“寝カフェ系”本屋が新宿で増殖中——消えゆくリアル書店を救うか?カフェ難民にも朗報!

新宿にいくといつも直面する問題。それは「ゆっくり過ごせる場所」がないことだ。

フラフラと駅をさまよい、やっと見つけたファストフード店は激混み、しかも椅子がガチガチの硬さでまったく落ち着けない……なんて経験をした人は私だけではないはず。

そんなカフェ難民たちを救うのが、新宿で続々とオープンしている「寝カフェ系」の本屋だ。

新宿

「寝カフェ」本屋は「ゆっくりできるところがない」新宿の救世主になるか?

「泊まれる本屋」は5月に新宿進出

BOOK AND BED

オープンスペースには、巨大なソファ。天井から吊るされているのは、漫画「AKIRA」の切り抜き/BOOK AND BED

アールストア社が展開する、“泊まれる本屋”がコンセプトの低価格ホステル「BOOK AND BED TOKYO」が5月22日、新宿・歌舞伎町にオープンした。

2015年11月の池袋店オープンから3年足らずで順調に店舗数を増やし、今回の新宿店で5店目。新宿店の場合、料金はシングルで1泊5300円から、デイタイムプランは1時間で540円(ベッド利用は1時間で840円)。

旅館業法に基づく許可を取得した、れっきとした宿泊施設でもある。

今回は初めてカフェも併設した。5月下旬に現地を訪れてみると、10席ほどのシートはすぐ満席に。そのほとんどが女性だった。

カフェで話していた専門学校生の女性2人(18、19)にどうやって店を見つけたか尋ねてみると「インスタで『#新宿カフェ』と検索したらここが出てきた」。

別のテーブルには就活生や、外国人カップルの姿も。オープン直後にも関わらず、10代〜20代前半らしき人たちが途絶えなかった。

「お泊まり会」「上京就活」ニーズも

BOOK AND BED

カフェには、就活生の姿も/BOOK AND BED

BOOK AND BED TOKYO」躍進の理由について、同社広報部の力丸聡さんは「今まで、これくらいの価格帯で女性が泊まれる場所がなかった」と指摘する。

「BOOK AND BED TOKYO」のユーザーは20代から30代が8割強。男女比は女性が7割だ。都心で泊まりたいけれどホテルは高い、でもカラオケに泊まるのも、と考えていた女性層にリーチできたことが大きいという。

ミレニアル女性のニーズは、単に「泊まって寝る」ことにはとどまらない。

利用者データをみると、3分の1ほどが東京近郊の在住者だという。友人同士で居酒屋に行った後などの「お泊まり会」や、“本に囲まれて寝落ちする”という非日常感を楽しむために、1人で泊まりに来る客も多いそうだ。

地方から東京に出て来た就活生もよくいるという。オープンスペースには10人以上は座れる大きなソファもある。知らない人とも気軽にコミュニケーションが取れる設計で、1人で来ても寂しくならないようになっている。

TSUTAYAも新宿に「くつろぎ系」本屋

TSUTAYA BOOK APARTMENT

グランピングをイメージしたフロア。各フロアにはアロマの香りが漂う/TSUTAYA BOOK APARTMENT

実は新宿には「BOOK AND BED TOKYO」のライバル店も存在する。「BOOK AND BED」から5分ほどの場所に位置する「TSUTAYA BOOK APARTMENT」だ。

こちらは1995年からあった新宿のランドマーク的存在・旧新宿TSUTAYAビルを全面リニューアル。2017年12月に新たに生まれた店舗だ。

1時間あたり500円で利用でき、中にある本は読み放題という、漫画喫茶のようなシステム。12時間パックで5500円(6時間パックで2800円)という値段も、「BOOK AND BED」と近い。中には、女性専用フロアやパウダールームも完備されていた。

TSUTAYA新宿プロジェクト ユニット長の御前昌宏さんに聞くと、女性比率は6割以上だという。外国人観光客も多く、地方から長距離バスで夜に新宿に到着した人が使うケースもあるという。

「寝カフェ系」本屋はリアル書店を救うか?

BOOK AND BED

ミレニアル世代にとって「本を読みながら寝落ちする」という体験は、非日常になっている/BOOK AND BED

「寝カフェ系」本屋躍進の背景には、書店が減少する中でのリアル店舗の生き残り戦略の側面もある。

アルメディア調査の2018年5月の発表によると、全国の書店数は1万2026店で、2000年の2万1654店から、18年間で約半分になっている。

DVDなどのソフトのレンタルショップのイメージが強い「TSUTAYA」も、リアル店舗の減少に伴って事業の転換を迫られている。

2011年にオープンした「代官山 T-SITE」をはじめとして、家電にフォーカスした「二子玉川 蔦屋家電」、スローライフの提案を掲げる「湘南T-SITE」など、複合施設の展開を進めてきた。新宿では、場所のニーズに合わせて初めて、時間制で料金を取るシステムを取り入れた。

「本」という存在も、大きなキーワードだ。前出の力丸さんは「本屋に泊まる」というコンセプトを「日常から半歩先の非日常」と形容し、誰もが持っているけれど、かなえたことがない欲求をここでは満たせる、と語る。

「ゆっくりできる場所がない」街・新宿に現れはじめた「寝カフェ系」本屋。新宿ジュンク堂、啓文堂書店新宿店、紀伊國屋書店新宿南店……。閉店・縮小していった本屋たちは、「寝カフェ系本屋」として生まれ変わらないのだろうか。

(文・写真、西山里緒)

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