シンガポールで開催される米朝首脳会談は、どんな結果になっても金正恩氏の勝利 —— 専門家が指摘

金正恩氏

2018年4月27日、北朝鮮の金正恩氏は板門店の平和の家で開かれた南北首脳会談に出席した。

ea Summit Press Pool/Getty Images

  • 6月12日にシンガポールで開催されることになった米朝首脳会談は、北朝鮮のトップが長きにわたって切望してきた正統性を与えることになるだろう。
  • 朝鮮半島から遠く離れた外交的に中立な地へ飛行機で向かうことで、金正恩氏は自身を有能な世界の指導者として見せるだろう。
  • 会談の場所や成果にかかわらず、アメリカのトランプ大統領と会うことができるというだけで、金正恩氏にはいくらかの正統性が認められたことになる。
  • だが、シンガポールに決まったことで、アメリカと北朝鮮の仲介役から韓国を外したいトランプ大統領の思惑が反映された形だ。これでどちらの国も韓国に頼る必要がなくなった。

6月12日に決まったアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩氏との首脳会談は、シンガポールで開催されることになった。これは北朝鮮のトップが切望してきた正統性を与えることになるだろう。

北朝鮮は長きにわたって他の国と同じように見られ、扱われたいと望んできた。核兵器の開発もそのための手段だと見られいる。そして今、朝鮮半島から地理的に遠く離れた国が6月12日の首脳会談のホスト国を務める。成果はすぐそこだ。

「北朝鮮の狙いは、北朝鮮がアメリカと同等のパートナーであると見せることだ。韓国の外で(会談を)やることは、北朝鮮にとってプラスでしかない」オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所の国際安全保障プログラムのディレクター、ユアン・グラハム(Euan Graham)氏はBusiness Insiderに語った。

「だからこそ、金正恩氏は空路そこへ向かうリスクを受け入れたのだろう。前例がないとはいえ、韓国が同席することなく、同じく核を持つ者としてトランプ大統領に会いたかったからだ。彼にとっては、象徴としてより効果的だ」

北朝鮮の指導者が最後に空路で海外へ向かったのは1986年、金正恩氏の祖父・金日成氏がソ連を訪問したときのことだ。 正恩氏の父・ 金正日氏は列車での移動を好んだが、北朝鮮には金氏が他の国を訪問するのに使用可能な航空機がないのではないかと噂されてきた。

そして先週、金正恩氏は中国の習近平国家主席に会うため、大連に飛んだ。これは北朝鮮がシンガポールで、世界に北朝鮮のトップが他の世界の指導者と同じように振舞うところを見せるための予行演習だった可能性もある。

だが、シンガポールは中立的な開催場所として、特に候補地とされてきた板門店モンゴルに比べ、「明らかに納得感がある」とグラハム氏は言う。

東南アジアのこの国は治安も良く、国際的な会議の経験も豊富だ。スケジュールの観点からも、シンガポールで毎年開催されているアジア安全保障会議(シャングリラ対話) は米朝首脳会談の1週間以上前だ。シンガポールでの開催は、トランプ大統領にとってもプラスになる —— これまで北朝鮮との対話は韓国にそのリードを任せてきたが、自らコントロールしようとしているようだ。

しかし、開催地や会談の成果にかかわらず、トランプ大統領と金正恩氏の会談は北朝鮮のプロパガンダにとって大きな勝利になるだろうと、韓国の釜山大学校の政治専門家ロバート・ケリー(Robert Kelly)氏は指摘する。

「会談が失敗しても、北朝鮮にとっては勝利だ。1対1でアメリカの大統領と会う北朝鮮の指導者の写真が手に入るのだから」ケリー氏はBusiness Insiderも出席した、オーストラリアで開かれた「シドニー・ライターズ・フェスティバル(Sydney Writers' Festival)」の北朝鮮に関するイベントで述べた。

北朝鮮はこの瞬間を何十年も待ち望んできた。金正恩氏がトランプ大統領と会うということは、北朝鮮の体制と存在が正統化されることを意味するからだ。

「北朝鮮は取るに足らない独裁国家だ。自由主義のリーダーと会うことは、自動的に正統性のブランディングになる」ケリー氏は言う。「もしあなたが北朝鮮人なら、彼らに会いたいと思うだろう。なぜならそれは、あなたたちが発展の遅れた、封建的な、オーウェル的(全体主義国家的)な国ではなく、本物の国家であることを象徴するからだ。実際の北朝鮮は前者であったとしても」

[原文:It doesn't matter what happens at Trump's Singapore meeting with Kim Jong Un — the North Korean leader already won]

(翻訳、編集:山口佳美)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい