政治的な恥になる? トランプ大統領が、米朝首脳会談の開催を迷っている

トランプ大統領

Scott Olson/Getty Images

  • アメリカのトランプ大統領が計画している北朝鮮の金正恩氏との首脳会談の見通しは絶望的になりつつある。
  • トランプ大統領は自身の北朝鮮への取り組みをしばしばアピールし、交渉条件については強硬路線を貫いてきた。だが、自画自賛ともいえるこれまでのツイートが、自身を悩ませることになりそうだ。
  • トランプ大統領は首脳会談に向けた準備が不足していると言われ、会談が突然立ち消えになる可能性も指摘されている。
  • 韓国はトランプ大統領を多少ミスリードしたかもしれない。北朝鮮は恐らくトランプ大統領を誤った方向へと導こうとしている。
  • 北朝鮮の専門家は、交渉の失敗によって、アメリカがより軍国主義的な路線に進むのではないかと懸念している。戦争になる可能性も否定できないという。

トランプ大統領がアメリカの大統領として初めて北朝鮮の指導者と会談するという歴史的な日まであと1カ月弱 —— だが、見通しは明るくない。

大統領はこれまで北朝鮮への取り組みをアピールし、交渉条件については強硬路線を貫いてきた。だが、自画自賛ともいえるこれまでのツイートが、自身を悩ませることになりそうだ。

北朝鮮は2018年に入って、非核化のあいまいな約束をもとに、周辺国とともに外交を追求してきた。2017年のトランプ大統領との瀬戸際外交を繰り広げた後、韓国との和平交渉を望んでいるかのような北朝鮮の姿勢は世界を驚かせ、トランプ大統領にノーベル平和賞をとの声も上がった

しかし今、トランプ大統領は金正恩氏との会談が「政治的な恥になるのではないか」と懸念していると、ニューヨーク・タイムズのデビッド・サンガー(David Sanger)記者は複数の政府関係者の話として報じている

歴史的な会談が数週間後に迫った今月上旬、北朝鮮がアメリカと韓国に対し爆発させた一連の不満は、かんしゃくを起こしたかのようだった

サンガー記者は、トランプ大統領がそもそも首脳会談をこのままやるべきかどうか迷っていて、韓国の文在寅大統領と急遽行った電話会談で再度確認したと報じている。

トランプ大統領は、大統領としての大きな外交成果となるであろう首脳会談を現時点では予定通り行う考えだ。金正恩氏にとっては、アメリカの大統領と会うことは北朝鮮の国際的な信用の獲得に役立つことから、事実上の勝ちを意味する。

しかし今、北朝鮮が見限ろうとする米朝首脳会談にしがみつこうとしているのは、むしろトランプ大統領のようだ。

その一方で、朝鮮半島の核兵器だけでなく東アジアの地政学上の主要な火種について話し合うことが予想される首脳会談の準備に、トランプ大統領は乗り気でないと言われている。

大統領は金正恩氏との首脳会談に向けて、多くを準備する「必要はないと考えている」と、タイム誌はある政府高官の話として報じた

トランプ大統領はミスリードされたのか?

トランプ大統領と文在寅大統領

11月、韓国で会談したトランプ大統領と文在寅大統領。

REUTERS/Jonathan Ernst

しかし、トランプ大統領の首脳会談に向けた準備が足りず、会談が突然立ち消えになっても、トランプ大統領はその責任の一部を分け合うことができる。

「文政権が北朝鮮の交渉の意思を誇張した可能性が大きい」政治学の教授で北朝鮮問題を専門とするロバート・ケリー(Robert Kelly)氏は言う

ケリー氏は加えた。「文大統領は、韓国の人々をひどく恐れさせた昨年の戦争の脅威へ後戻りするのを防ぐため、トランプ大統領を外交路線に結び付けておこうと誇張したのだろう。トランプ大統領がもう少し謙虚で、国家安全保障担当のスタッフに北朝鮮の提案を入念に調べさせていれば、分かっただろう」

2017年、トランプ大統領は北朝鮮の空爆に危険なほど近付いたと報じられている。そうすることで、北朝鮮ではなく韓国を交渉へと駆り立てた。

韓国には北朝鮮との外交を押す理由がある。戦争になったら自国から多くの犠牲者が出るというのもその大きな理由の1つだ。

混乱が広がる?

ミサイル発射

3月に公開された、北朝鮮のミサイル発射の様子。

KRT via AP Video

6月12日、シンガポールでトランプ大統領は金正恩氏に会うというこれまでにない任務に臨む。

北朝鮮は中国との関係をより強めることで、その攻撃的な外交姿勢を増している。そしてトランプ大統領も認めたように、中国は北朝鮮に対する制裁を緩和させているようだ。対北朝鮮政策におけるトランプ大統領のこれまでの主な成果は、国際的な制裁に中国を従わせてきたことだった。

こうした金正恩氏の高度な外交的策略は、2018年後半の中間選挙を前に共和党を盛り上げたいトランプ大統領に恥をかかせることになるかもしれない。

北朝鮮の専門家たちは、交渉の失敗によって、アメリカがより軍国主義的な路線に進むのではないかと恐れている戦争になる可能性も否定できないという。

トランプ大統領が新たに指名した国家安全保障担当の大統領補佐官ジョン・ボルトン(John Bolton)氏は、長きにわたり北朝鮮との戦争を提唱してきた。ボルトン氏には、最近の外交的な前進をつぶした責任の一端があると言われている。

[原文:Trump's lauded North Korea summit increasingly looks set to blow up in his face]

(翻訳、編集:山口佳美)

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