左から、口コミ企業情報サイトVorkersのマーケティングマネージャー 恵川理加さん、Pairsの運営元エウレカの取締役CTOの金子慎太郎さん、新世代のシェアアパート「ソーシャルアパート」を仕掛けるグローバルエージェンツ社長の山﨑剛さん、Sansanで名刺管理サービスEightの事業責任者を務める塩見賢治さん。
2000年以降に成人を迎えた人たちを「ミレニアル世代」と呼ぶが、いまマーケティングや広告の戦略を考える上で、ミレニアル世代の価値観を理解することは必要不可欠だ。
ミレニアル世代の価値観は、彼らに向けたサービスを展開しているプラットフォーマーがもっともよく知っている。ミレニアル世代に人気のサービス4社に、世代の特徴を聞いた。
※この記事は、ADWEEK Asia 2018の「リアルデータのインサイトで語る『ミレニアル世代の心を掴む方法』」のセッションを採録したものです。
ミレニアル新入社員は社員に会わせた方が「内定承諾率」上がる?
Vorkersのマーケティングマネージャー 恵川理加さん。
口コミ企業情報サイトVorkersのマーケティングマネージャー 、恵川理加さんによると、ミレニアル世代は入社を決めるときに、その会社の「社員」がどう働いているかを重要視する。
データを見てもゆとり世代(1987年〜1996年生まれ)はバブル世代と比較して、入社理由に「社員・人事担当者」が高い傾向にあり、実際に企業でも、事前により多くの社員に会わせたほうが内定承諾率が上がったという事例があるそうだ。
世代別の入社理由ランキング。バブル世代と比べて、ゆとり世代は「自身の成長・キャリア」を入社理由に挙げる人が多い。また入社理由として「社員・人事担当者」を挙げるのも特徴的だ。
また、ミレニアル世代は、20代のうちにどれだけ成長できるかを仕事を選ぶ際に重視する傾向もある。「世代別の入社理由ランキング」では、ゆとり世代だと「自身の成長・キャリア」が1位に位置づけられ、その次に「業界・事業内容」「会社規模・安定感・知名度」と続く。
これはバブル世代の入社理由ランキングと比較しても突出して高い。つまり、ミレニアル世代は「下積みに価値を感じない」世代だ、と恵川さん。
企業選びの指標を見ると、20代と40代の差は歴然。よく言われる「風通し」を気にするのは、実は20代より40代という驚きの結果。
ミレニアル世代の「入社理由」のコメントを拾うと、「社員」というキーワードが多数出てくる。
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実は「女性が草食化・男性が肉食化」している世代
Pairsのユーザーデータからわかるミレニアル世代の特徴。サービス利用時間、コミュニティ参加数、自己紹介文、いずれも他の世代と比べて少ない傾向があるという。
エウレカ 取締役CTOの金子慎太郎さん。
オンラインマッチングサービス・Pairsの運営元エウレカの取締役CTOの金子慎太郎さんは、オンラインデーティングにおけるミレニアルの傾向は「あいまいでありつつ、じつは女性が草食化して男性が肉食化している」世代だと語る。
ユーザーのデータを年代別に比較すると、ミレニアル世代は自己紹介文が短く、参加コミュニティも7〜10個少ない。メッセージ交換も短文で送り合う傾向があるといい、周囲を気にして関係を壊したくないことから、あいまいなコミュニケーションを取るのでは、と金子さんは語る。
Sansanのデータからは転職意向の高さが見える
Eightの集計による転職意向は、若いほど検討している率が高い。「転職を考えていない」人は半数以下だ。
Eightのユーザーインサイトを見ると、朝からSNSを即利用しているヘビーユーザー率は実は40代が多い、というデータも。
Sansanの取締役でEight事業本部長の塩見賢治氏。
Sansanで名刺アプリEightの事業責任者を務める塩見賢治さんは、ミレニアル世代は学生の頃からSNSを使い慣れていることから、ビジネスの場でSNSを使うことに対して疲れている、「SNS疲れを起こしている世代」だともいう。
あくまでEightユーザーの、という但し書きではあるものの、SNS利用動向を見ると、20代は実はそこまで朝から晩までSNSというわけではない、というデータは興味深い。
ソーシャルアパートメントの仕掛け人は「合理性・多様性・自由」の世代と表現
ソーシャルアパートメントの入居者のインサイト。平均年齢30歳以下、インスタ利用率はほぼ半数にのぼる。
ホテル「The Millennials」などを手がけるグローバルエージェンツ社長の山﨑剛さんは、ミレニアルズのキーワードを「合理性・多様性・自由」だという。
グローバルエージェンツ社長の山﨑剛さん。
「ミレニアル世代がシェアを好む」とよくいわれるが、彼らは合理的だからそれを選んでいるにすぎず、山崎さん自身、ミレニアル向けのビジネスを展開するときは「合理性」をストーリーとして提供できているか、考慮するという。
「下積みをしたくない」「我慢ができない」と言われるミレニアル世代も、それが「合理的でないから」、つまり下積みをしてもそれに見合ったリターンが返ってくるか分からないから、と考えると、納得がいく。
「LGBTに対する考えや結婚観など、今まで、こうあるべきだからという『べき論』で行われてきたことをゼロベースで見直すようになっている。合理的で、多様性を受け入れていくようになっているのが当たり前であり、むしろなぜそれが『べき論』で語られてきたのかわからない、くらいの価値観でいるのがミレニアル世代ではないか」(山崎さん)
ミレニアル世代の価値観には、いま多くの企業が着目している。モノやサービスをどう消費してもらい、何がアリで何がナシなのか。各プラットフォーマーの利用者動向から見えてくる「ヒント」の分析は、今後もっと大きな意味をもってくるだろう。
(文・写真、西山里緒)