イラン核合意からの離脱に署名したアメリカのトランプ大統領。
AP
- アメリカのトランプ大統領がイラン核合意からの離脱を表明した後、国務省の核の専門家トップの1人が辞任した。
- トランプ大統領の就任以来、国務省ではこれまでさまざまなドラマが生まれてきた。ティラーソン前国務長官とポンペオ国務長官の交代劇は記憶に新しい。
- イラン核合意からの離脱という大統領の決断は、イギリス、フランス、ドイツといった主要なヨーロッパの同盟国の失望を買っている。
トランプ大統領がイラン核合意からの離脱を表明した後、アメリカ国務省の核の専門家トップ、リチャード・ジョンソン(Richard Johnson)氏が辞任した。
国務省のイラン核合意の履行を担当する部署でアシスタント・コーディネーターを務めていたジョンソン氏は、その辞任を同僚にメールで伝えた。フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)が最初に報じた。
ジョンソン氏はメールの中で、辞任の理由については明らかにしなかったが、イラン核合意は「明らかにうまくいっていた」と、トランプ大統領の決断とその考えに真っ向から対立する見解を述べた。
「イラン(核合意)の履行を含め、この仕事に微力ながら携わることができたことを誇りに思う。イランの核武装を防ぐという点で、(合意は)明らかにうまくいっていた」ジョンソン氏は書いている。
関係者の1人はフォーリン・ポリシーに対し、トランプ大統領がイラン核合意からの離脱を表明するまで、ジョンソン氏は国務省を去ることなど考えていなかったと明かした。また別の関係者は、ジョンソン氏の辞任は「大きな損失だ」と語っている。
ジョンソン氏の辞任は、トランプ大統領の就任以来、国務省で生まれてきたさまざまなドラマの一部だ。その最たる例は、ティラーソン元長官とポンペオ長官の交代劇だ。さらに、上位のキャリア外交官の約60%がトランプ政権下で国務省を後にしている。
一方で、イラン核合意からの離脱という大統領の決断は、イギリス、フランス、ドイツといった主要なヨーロッパの同盟国の失望を買っている。イランのロウハニ大統領は13日、自国の利害が守られるなら合意を維持するとの考えを再び示したが、8日には、アメリカ抜きの核合意に残ってもイランの国益が守られないのであれば「無制限で産業レベル」のウラン濃縮活動を再開する用意があると述べていた。
イラン核合意は「ひどい」とトランプ大統領は繰り返し述べてきたが、イランが合意に違反したという確証はない。オバマ政権がまとめ、2015年に結ばれたこの核合意は、経済制裁を緩める代わりにイランの核兵器の開発を防ぐことを目的としていた。
※7段落目のイランの反応については、編集部で情報をアップデートしています。
(翻訳、編集:山口佳美)