったんは乗るが、内定を得て落ち着いてから、じっくり考える。

迷いすぎてホワイト企業、そして退職

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男性は結局、「一番選ばないホワイト企業」。研修は飲み会ばかり。人間関係は良好だったが、成長を感じなかった。

出典:shutterstock

「売り手市場なので、選択肢が多くて、確固たる軸を持っていないと、本当にやりたいことは見つけられない

2017年4月にメーカーに就職し、1年後に退職した有名私立大学出身の男性(24)は話す。退職後はカナダに留学する。

就活を始めたのは、大学2年生の夏のインターンから。就活時は35社にエントリー、計7社から内定を受けたが結局、「迷いに迷い、実家から通えたり、待遇を比較したりして、一番選ばないはずのホワイト企業」を選んだ。

男性の就職先は、土日休み、待遇も悪くなかった。

「研修は飲み会。営業成績が賞与にも反映されない」

成長が感じられず、「1年が無駄になった」と思い、退職を決めた。

同期は19人中、3人が辞めたという。退職者のいずれも就活時、他社からも内定を受けていた人たち。同社のみ内定していた人は辞めていないという。

男性は退職後、留学先のカナダで、ホテルでのインターンを予定している。同じ系列のホテルで大学2年時にインターンをした経験が楽しかったが、就活の時、「はっきりとホテルで働きたい気持ちを持てなかった」。待遇も考え、いろんな人の意見を聞いて、「結局、自分を(就職先の会社で良いんだと)納得させたんですね」と振り返る。

選考のスケジュールがつまりすぎていたので、「受かる確率を考えて、あえて選考を辞退したところもある」。海外駐在の可能性もある大手旅行会社も受けたが、最終面接を辞退した。その会社のインターンが激務だったので、自分でいろいろ理由をつけて「志望ではないと自分に思い込ませた」。男性は就活を6月で終えたが、その理由は「キリがなかったから」。自分の中で区切りをつけた。

3割以上の企業が3月から“フライング選考”

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3月と4月に選考を始める企業は、それぞれ3割を超える。

出典:ディスコのキャリタスリサーチ

ディスコのキャリタスリサーチによると、「とりあえず内定競争」が激化する大きな背景が、売り手市場ということだ。

3月に説明会、6月に選考解禁と以前より短期決戦だが、「さらに企業は他社に先んじて選考をしようとし、学生が企業研究などに動ける時間が短くなっている。結果、自分の適職に迷いを持ったまま、就活を終える学生がいる」(武井房子上席研究員)。働き方改革の流れに沿って、「企業は働きやすさを前面に紹介し、学生もその環境を求めて就職するが、入社後に新入社員が業界や仕事に興味を持てないこともある」と武井さん。

同社の調査によると、選考解禁は6月だが、約3割の企業が3月には選考を開始している。4月も合わせると、7割の企業が選考を始めている。実際に6月に選考を始める企業は1割程度だ。学生にとっては3月から説明会や選考の予定が大量に降ってきて、処理しきれないまま、内定が決まる。

入社1年目で辞める人の割合は、厚生労働省によると、2016年卒業の新入社員は11.3パーセント、2015年卒は11.9パーセント、2014年卒は12.3パーセントとここ数年1割台で推移している。

「周囲がとりあえず流れに乗って就活をして、たくさんのプレッシャーを受ける中、自分を見失っていく人が周りに結構いる」(2017年3月に大学を卒業した男性、現在はベンチャー企業で働く)。

売り手市場がゆえに短期決戦に拍車がかかり、学生たちは時間に追われるがままに内定を獲得、入社後に違和感を覚える新社会人が生み出されているのかもしれない。(文・木許はるみ)

編集部より:一部表現を改めました。2018年5月21日 13:15

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