フードチェーンは売上拡大のためにデリバリーに力を入れている。
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- パネラ、チポトレ、マクドナルドなどのフードチェーンがデリバリーに力を入れている。
- デリバリーは、顧客の利用額を上げ、新たな顧客を呼び込み、顧客ロイヤルティーを高めることで、フードチェーンに利益をもたらす。
- だが、顧客の期待値もますます上がる。このため売り上げが不安定になったチェーンも出ている。
新規顧客の獲得は難しい。そのため、フードチェーンはデリバリーに力を入れ始めた。
ベーカリーカフェチェーンのパネラ(Panera)は5月8日(現地時間)、デリバリーの全米展開を完了した。メキシカンフードのチポトレ(Chipotle)は9日、4月末に宅配スタートアップのドアダッシュ(DoorDash)と提携してから、デリバリーの売り上げが667%急増したと発表。宅配サービスのグラブハブ(GrubHub)は10日、ジャック・イン・ザ・ボックス(Jack in the Box)の全米におけるデリバリーサービスを受注したと発表、同社はすでにタコベル、ケンタッキーフライドチキンなどと契約している。
調査会社NPDグループによると、店舗への来客数は横ばいだが、デリバリーの売り上げはこの5年で20%増加した。マクドナルドからモーズ サウスウエストグリル(Moe’s Southwest Grill)まで、あらゆるフードチェーンがデリバリーは売上拡大に欠かせないと述べた。
だが、デリバリーは売上拡大のためにより重要になっているというよりも、フードチェーンの必要条件となり始めた。
「当社はデリバリーで利益を上げているが、デリバリー業者を使っているレストランの多くは、それほど利益を上げていない」とパネラのCEOブレイン・ハースト(Blaine Hurst)氏はBusiness Insiderに語った。
「だが他に選択肢がないのが、現実だ」
デリバリーを始めるレストランが増えるにつれ、デリバリーをしていないレストランは単純に取り残される危機に直面しているとハースト氏は指摘した。特に固定客に大きく頼る傾向があるファストフードチェーンなどに当てはまる。
「顧客の習慣は移り変わる。デリバリーを頼もうと思ったのにデリバリーをしていなければ、別の店にデリバリーを頼むだろう」
デリバリーをしている新しい店が顧客にとって新しい習慣となるのは、あっという間。それまでの店は完全に忘れ去られる。
デリバリー革命
パネラはより多くの収入を得るためデリバリーを拡大している。
Panera
アメリカは“レストランが多すぎる国”だ。フードチェーンは売上拡大のために新しい販売チャネルを探す必要があり、特にオンラインオーダーが盛んになっている今、デリバリーがそれに当たる。
例えば、ファミリーレストランのアップルビーズ(Applebee's)は、直近の第1四半期、国内売上をなんとか3.3%拡大した。
「テイクアウトとデリバリーの売り上げが2桁伸びたことが、売上拡大に貢献した」とアップルビーズの親会社ダイン・ブランズ(Dine Brands)のCEOスティーブン・ジョイス(Stephen Joyce)氏はBusiness Insiderに語った。
業界幹部の多くは、特にオンラインでのオーダーでは、顧客の利用額が上がると指摘した。モーズ サウスウェストグリルの社長ブルース・シュローダー( Bruce Schroder)氏によると、何人か集まるとデリバリーやケータリングをオーダーする傾向が強くなり、利用額も上がる。
さらに、オンライン・オーダーでは「完全に高い商品が売れる」とジョイス氏は語った。
デリバリー、ケータリング、そしてテイクアウトは、レストランのスペースの問題も解決する。チポトレでは「第2のキッチン」を店内で飲食しない顧客専用にした。これにより店内が混雑することなく、売り上げを伸ばすことができた。
「まず最初に行ったことは、第2のキッチンを作ること」とチポトレの新CEOに就任したブライアン・ニコール(Brian Niccol)氏は語った。
「十分に活用されていないスペースがたくさんあった」
デリバリーの拡大は、アメリカ人の生活が忙しくなるにつれて、レストランの役割も変化したことを明らかにした。
「確かに便利。この業界に入ったばかりの頃は、アメリカ人の70%は夕方5時になってもディナーに何を食べるか決めていないと言われていた。最新データは把握していないが、今でも変わらないだろう。忙しくなればなるほど、テクノロジーによって生活がより便利になり、料理をしたくなくなる」
以前のように店に入って座って食べる顧客を、より多く来店させることで売り上げを伸ばすことはますます難しくなっている。フードチェーンは、デリバリー、ケータリング、テイクアウトの割合を増やしたいと考えている。なぜならこれが売り上げを伸ばす唯一の方法だから。
タコベル、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルドといった大手フードチェーンが2017年、全米中にデリバリーサービスを拡大させようと様々な取り組みを行ったのもそのためだ。
デリバリーで勝利したフードチェーンは売り上げを伸ばし、顧客ロイヤルティーを高めるチャンスを得る。生き残りをかけるレストランにとって、デリバリーで破れることは許されない。
デリバリーはチャンスだが、もはや選択肢ではない。必須条件だ。
[原文:Fast food is having a do-or-die delivery moment — and it's revolutionizing the industry (CMG)]
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)