2016年から2018年にかけて、北朝鮮を3度訪れた。
2012年に写真集『隣人。38度線の北』を出版した後、急速に発展し始めた平壌の姿をこの目で確かめたかったのだ。北朝鮮には中朝国境から列車で入り、国内線の飛行機で北部に移動し清津、会寧などの地方都市、農村部の様子も撮影した。
トランプ政権になり、北朝鮮の圧力、経済制裁が強まる中、北朝鮮の金正恩氏は音を上げて周辺国との対話に出てきたのだろうか?
2017年11月29日ICBMの発射実験成功を機に、経済発展を優先させるために入念に準備された平和外交攻勢なのだろうか?
まだ予断は許さないが、トランプ大統領が金政権の体制保障にも言及する中、6月12日に予定されている米朝首脳会談を経て、朝鮮戦争が一気に非核化する可能性も出てきた。
一方で、北朝鮮で暮らす“普通の人々”の暮らしはなかなか見えてこない。3度の訪朝で見えて来たのは、想像以上に経済発展している姿だった。
平壌と地方の人々の姿を見ながら、暮らしぶりに想像を膨らませてもらいたい。
金日成主席、金正日総書記が眠る太陽宮殿に参拝する軍人たち。
北朝鮮に近年出現した富裕層の母娘。国内線の機内の雰囲気も2012年頃と比べると明るくなった。 乗客に女性が増えたのも大きな変化だ。
平壌の街中で仲むつましいカップルをよく見かけるようになった。金正日時代にはあり得ない光景だ。 若い男性も明るいシャツを着たり、髪型にもこだわりが見えるようになった。
2018年2月に食べた納豆のアイスクリーム。2017年に納豆工場ができたが、アイスクリームまでできるとは。甘さの中にほのかに納豆の味がした。北朝鮮ではアイスクリームのことをエスキモーと呼ぶ。
中国産の電動アシスト自転車が急増。20年前は皆が歩いて通勤していた。その後自転車が普及し、今では電動自転車で通勤する姿をあちこちで見かける。
平壌市内を流れる大同江に登場した日本製のエンジンを積んだヨットとモーターボート。北朝鮮ではさまざまなところで結婚式の撮影をする。
2017年から国内向けスポーツチャンネルでサッカープレミアリーグの試合が放映されるようになった。朝鮮語の実況と解説も入っている。
平壌中心部の外から内側を見た風景。都市開発で拡大を続ける首都と郊外の境目が見える。
平壌から車で30分走った農村部の深夜。100メートル間隔で寝ている人たちがヘッドライトに照らされ驚いて起き上がった。農作物を盗まれないように家族が交代で監視しているという。
中朝国境に近い冬の田んぼで歯磨きをする男。
北朝鮮北部にある漁郎空港。平壌空港は立派になったが地方の空港は素朴だ。この国で飛行機に乗ることができる人は限られている。
北朝鮮最北端に近い会寧付近の農道で見かけたトラック。
北朝鮮北部の農道を歩いて通学する子どもたち。
※これらの写真を含む「隣人、それから」写真展を開催中。場所は港区六本木4-8-9-B1の山崎文庫で(8月15日まで)。詳しい情報はhttps://www.facebook.com/events/226788874572685/
(写真・文、初沢亜利)
初沢亜利:1973年、パリ生まれ 上智大学卒業。第13期写真ワークショップ・コルプス修了後、イイノ広尾スタジオを経てフリーランス。 2013年、東川賞新人作家賞、2016年日本写真協会新人賞を受賞。 写真集にイラク戦争前後を撮影した『Baghdad2003』 、東日本大震災翌日から1年、気仙沼を中心に撮影した『True Feelings-爪痕の真情-』『沖縄のことを教えてください』など。